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そうだ!楽しい妄想をしよう!

その日も僕は授業に身が入らずいつものように妄想の世界に逃げ込もうとしていた。だが、何故かうまくいかない。僕の中の何かがそれを拒んでいるのだ。


-止めろっ!妄想するな!もっと別の事に打ち込むんだ!前を向け、現実を生きろ!-


なんだ?とうとう僕にも電波が聞こえるようになつちゃったのか?ふむっ、ならこれで僕も一人前だな。でもまだ免許がないから歩行者天国にトラックで突っ込むことは出来ないな。ナイフで自分より弱者を刺して回るのはかっこ悪いし、だからと言ってヤクザに立ち向かうような信念もない。結局、電波系でも僕はクズらしい。もっともクズの世界の英雄は、現実世界では迷惑な穀潰しだけどね。


結局、今回は妄想に逃げ込むことも出来ず漫然と授業を受けて終業のチャイムを聞くことになった。黒板には僕が理解できない化学式が書いてある。


「なぁ、あれって次の試験範囲に入ってる?」

僕は隣の女子に黒板を指差して聞いた。

「タケル君、また飛んじゃってたの?まったく大した特技よね。隣にいる私ですら気づかずに寝れるんですもの。大丈夫、今日の授業はこの前のお浚いだから出ないわ。」

いや、今回は飛んでないよ。でもだからと言って授業も聞いていなかったけどね。そうゆう彼女も黒板なんか写していない。ノートに忙しなく書いていたのは漫画のコンテだ。内容に関しては、恥ずかしいからと言って見せてもらえない。

次の授業は古典だ。実は僕は古典の授業が好きだったりする。よって次の授業は飛ぶことはない。午後一番の授業は英語だが、この先生は生徒にヒヤリングを強いるのでさすがに寝られない。結局、今日の妄想タイムはお終いだな。そんなことを思いながら僕は次の授業の準備を始めた。


次の日、僕は午後一番の授業を睡魔と闘いながら意識を保とうと必死だった。結局、今日もまだ一回も妄想をしていない。寝ちゃえば夢は見れるかも知れないが、それは妄想ではない。僕は自分の夢をコントロールすることが出来ない。コントロールできないならそれは妄想ではないのだ。


しかし、この眠気はなんだ?昨夜はそんなに夜更かししなかったぞ?朝一番の体育の授業の疲れが今頃きたのか?

そしてとうとう僕は耐え切れず夢の世界に落ちる。


その夢は凄惨なものだった。怪獣が暴れ回り大地震に見舞われ、地殻が崩壊し日本が海に飲み込まれる。しかもその原因が僕というオマケ付だ。本当に夢はコントロールが効かない。いくら僕が中二病患者だからと言って自分の世界の崩壊を本気で望む訳ないじゃないか。

僕はちゃんと迷惑という言葉の意味を理解しているぜ?バレなきゃ万引きは罪じゃないなんて突飛な理論を展開するやつらと一緒にしないでくれ。


だが、そんな悲劇にも救いはあった。夢の中の僕は時間を巻き戻し全てをやり直そうとして成功する。これにより惨劇は防げるだろう。


よかった・・。やり直せるんだ。今度こそ間違いはしないっ!


そこで僕は先生に叩き起こされる。

「珍しいな、お前が居眠りとは。まぁ、他の者も授業に身が入らんようだしな。少し早いが終わるとしよう。だが、他の教室はまだ授業中だ。騒ぐなよ。」

「おおっ!」

先生の寛大な処置に生徒たちは小さく喜ぶ。中学生あたりなら大声ではしゃくところだろうが僕らは高校生だ。もう大人なのだよ。


「怒られちゃったね、今回は爆睡していたよ?体調でも悪いの?」

隣の席の女の子が僕に声を掛けてくれる。どうやら僕は顔色が悪かったらしい。だが僕はそれどころではなかった。


思い出した!全てを思い出した!僕は戻って来た!やり直す為に戻って来たんだっ!ここは一度体験した時間軸だ!今度こそ失敗はしないっ!


取り敢えず妄想は防げた。これならニサンカはやって来ない。日本沈下も現実化しないはずだ。だが安心してはいけない。今日、妄想しなかったからと言って明日の妄想が現実化しないという保証はないのだ。妄想は駄目だ。封印しなければならない!


「タケル君・・、保健室で休んだ方がいいんじゃない?」

彼女が僕を心配する。ああ、そうだね。君はいつも僕に優しかった。そんな優しさに甘えて僕は備えを怠り君を死なせてしまった。だが、もう、そんな目には合わせない。

「ありがとう、でも大丈夫だ。ちょっとびっくりしただけだから。」

「そう?でもなんかこの頃、タケル君飛ばなくなったね。もしかしてそれが原因なんじゃないの?あんまり無理すると体に毒よ?」

いや、ここは無理をしなくちゃならない所なんだ。僕の妄想は悲劇を産む。


「ところでタケル君の妄想ってどんななの?見ないと体調を崩すくらいだから、そうとう楽しいことなんでしょうね。」

楽しい?冗談じゃないっ!あんな惨劇のどこが楽しいんだっ!・・あれっ?でも、あれはたまたま前日に見た映画の影響が強いよな?いつもはあんな妄想はしなかったはずだ。彼女が言うようにウハウハ、えっへん!なことを妄想していたはずだ。

なんであれは現実化しなかったんだ?妄想の種類によって違うのか?それともあの日を境にそんな能力が僕に備わったのか?宇宙船に拉致された記憶はないんだが・・。いや、あいつら記憶を消すっていうからな。本当に拉致られたのかもしれない。そして僕を使って地球を壊滅させようとしたんじゃないのか?


妄想と疑念には果てがない。とうとう宇宙人まで出てきたよ。だがどれも確固たる証拠はない、ただの仮定だ。でもそうだな、確認する必要があるかもしれない。もしかしたら戻って来た僕にはもう能力がないかも知れない。消滅した能力に怯えてびくびく生きるのは馬鹿らしい。ここは仮説と実証といこう。やっぱり事象の原因究明には実験が欠かせないからね。


「うん、まぁ、その内話してあげるよ。気に入ればネタに使っていいよ。」

僕は彼女の問い掛けに適当に答える。僕は彼女が漫画を描いている事を知っている。そして彼女はいつもネタがないと悩んでいた。あの妄想は話す気にはならないが別のなら彼女も気に入ってくれるかも知れない。

「えーっ、エロは嫌よ?健全なやつにしておいてね。」

「きついなぁ、思春期の男だからと言って全部が全部そっちばかりじゃないぜ。」

「そう?なら期待しておくわ。出来るだけ派手なのをお願いね。」

いや、派手なのはごめんだ。あれは高校生の妄想限界を超えている。なんであんな妄想が出来たのだろう?あっ、映画を見たからか・・。凄いな、映像のチカラって。となるとAVを見たら禁断の大人の世界を妄想できるんだろうか?うんっ、これは是非とも実験せねば!

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