朝の黒服
───懐かしい夢を見た気がする。
それは遠い遠い昔の記憶。
だが昨日の事のようにも感じられるほど鮮明で忘れられない記憶
しかし今日も今日とて朝はくる。
そしてもうすでに私の起床時間となっていた。
私は黒服。お嬢様の黒服。
黒服とは執事兼護衛兼雑用係だ。
というか雑用係だ。
お嬢様のわがままを全て受け入れそれを実行しお嬢様に仇なす者を全て排除する。それが私の仕事だ
さてさて、自己紹介をしている間に
身支度も終わったことだ。今日も朝から仕事がたくさんある。
最近の朝の日課は庭にある花畑の世話だ。
お嬢様の好きなバラの花ばかりで構成された庭の花々にこれから起きるであろうお嬢様に言われるであろうわがままにも頑張って応えようという気を起させてくれたらいいのにと思いながら、若干祈りながら水を散布させる。
これが意外と重労働だ。水を撒くのは魔法でちゃちゃっとやってしまえるのだがやっぱりそこはジョウロなどでひとつひとつゆっくり水をあげたいのだ。
水を撒くのを一気にやってしまうと愛着が湧かない。愛着が湧かないなら感情が伝わらない。花は人の感情を受け綺麗になるものだと言っていたのは
お嬢様だったか、お嬢様のお母様だったか…
ブルッ!!
いきなり寒気が走った。
その寒気は昔お嬢様に口が悪いから人が逃げるのですと発言してしまった時に感じた物と一緒だ。
──人の思考を読まないでいただきたいものだ。
そう心の中で愚痴ていたときだった。
「読みやすいあんたが悪いんやろ?顔に全部出てんで。あほやろ」
そんな声が聞こえ後ろを振り返ると敬愛すべきだろうが出来ない、しかし私が一生を賭して、いや悪魔と契約してでも守ると決めた愛するお嬢様がいた。
「おはよう。朝からあんたのあほ面みれて私は幸せモンやわ」
そう言って私に見せた笑顔はあの日の全てへ絶望した顔の面影をみせないほど輝いていた。




