七十七話
17地区北部の公園より、南方方面からの増援部隊はもっと手を焼いていた。
この地域で、他地区から増援部隊は付近一帯の鬼獣群を殲滅していたが、
背後から出現した新鬼獣の猛撃を受けた。
昼過ぎには、日本決死隊、死社会人部隊で編制された部隊を先頭に、他地区からの増援部隊、アイドルグループの熱狂的な追っかけ集団、総数二万五千人名が
新鬼獣を破り、午後三時半頃までに公園敷地内に大きく食い込んだ。
だが、それでも鬼獣群は撃っても撃っても湧き出るように出現し、散乱する死骸を乗り越えてやってきた。
「ソルジャー」で圧倒的に占めていた鬼獣群は、防衛側陣地に躍り込み数十体(匹?)で一人に襲いかかった。
この世界の人々は生半可な訓練を受けていないためか、誰一人恐慌する者はおらず、逃げだそうとする人はいなかった。
特に熱狂的な追っかけ集団の中には、爆発物を固定した太いベルトを腹部や大腿部に装着した者が、襲いかかってくる鬼獣に突撃し爆発物を爆発させて、
もろとも自爆している。
「まったく、酷いありさまだ!! あのネジが三本飛んでいるような連中は
何だ!?」
ロシア産の大型対物ライフルKSVK 12.7の引き金を絞り終えた男性住民が、
隣に いた男性住民に尋ねる。
「手野グループ傘下の芸能事務所に所属する、最近売り出しのアイドルグループの熱狂的な追っかけだ」
メキシコ軍に配備されているFX-05 シウコアトルの弾倉を入れ替えている男性住民が短く応える。
「あー・・あれが・・・」
尋ねていた男性住民が、答えを聞いて微妙な表情を浮かべる。
「ネット掲示板や無線からは、あんな連中が17地区入りしているみたいだぜ」
FX-05 シウコアトルを持っている男性住民がさらに告げる。
「嘘だろ」
大型対物ライフルKSVK 12.7を持っている男性住民は、それを聞いて
絶句した。
確かに、何処かの世紀末漫画や映画に登場する強烈な格好のファンが、続々と
17地区入りしていると聞けば、誰だって絶句する。
「嘘なもんか。まぁ、俺的には戦力になれば誰だっていいさ―――――いま、飛んできたAC-130W も、そのファンクラブの所有物らしいぞ。ネット情報だが」
一つ表情を変えずに空を見上げた。
「情報も何も・・・、持っている奴は持ってるだろ、AC-130W なんて」
大型対物ライフルKSVK 12.7を持っていた男性住民は、何処か呆れた表情を
浮かべながら告げ、同じく空を見上げた。
上空には、AC-130W が悠々と飛びながら向かってくるのが見えた。
やはりファンクラブらしいというべきと言えば良いのか、機体にはアイドル
グループのロゴやステッカーを貼り付けている。
また上空を飛んでいるAC-130W は一機だけではなく、六機編成だ。
六機の中、一機が編隊から離れ機体を左に旋回し始めた。
「おい・・・ものすごく嫌な予感がするんだが・・・」
大型対物ライフルKSVK 12.7を持っていた男性住民が、戦く様に尋ねる。
「奇遇だな。俺もだ―――――どうやら、この乱戦の中上空から援護してくれる
ようだ」
FX-05 シウコアトルを持っている男性住民が、冷静な声で応える。
「何、冷静に応えているんだよ!? おい、無線か何かで連絡して――――」
大型対物ライフルKSVK 12.7を持っていた男性住民が、喚く様に告げる。
「無駄だな。あの様子だとおそらくファンクラブの代表とここの地区の上役と
話はついているはずだ。
そうでもしなきゃAC-130W で、乱戦最中の支援するような事は許可は
出ないし、出来もしない。それぐらい勉強しただろ?」
FX-05 シウコアトルを持っている男性住民が、冷静な声で応える。
「でもよ!?」
大型対物ライフルKSVK 12.7を持っていた男性住民が、さらに何か言おう
とする。
頭では、わかっていても感情的には納得出来ないのだろう。
「かかしもない。文句言っている暇があれば退避するぞ」
FX-05 シウコアトルを持っている男性住民が、冷静な声で言い終えると、
ほぼ 同時に、AC-130W は全ての銃口を眼下の地上に無数の砲弾を浴びせ
始めた。




