第39話 反省会
長らく更新サボっていてすいませんでした…。不定期更新で再開したいと思います。
「……私の負けです。手も足も出ませんでした」
首に手をかけられたイオが絞り出すような声で告げる。俺は首から手を放して立ち上がると、イオに手を差し出した。
ありがとうございます、と礼を言いイオが俺の手を取り立ち上がる。
イオに大した怪我がないことを確認した後、2人で近くの木陰へと座り込んだ。
「さて、早速だけど反省会と行こうか。イオ、今回の敗因は何だと思う?」
「敗因ですか……」
イオは顎に手を当てて少し考え込んだ後に答えた。
「私はオルフェさんの動きに反応し切れなかった事だと思います。初めの攻防もそうですし、私から切りかかった時もそうです。オルフェさんの動きが読めずに後手に回ってしまいました」
イオは動きを読み切れなかったことが原因だと思っているようだ。そしてそれはおそらく正しい。
俺の初手の攻撃には対応が遅れて反撃もままならず回避しただけだったし、イオから切りかかって来た時も俺の反撃に反応できず武器を弾かれてしまっていた。
「そうだね。俺もそれが大きな要因だと思ってるよ。イオの行動はいつも後手に回りがちなんだ。その原因が相手の動きを読み切れていないからだと俺は思うんだけど、どう?」
後手に回るということはそれだけ相手に戦闘の主導権を握られるということである。カウンターを狙うのであれば後手に回るのも悪い事ではないと思うが、イオは最初の俺の飛びかかり攻撃に対して反撃もなしに回避するので精一杯だった。少なくとも今の段階では到底カウンターは狙えそうにない。
「私もその通りだと思います……。魔物と戦っている時もそうなんです。いつも向こうの動きに振り回されて状況が悪くなるばかりで……」
今までの戦いを思い出しているのかイオの表情がどんどん沈んでいく。今にも泣き出してしまいそうだ。
「そんな落ち込まないでよ、イオ。まだ1戦目で特訓は始まったばかりだよ。これから欠点を直していけば良いじゃんか!」
「ありがとうございます、オルフェさん。そうですよね、メソメソしてても何も始まらない。私、頑張ります!」
頬をパチンと叩いてイオが顔を上げた。先程までの沈んでいた表情は影を潜めて、イオの決意に満ちた瞳と目があった。気合いを入れるときに頬を叩くのがどうやらイオの癖みたいだ。蜘蛛型の魔物と戦う前も頬を叩いていたし。
「その意気だよ、イオ。一緒に頑張ろうね!」
「はい! それでは、もう一戦お願いします!」
イオは勢い良く立ち上がりながら言った。その手には長剣が握られており、やる気満々である。
「待って待って! まだ反省会は終わってないって! ちゃんと今回ダメだった点の対策を練らないとさっきの二の舞になっちゃうよ」
意気揚々と立ち上がったイオには悪いが反省会もまだ始まったばかりである。確かに実戦を重ねる事も大事だが、時間はたっぷりある。ただ戦闘を続けるよりも戦術に関して話し合ってから実戦に移った方が得るものは多いはずだ。
「あ、そうですよね……。まだ反省会終わってないですもんね、1人で空回りしちゃって恥ずかしいです……」
先程までの凜とした表情は何処へやら。顔を真っ赤にしてイオは座り込んだ。頬に手を当ててイオは目線を下に向けてオロオロしている。イオは年上だけど、なんだか小動物みたいで可愛いと思ってしまった。




