夜明けの就職
「ええ、本当はこれだけの理由だったんだけど、途中で貴方がこれを飲んだから」
そう言って女性がポケットから取り出したのは、さっき僕が無理やり飲まされたカプセルだった。
「見覚えがあるようね。これは能力強制覚醒剤Apollyonって言って飲んだ人間を強制的に能力者に覚醒させるの」
確かにこの薬を飲んで能力を獲得はしたが、そんな理由で追われても困るものだが...
「貴方は何の因果か生き延びてしまったのよ。その薬で生き延びる確率はたったの5%だけなのに…そして、そんな貴方に残された道は2つだけよ」
「一つは異能の研究所で一生奴隷の様な被検体生活、もう一つが私の執事として高騰で勉強して行く、さてどちらが良いかしら?」
確かに、もしこの女性の言う事が正しいなら5%で生き延びた僕は被検体としての価値は高いだろう。逆に僕を執事にしてもメリットがこの女性にはまるでない。どうしてこの様な選択肢にしたのだろう。
「一つ聞いてもいいですか?」
「ええ、勿論よ!貴方には聞く権利があるわ」
「じゃあ、どうして僕を執事として雇う必要があるのですか?私の能力は強い分けではないそうですし。何より何故研究所から私を隠してまで私を執事にしたいのですか?」
そう、僕が疑問に思ったのは研究所の話だ。研究所なら当然生き延びたデータは欲しいはず、それでもこの女性は僕に執事に成るかを聞いてきた。この女性にとって研究所はそこまで大事じゃないという事だろうか?
この疑問が晴れない限り僕は逃げるつもりでいる。
「ぷ...ぷぷ...アハハハハハァ、何言ってるのかしら当たり前じゃない。人が目の前で奴隷落ちしていく所を見たい人何ていると思うの?」
へ?....そんなお人好しがいる分け無いですし嘘と考えて良さそうですね。真の目的はわかりませんが流石に奴隷落ちするよりは執事になった方がマシというモノでしょう。何よりこの能力の使い方を知れば、また違う生き方を見つけられますから。
「分かりました。取り合えず執事になるに辺り給料と職務内容を教えてもらえます?」
「ええ、当然ね。まず給料がこれくらい」
彼女は部屋の後ろの机から電卓を取り出すと数字を打ち始める。打ち終わったのか少しため息を吐きながらもこちらに数字を見せてくる。大体、時給換算で生きて行くには十分のお金が提示された。
「で、次に職務内容なんだけど私の護衛兼お世話係が貴方の仕事になるわ」
「....お世話係」
目の前の女性を訝しげな眼で睨む僕、その年でお世話係が果たして必要なのだろうか?それともお嬢様というのは皆こうなのだろうか....
「ゴホン、あくまで父上や母上を納得させる理由だから気にしないで頂戴」
なるほど。当然自分のお金で雇う分けではないのだから両親の決定も必要な訳だ。
「それで他に何か質問はあるかしら?」
「いいえ、特には」
「じゃあ決定ね。これからは貴方の主人よ。名前は明野雅よ。よろしく」
そう言い女性いやお嬢様が手を差し出してくる。
「ええ、此方こそよろしくお願いします雅お嬢様」
僕らは握手を交わし、笑顔を作る。
「そろそろ、家に着くハズよ一様準備をしておいて、もしかしたら父上や母上が何かを言ってくるかもしれないから」
準備と言われても準備する事が無いので自分の能力でも弄ってみる。まず、体の近くで起こっている現象を探ってみる。意識を集中させると大量の数字の羅列が一瞬で変わり続ける。次に此方に向かってくる数字を違う方向に変えてみると僕の目の前が真っ暗になった。比喩ではなく本当に目に見えている所が真っ暗になった。
次に此方に向かって来る数字を少しづつ反射させて行くすると、酸素が薄くなって行き目の前が暗くなっていく。大体ここら辺が人間が当たらなくてもいい紫外線や酸素量らしい。
次に頭の上から自分に落ちてくる数字を弄る。あ!僕の体が浮きそうになったがギリギリの所で数字を元に戻す。すると今度体が重くなった要に落ちっていく。所謂重力ってやつなのだろう。
ていうか計算式結構簡単だな。ただ自分の周りの数字を理解して計算して周りの数字を弄ればいいだけだから。
というか、これ自分に当たる物って決まっているから、必要な物だけ反射しないでそれ以外全部反射の計算をしてれば誰にも殺されないのでは?
「貴方今何かしたかしら?急にアンタの姿が見えなくなったから」
そうか僕が光のベクトルを全て別向きにしたから可視光線も当たらなかったのか。
そんなこんなしている内に車が止まる。
「着いたわ。これから家に入るけど、絶対面倒は起こさないで頂戴ね」
僕と雅様は二人でこのヘンテコな車から降りた。降りた先には、まるでお屋敷とでも言う様な大きな建物があり、門の前にいた黒服達が雅様を見るとせっせと門を開錠し始める。
「さあ、付いてきて頂戴ここからは歩きでしか入れないから」
雅様は開いた門をズカズカと通り中に入っていく。少し進んだ先には噴水があり、奥には屋敷の入り口があり右側を見ると学校のグラウンドと見違う程の大きなトッラクがあった。
雅様は扉の目の前まで行くと扉の脇に付いている防犯カメラを見て「雅です。只今帰宅しました」その一言と同時に家の扉が自動で開き中から一人のメイドが出てくる。
「お疲れさまでした。雅様....所で後ろの下種なオスは一体誰ですか?」
「お初にお目に掛かります。私雅様の執事をさせて頂く事になりました夜空光ですこれからよろしくお願いします」
ちゃんと社交辞令を済ませておく。さっき雅様に言われた通り、こういう事は何事も先に済ませて置かなければ後々面倒な事になると知っているからだった。




