巻き戻しすぎた人生と、脳内会議
ギャグが好きです…ざまあはあまり好きじゃないけど、今回は…とりあえず、アリアちゃんをよろしくお願いします。AIさんと一緒に執筆しているので、嫌いな方は回れ右でお願いします!
冷たい石畳の感触が、アリア・バスク・チュールの背中からゆっくりと熱を奪っていく。
地下牢特有の湿った空気。鼻をつくカビの臭い。
それも、もうすぐ感じなくなる。
(ああ……やっと、終わるのね)
冤罪。悪役令嬢。婚約破棄。
皇太子ディーン・ジェット・ルアンの心変わりと、聖女の出現によって貼られたレッテルは、アリアの人生を無惨に踏み潰した。
悔しくないと言えば嘘になる。けれど、あの茶番劇のような泥沼の日々にまた戻るくらいなら、ここで幕を下ろす方が幾分マシだ。
意識が闇に溶け、呼吸が止まる。
安らかな無が訪れる――はずだった。
「許せない」
凛とした声が、漆黒の闇に響いた。
アリアがぼんやりと意識を向けると、そこには一人の少女が立っていた。
夜の闇を溶かしたような黒髪に、黒曜石のような瞳。この国ではまず見かけない、不思議な容姿の少女だ。
「……誰? お迎えにしては、随分と幼いけれど」
「私はアキラ。貴方の魂の一部よ、アリア」
少女――アキラは、怒りに身を震わせていた。
「せっかく転生したのに! またこんな若くして死ぬなんてありえない! しかも相手があんなポンコツ皇太子と腹黒聖女だなんて、末代までの恥よ!」
「……転生?」
「そうよ。貴方は忘れてるけど、貴方の魂はもっと自由で強かったはずなの。それが、こんな理不尽な理由で終わるなんて……私は認めない」
アキラの瞳がギラリと燃え上がった。嫌な予感が、アリアの背筋を駆け抜ける。
「だ・か・ら! 時間を巻き戻して、やり直すことにしたわ!」
「は……?」
アリアは思わず素っ頓狂な声を上げた。
やり直す? あの地獄のようなお茶会や、白い目で見られる舞踏会をもう一度?
「ちょっと待って、冗談じゃないわ! 私はもう疲れたの。次はもっと穏やかに――」
「問答無用! 次こそは幸せ掴み取るわよ、アリア!」
「やめなさい! 離して、私は行かないわよ――!」
アキラがパチン、と指を鳴らす。
強烈な浮遊感と共に、アリアの意識は強制的に引き剥がされた。
***
「――ギャアアアアッ! オギャアアアアッ!」
(……うるさい)
耳をつんざくような泣き声で、アリアは目を覚ました。
何事かと思って起き上がろうとするが、体に力が入らない。手足がやけに短く、視界がぼやけている。
目の前には、巨大な天井と、自分を覗き込む巨人のような女性たち。
「まあまあ、元気な産声ですこと!」
「おめでとうございます奥様、可愛い女の子ですよ!」
(……は?)
状況を理解するのに、数秒を要した。
自分の意思とは関係なく口から漏れる「オギャア」という声。柔らかい布の感触。そして、目の前の光景。
(赤ん坊……? 私、赤ん坊になってるの!?)
巻き戻すとは言っていたが、まさかここまで戻すとは思わなかった。
人生のスタート地点。オムツの中まで逆戻りだ。
(アキラ……! 巻き戻しすぎでしょう……!!)
心の中で絶叫した瞬間、脳裏に『ピロン♪』という軽快な電子音が鳴り響いた。
次の瞬間、アリアの視界――というより脳内に、半透明の青い板がいくつも浮かび上がったのだ。
『システム起動:統合データベースに接続』
『タイトルA:剣と魔法のファンタジア』
『タイトルB:蒼穹のアルカディア』
『タイトルC:……』
(な、何これ……?)
アリアが混乱していると、頭の奥からアキラの知識が流れ込んでくる。
これはアキラが持っていた「前世の記憶」にある、ゲームの情報だった。
この世界は、単なる一つの世界ではない。
時代や場所を違えて存在する、同じゲーム会社が作った同じ世界線の、複数のゲームの世界観が幾重にも重なり合った「複合世界」なのだ。
ウィンドウには、この先アリアが直面するであろう歴史の流れや、まだ誰も知らない隠しダンジョンの場所、そして――
『効率的なレベル上げリスト』
『ステータス限界突破の方法』
『最強の物理攻撃スキル習得条件』
ずらりと並ぶ、物騒な文字列。
アキラの知識が、まるで悪魔の囁きのようにアリアに告げている。
『悲劇を回避したければ、力を示せ』と。
権力でも、話術でもない。この理不尽な世界をねじ伏せるための、圧倒的な「個の力」を。
アリアは、ふにふにとした自分の小さな手を握りしめた。
(……つまり、私に脳筋になれってことかしら?)
ゆりかごの中で、アリア――見た目は愛らしい赤ん坊――は、決意を秘めた瞳で虚空のステータス画面を睨みつけた。
時間が巻き戻ったアリア。まさかのオムツ時代から…




