七十六話
地獄の釜へと放り込まれた17地区は、国防軍から『徹底抗戦』の命令を受け
ていた。
街路には熊のマークの工務店"でお馴染みの『卯堂』が築いた
大小の偽装トーチカが存在し、どの住宅もどの地下室も火点であり、17地区全
住民は、完全武装し、防衛軍に編成されていた。
住民達は自分たちの場所を守るか、それとも鬼獣に殺されるかの選択肢が
残されていた。
この情勢で、世界の何処にも安全な逃げ場所なぞない事を、この世界の人々は
骨身に染みるほど理解しているためか、誰も後者を選ぶ住民はいなかった。
防衛の基礎戦力は、17地区の全住民、火力も弾薬も数十個連隊規模、そして他地区からの増援――――。
それでも、17地区は地獄の釜へと放り込まれた。
特に新種鬼獣の出現の影響は大きかったが、17地区防衛軍は勇猛かつ巧妙に
鬼獣群に銃火を浴びせていた。
市販されている無反動砲、M198 155mm榴弾砲、M777 155mm榴弾砲、
そして膨大なM252 81mm 迫撃砲といった兵器が火を吹いている。
17地区北部の公園付近では、とある熱狂的なアイドルグループの追っかけ
集団と近隣住民が悪鬼の如く闘い抜いていた。
自動小銃、手榴弾、銃剣、または改造した斬撃武器や打撃武器で、苛烈な
白兵戦を展開している。
昼過ぎには、二個連隊規模の「死社会人部隊」が17地区北部の公園付近に
到着した。
「死社会人部隊」の一部は、正面攻撃で公園の外縁に食い付き、雲霞の如く
湧くように居座る「ソルジャー」、猟犬型鬼獣「インベイダー」、中型鬼獣
「イントゥルーダー」、そして新種鬼獣の群れに奇襲を開始した。
155mm榴弾砲、数多の重火器類が鬼獣の群れに降り注ぎ砲弾が炸裂する。
鬼獣の群れは、砲弾弾雨を浴びせられてばたばたと倒れるが、奇声を上げながら向かって来た。
「行け行け行け行け行け!!!! 人類が断固たる決意した意味を教えてやれ!!」
自動小銃を構えていた、指揮官が、吼えながら悪魔の群れに突進していく。
「何が「人類が断固たる決意した意味」だよ そんな今時流行らないキャッチ
フレーズで、戦意が高まるもんか!」
その様子と言葉を聞いた、RPG7を構えていた男性住民が愚痴る様に呟く。
「だかよ、他に何か戦意を漲らせる気の聞いた言葉があるか?」
愚痴っていた男性住民の隣に、煙草を咥えている男性住民が尋ねた。
「・・・・・」
愚痴る様に呟いていた男性住民が沈黙する。
「ないだろ? それに闘わずにして絶滅するなんて論外だろ。さあ、行こうぜ」
煙草を咥えている男性住民がそう告げながら、愚痴る様に呟いていた男性
住民の肩を軽く叩いた。




