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学園カースト制

さて、僕の妄想実地検証もかなりデータが集まった。よって今度は実証試験に入ることにする。つまり、僕が妄想をちゃんとコントロールできるか確認するのだ。しかし、突飛な事を妄想してもそれが僕のコントロールなのか、たまたまなのか判らなくては検証にならない。そこで今回も学園を舞台にした妄想をすることにした。


前回は学園ラブコメのはずだったが、何故か立ち位置が教師、もとい、講師だったのでラブラブイベントが発生しなかった。今回はこのところを注意して調整したい。やっぱり、女子生徒とは大人として接するより同年代として同じ空気を味わいたいからね。


そして次の日、学校に行ったらそこは独裁国家だった。いつものように教室に入ろうとすると僕を呼び止める声がする。

「ちょっとあなたっ!あなたはCランクでしょう!Cランクの教室は向こうよ!」


振り返ると腕に風紀と書かれた腕章をしている女の子がいた。おおっ、本当に出てきたよ、風紀委員。しかも逆さ十字まで付けている。これは僕の妄想には無かったな。見た目をアレする為に追加してくれたのか?さすが宇宙人、アニメをよく見ているね。


「あっ、すいません。ボケっとしてました。」

「今回は口頭注意で済ませるけど、次ぎやったら懲罰房行きよ。分かったら行きなさいっ!」

僕はペコペコしながら言われた教室へ向かう。ここで慌てて走っては駄目だ。廊下は走らない。但し緊急時及びAランクは除外。これが校則である。風紀委員の目の前で校則破りはできない。せっかく、見逃して貰ったのにボケを2回重ねる高等技法は彼女らには通用しないのだ。


「ふうっ。」

Cランク教室の僕の椅子に腰掛け僕は大きく息を吐き出す。

「ようっ、朝から風紀委員にちょっかい出すとはお前もやるじゃないか。」

同じクラスの男子が僕に声を掛けてくる。こいつ、誰だっけ?ああ、元の世界では隣のクラスのイケダとかいうやつだったな。


「別に。ちょっとした手違いだ。お前だって学年が変わった時はやっただろう?」

「何言ってんだよ。しかし、運がいいな。口頭注意だけで済むなんて。お前、あいつに何か送っておいたのか?」

何かとはなにか?そう、賄賂の事だ。


「まさか、なんが嬉しくてやつらに贈り物なんかするかよ。そんな事するくらいなら名前だけの慈善団体に寄付した方がマシだ。」

そう、彼女たち風紀委員はみんなから嫌われている。だが、それ以上に恐れられている為、表立っては批判できない。もしも、そんな事がばれたら、次の日からそいつの席には別のやつが座ることになる。


「ははは、そうだな。でも気をつけろよ。壁に耳あり、障子に眼ありだ。密告はいい点数稼ぎになる。迂闊な事を言うとしょっ引かれるぞ。」

「ああっ、お前もな。そろそろ席に戻れ。ホームルームが始まるぞ。」

やつと僕はお互い拳を出して挨拶すると話しを切り上げた。やつの言う通り、クラスの中だからと言って気を抜いてはいけない。ここでは仲間を裏切る事などしょっちゅうだ。いや、推奨されていると言ってもいい。ここは独裁学園『優性民族の子供たち学園』だ。普通の常識は通用しない。


確かにこの国でこの学園の生徒であるメリットは大きい。卒業できれば未来は約束されたも同然だ。但し、卒業できればである。この学園は入るのはそれ程難しくない。中学の校長推薦があればストレートだし、一般公募試験も有名進学校に比べれば水準は低い。よって新入生の数はいつも定員の3倍以上だ。定員があるにも関わらず3倍もの学生を入学させるのは別に入学金目当てではない。それだけ脱落者が多いという事だ。


この学園の規則は厳しい。しかし、社会の眼からはそれだけ素晴らしい教育を施されていると映るらしい。だから脱落者たちは声を挙げずらい。負け犬の遠吠えと捉えられるからだ。よってこの学園の内情は入学してみないと分からない。そして真実を目の当たりにした者は愕然とする。しかし、卒業後の保障に眼が眩み学園が敷いたレールの上を走り始める。一旦、走り出せば途中下車は出来ない。ここはそんな飴で集め鞭で教育する独裁学園だった。


学園カースト。正式名『学園自主運営制度』


これは、ある組織が学園内を公平に維持、発展させてゆく為に編み出された学園内の法律だ。ある組織とは、勿論生徒会である。


この学校には公然とした身分制度がある。名前こそランクといった普通の言い方だが実情は違う。ランクにはAからEまであり、勿論Aがトップだ。これを中世の封建制度に例えるとAが王族、Bが貴族、Cが騎士や僧侶でDが一般領民、Eが農奴でFは家畜だ。


僕はぎりぎりCランクなので今回みたいな失敗も見逃して貰える事があるがEやFが同じ事をやったら問答無用で懲罰房行きである。


このランク付けは勉強だけでは決まらない。心技体、全ての要素が加味されて決まる。しかも、どんなに好成績を挙げても一回に上がれるランクは一段だけ。しかし、落ちる時は一遍に2ランク落とされる。1ランクダウンは存在しない。だから僕が次のランキングで学年トップを取ったとしてもAにはなれないのだ。そしてランキングの発表は年に2回だけ。つまり一旦Fランクに落ちたやつは1年掛けてもCランクに上がれないのだ。


でもがんばれば上に行ける道があるんだからいいじゃないかと思うだろう。確かに制度上はそうだ。だがFランクの置かれた状況は過酷だ。ちょっとしたミスで減点を食らう。そうなると幾ら勉強やスポーツで高得点を取ってもランキアップするのは難しい。


実際、数が一番多いにも関わらずFランクのEランクへの昇格数はEがDになる数の半分もない。これがこの学園の実態である。少数のトップがその下の者を使い、更に下の者を支配するピラミット構造。これが僕らのいる学園『優性民族の子供たち学園』だ。

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