第六話「増強?」
第六話「増強?」
「なおちゃんの個性少しわかったか気がするっす」
空也が座り込んでいる直人を見つめる。
氷織は不思議そうに空也に話す。
「え?あの霧がなおちゃんの個性でしょ?」
「まあ、そうっすけど、、、」
空也は考える。
やっぱり増強との関連性がいまいち薄い。
「なおちゃんの個性はおそらく解決策っす。」
空也は直人に指をさす。
「なおちゃんの個性の発動条件はめんどくさい。天使を倒すのめんどくさいと思うことでその解決策として相手の個性を乱す霧を作り出した、、、と考えるべきっす、」
した。
「解決策…?」
「そうっす。なおちゃんは“めんどくさい”って思った瞬間、体が勝手に一番楽な解決方法を作り出す個性なんすよ。」
氷織は腕を組む。
「つまり…戦うのがめんどくさいから、相手の個性を狂わせる霧を作ったってこと?」
「多分そうっす。」
空也は直人を見る。
直人は地面に座りながら、ぼーっと空を見ていた。
「……でもよ」
直人がぽつりと言う。
「それなら、もっと強い能力出てもよくないか?」
その瞬間だった。
遠くで爆音が響く。
ドォン!!
建物の屋上が崩れ、白い翼を持つ天使がゆっくりと降りてくる。
「天使がやられたと聞いてきたが、、、」
氷織が顔をしかめる。
「また来た……」
天使は三人を見つめる。
そして腕を振り上げた。
空気が震え、巨大な光の刃が作られる。
空也が叫ぶ。
「やばいっす!あれ直撃したら終わりっす!」
氷織も身構える。
だが――
直人はため息をついた。
「……めんどくせぇなぁ」
光の刃が振り下ろされる。
その瞬間、
シュゥゥゥゥ……
直人の周囲から、再び霧が広がった。
だが今回は違った。
霧は天使を包み込み――
ガキィン!!
光の刃が、空中で止まった。
空也が目を見開く。
「なっ……!?」
天使の腕が震える。
まるで、体の動きそのものがズレているようだった。
氷織が驚く。
「動き…狂ってる…?」
空也が興奮した声で言う。
「違うっす!!」
「これは…」
「個性だけじゃない。身体の“行動そのもの”を乱してるっす!!」
天使はバランスを崩し、地面に落ちた。
ドサッ!!
直人は立ち上がる。
「なるほどな」
「俺の個性は」
霧の中で、直人が小さく笑った。
「めんどくさいことを解決する能力っぽいな。」
空也が震えた声で言う。
「なおちゃん…」
「それ……」
「めちゃくちゃヤバい個性っすよ。」
そのとき。
倒れた天使がゆっくりと顔を上げた。
そして――
「……対象確認」
「個性保有者:危険度A」
氷織の顔が青ざめる。
「え……」
天使の背後の空が、裂けた。
そこから、
何体もの天使が降りてくる。
空也が絶望した顔で言う。
「……なおちゃん」
「これ」
「めんどくさいどころじゃないっすよ」
直人は空を見上げる。
そして、またため息をついた。
「……あー」
「超めんどくせぇ!」
その瞬間――
近くに落ちていた木の枝が光り輝く剣に変化した。
光り輝く剣を見て、空也が叫ぶ。
「はぁ!?なんすかそれ!?」
氷織も驚く。
「さっきまでただの木の枝だったよね!?」
直人は剣を持ち上げる。
まるで最初からそれが武器だったかのように、手にしっくりと収まった。
「……なるほど」
直人は剣を天使たちに向かって軽く振る。
ヒュンッ
空気が切り裂かれる音がした。
リーチは短いはずなのに振った瞬間奥まで斬撃ぎ届いた。
「天使が多すぎて戦うのめんどくさい」
「だから――」
直人は天使の群れを見上げる。
「一番楽な武器が出たってことか。」
空也が頭を抱える。
「いやいやいや!!」
「そんな都合よく武器生まれる個性聞いたことないっすよ!!」
そのとき。
空に浮かぶ天使たちが一斉に手を掲げた。
空に光の輪がいくつも現れる。
氷織が叫ぶ。
「やばい!!一斉攻撃来る!!」
次の瞬間――
無数の光の槍が降り注いだ。
ズドドドドド!!
