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七十一話

 

 手野グループ当主が決断してから数時間後、ラーメン屋『中等遊民』にいた

 一部の客と、スポーツ店「ulysses 」の店長石川洋之率いる曲者揃いの店員

 の分隊規模の集団が17地区の公園に向かおうとしていた。

 ―――――本来なら、何事もなく17地区の公園に向かえたのだが、誰も予想できなかった事態は発生したため、混成(?)分隊は、17地区の公園に直接向かわずに、17地区から

18地区にかけて通っている戦車専用道路へと急遽向かっていた。

 その付近では、アイドルグループを救援に向かっていた熱狂的なファンクラブ

 約8000人及び地域住民が鬼獣相手に市街戦を行っていた。

 熱狂的なファンクラブの会員達は、異様な集団だ。

 カラフルに染めたモヒカン刈りの髪型やスキンヘッド頭、薄汚れた迷彩服に

 重火器武装なら、この世界では特に変わった服装ではない。

 釘バットや白鞘、日本刀の長脇差、派手な刺繍をした特攻服に、貌や頭部、

口元をバンダナ、ホッケーマスクやケルトンマスク、夜店などで販売しているアニメ系の仮面などで

貌を覆った屈強な身体の集団は、この世界でも異様だ。

 その中には、上半身裸で重火器類をぶっ放している者もいる始末だ。

 地域住民達は、関わりたくないのかそれとも、今現在は戦闘中なためかあえて受け入れているのか、肩を並べて戦闘を続けている。

 近くのビルの屋上からは、ライフル銃を構えた住民達が鬼獣で応戦している。




 この場所での戦闘はますます混迷を深めていた。

 はじめは他地区から続々と駆けつけて膨れ上がった住民や熱狂的なファン

クラブの会員達の戦力で優勢だったが、今はどちらかといえば―――――決死戦だ。

 その決死戦へと突入した元凶は、またしても唐突に現れた新種の鬼獣だ。

 その鬼獣は、誰が見ても異様だった。

 強靭な胴体、獅子と山羊の頭、蛇の尻尾を持つ新種の鬼獣の出現で混沌と

 化した。

 その新種は、一体(匹?)だけではなく、二匹(体?)出現している。

 それぞれは、まったく色違いの鬼獣だ。

 一匹(体?)は雪よりも白い、純白な個体。

 一体(匹?)は闇夜より暗い、漆黒の個体。




 この2つの新種鬼獣相手に、住民や熱狂的なファンクラブの会員達は果敢にも

 挑んでいた。

 純白な個体に頸や身体などをを食い破れ、尻尾の尻尾の口から吐き出される

 催涙ガスに似た煙幕にのたうちながら、あるいは漆黒の個体の猫パンチの

直撃を受けてバラバラに吹き飛ばされ、食いちぎられ絶命した住民やファンクラブの会員の屍を越えながらもだ。

 住民や熱狂的なファンクラブの会員達の方も、容赦なく重火器類や釘バット、

 白鞘、日本刀の長脇差で容赦なく応戦を続ける。




「ジャリじみた泣き言を言うな 俺達よりもアイドルの方がはるかに不利なんだ

 これ以上泣き言を言うんだったら、二度とアイドルには関わるな」

 全身を包帯姿の人物が、貌をホッケーマスクで覆った人物に告げた。

 冷酷な声だ。

 包帯姿の人物の服装は、迷彩服ではなく羽織袴で、革手袋と革靴という和洋折衷の様相をしている。

 この異様な人物は、この異様な追っかけの代表なのだ。

「し・・しかし会長っ、このままだと」

 ホッケーマスクで覆った人物が、屈強な身体に似合わずに泣き声を上げた。

「馬鹿め 俺達のアイドルの命よりも自分自身の命が大事なのか?

 お前は、まだ俺達ファンクラブがアイドルを危機から救うためには、ありとあらゆる事をやってのける集団だと認識してないんだな。教えてやる」

 包帯姿の人物は、震えて泣き声をあげているホッケーマスクの人物の足許に

 向けて、フルオートにしていた自動ライフルを点射した。

 連続発射音が付近に響く。

 ホッケーマスクの人物は絶叫をあげて尻餅をついた。




「これで、俺達ファンクラブの覚悟を理解したか?」

 冷酷な声で、包帯姿の人物が告げる。

「・・・・・・・・」

 ホッケーマスクの人物は顎をガクガクさせて頷いた。

「だったら、さっさと伝令を回せっ!! 新種鬼獣だろうがなんだろうが、

 邪魔する鬼獣は全て撃ち倒し、なぎ払え!! 鬼獣相手には手加減は必要ないっ

 ほらっ、さっさと行けっ!!」

 包帯姿の人物が命じた。

 ホッケーマスクの人物は、意味のない言葉を喚きながら脱兎のごとく走り去っていく。




 ―――――スポーツ店「ulysses 」の店長石川洋之率いる曲者揃いの店員

 の分隊規模の集団も、その新種の鬼獣出現については、携帯無線から流れている

 悲痛な叫びと共に知っていた。

 そのため、一端立ち止まり、店長石川洋之が店員を集めて何か話し合っている。

 その様子をラーメン屋『中等遊民』で、文句を言っていた男性客がいらいらした

 様子で待っていた。

「ったく、どうするんだよ 早く決断しろよ」

 とぶつぶつ文句を言っている。




「しかたがないよ、なんせ新種の鬼獣がまた出現したんだから。

 行くにしても、武器はどうするのか、いろいろと決めないと」

 その横には、男子中学生もいた。

「そんなの鉛をぶち込んで、倒したらいいだけじゃないか!!

 いちいち話し合いなんかしていたら、戦闘が終わるぜ」

 男性客が不満の表情を浮かべながら応えた。

「・・・そう簡単には終わりそうになさそうだけどなぁ」

 男子中学生は、短く告げた。




 ―――――男子中学生の予想は当たり、後々、純白な個体と漆黒の個体の鬼獣は、『ホワイト&ダークネス』と呼称され、壮絶な戦闘の記憶と共に語られる事になる。


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