七十三話
この戦闘興奮剤『戦鬼』は、露店にだけで販売している商品ではなく、
コンビニや薬局などでも販売している。
現在、鬼獣群との死闘が繰り広げられている17地区に存在しているコンビニ
でも販売している。
そのあるコンビニ周辺では、鬼獣群と地域住民・他地区からの増援住民で
構成されている集団が激戦を繰り広げていた。
アスファルトには空薬莢が飛び散り、跳ね回り、周囲を鼻を刺す硝煙が立ち込めている中、ただ、ひたすら鬼獣群に向けて銃弾を
浴びせていた。
その誰一人逃げようとはせずに、昏い憎悪に燃える眼で引き金を絞っている。
「いいぞっ いいぞっ!! 向かってくる奴は、畜生の鬼獣だっ!!
死にもの狂いで向かってくる鬼獣は、人間の味を覚えた鬼獣だっ!!
ホント、こんな時代に生まれて最高だぜっ!!」
ヘルメットに、タロットカードの「塔」を張り付けた男性住民が、眼を血走らせながら吼えている。
その男性住民は、M249 パラトルーパーの引き金を絞り、向かってくる「ソルジャー」の群れに銃弾を浴びせていた。
地面には、空薬莢と共に空になった戦闘興奮剤『戦鬼』の瓶が転がっている。
そのような状態の住民はその男性一人だけではなく、戦闘興奮剤『戦鬼』を
飲んだ全ての住民が、そのような状態だ。
ソビエト連邦軍が制式採用した自動小銃AK-47や、H&K社の短機関銃 MP5などが雄たけびを上げている。
少なくとも、五丁とかそんな少ないレベルではない。
数千丁の数多の銃器類が、鬼獣群に銃弾を浴びせられている。
「うぉぉぉぉぉっ!! ぶっ殺してやるぅぅぅぅぅっ!!」
ベネリ M4 スーペル90を手に持って、射撃体勢をしていた男性住民が、
「ソルジャー」の群れに向かって前進し、乱射する。
銃口はオレンジかかった赤い発射炎を舌なめずりさせる。
数秒おきに射撃をしては装填を繰り返し、前へ前へと進んでいく。
「畜生畜生畜生畜生畜生!!
殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる!!
殺してやる殺してやる殺してやる!!」
そのような言葉を繰り返し、繰り返し叫びながら射撃を繰り返している。
その動きといい、射撃の仕方といい、鍛え上げられた職業軍人を彷彿と
させる。
しかし、ここにいる住民達は、国防軍ではない。
ただの一般市民だが、この世界の日本国民全員は、間違いなく戦闘能力は
レンジャー部隊などの特殊部隊と匹敵する。