地面が爆発し、煙が舞い上がる。
だが。
煙の中から、ゆっくりと直人が歩いて出てきた。
手には、光る剣。
そして――
周囲には濃い霧。
空也が驚く。
「無傷……?」
直人は肩を回す。
「めんどくさい攻撃だったからな」
「当たらないようにした」
空也が固まる。
「え?」
氷織も聞き返す。
「……当たらないようにした?」
直人はあっさり言う。
「霧が、攻撃の軌道をズラしたんだろ」
空也が叫ぶ。
「それもうほぼ無敵じゃないっすか!!」
そのとき。
一体の天使が急降下してくる。
「排除」
直人は剣を構えた。
「はぁ……」
「ほんとめんどくさいな」
次の瞬間――
直人の姿が消えた。
氷織が目を見開く。
「え!?」
次の瞬間。
ザンッ!!
天使の背後に直人が現れ、剣を振り抜いていた。
天使の体が光になって崩れる。
空也が震えた声で言う。
「今の……」
「瞬間移動っすか?」
直人は剣を肩に担ぐ。
「違う」
「最短で倒せる動きになっただけだ。」
空也は頭を抱えた。
「なんすかそのチート能力……」
だがそのとき。
空に浮かぶ天使たちの中から、
ひときわ巨大な影が降りてくる。
翼は六枚。
他の天使とは明らかに格が違った。
氷織が震える。
「うそ……」
「上位天使……」
その天使は直人を見下ろす。
「確認」
「個性名:未登録」
「危険度:Sランク」
空也が青ざめる。
「格上きたっすよ……」
直人は剣を肩に乗せる。
そして小さく笑った。
「……あー」
「これは」
「今までで一番めんどくさい」
霧がさらに濃く広がる。
直人の目が光る。
「だから――」
「一番楽に勝てる方法を出すか。」
ドンッ!!
上位天使が地面を蹴った。
直人の目の前に一瞬で現れる。
氷織が叫ぶ。
「速っ――!!」
だが。
ガキン!!
金属がぶつかる音が響いた。
直人の剣が、上位天使の剣を受け止めていた。
空也が目を見開く。
「なおちゃん……反応してる!?」
上位天使が言う。
「反応速度、異常」
直人は面倒そうに言う。
「そりゃそうだ」
「速いのめんどくさいから」
「見えるようにしただけだ」
空也が叫ぶ。
「それもう能力なんでもありっすよ!!」
だが次の瞬間。
上位天使の目が光る。
「解析完了」
「能力特性:状況最適化型の可能性大!」
氷織が驚く。
「状況最適化…?」
天使は続ける。
「対象は“最も効率的な結果”を現実化する、、!」
「危険度再評価」
「Sランク → SSランク」
空也の顔が青くなる。
「なおちゃん…」
「天使にランク上げられてるっす…」
だが直人はため息をついた。
「……めんどくせぇ」
直人はもう片方の手を上にかざす。
「殲滅!」
空の上から無数の光の矢が振りかかる。
一瞬にして天使もろとも突き刺さる。
戦いはすぐに収まった。
蹂躙された天使の死体は粉になって消えていく。
「なおちゃん、、、」
空也と氷織は驚いている。
街には静寂が戻っていた。
さっきまで空を埋めていた天使の姿は、もうどこにもない。
氷織がぽつりとつぶやく。
「……全部、倒したの?」
空也は呆然と空を見上げる。
「なおちゃん一人で……」
直人は光の剣を肩に乗せながら、大きくあくびをした。
「ふぁ……」
そして、ぼそっと言う。
「思ったより楽だったな」
空也が思わずツッコむ。
「いやいやいや!!全然楽そうに見えなかったっすよ!!」
氷織も苦笑する。
「普通の人なら街ごと消えてるレベルだよ……」
直人は肩をすくめた。
「でもよ」
「めんどくさいことは」
直人は空を見上げる。
「楽に終わらせるのが一番だろ」
その瞬間。
手に持っていた光の剣が、静かに光を失う。
パキッ……
そしてまた、ただの木の枝に戻った。
空也がそれを見て言う。
「ほんと謎っすね、その個性……」
氷織も小さくうなずく。
「でも――」
「多分とんでもない力だよ」
直人はそれを聞いても特に気にする様子もなく、木の枝をポイっと地面に投げた。
「さーて」
「帰るか」
空也が聞く。
「いいんすか?このまま」
直人は面倒そうに歩き出す。
「どうせまた来るだろ」
「天使」
氷織が少しだけ不安そうに空を見上げる。
空にはまだ、かすかに裂け目が残っていた。
まるで――
誰かがこちらを見ているかのように。
だが直人は気にせず歩いていく。
「次来たら」
「また楽に終わらせるだけだ」
その背中を見ながら、空也は小さくつぶやいた。
「なおちゃんの個性……」
「やっぱりやばいっすね」
「なおちゃんすっごい!」
氷織は褒めている。
「なおちゃんって呼ぶな」




