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六十五話

 


「(これはまた、とんでもない集団が現れたな・・・)」

 彼は、露店前の道路を横切っていく集団を見ながら思った。

「日本国在日 外国人義勇隊」(通称「死社会人部隊」)が通り過ぎた後、まも

 なくしてさらに異質な集団が現れた。

「(まるで、世紀末漫画や映画から飛び出してきた感じだ・・・)」

 生唾を飲み込みながら、彼はそう感じた。

 彼がそう思うのも無理はない。

 辺り一帯を地鳴りのような爆音を轟かせて横切っている集団は、オートバイや

 乗用車を違法改造もしくは不正改造した物を運転している。

 それらを運転しているのは、カラフルに染めたモヒカン刈りの髪型やスキン

 ヘッドの頭をしていた。




 また、ホッケーマスクで顔面を覆っているのや、頭部や口元をバンダナで

 覆ったりしていたりしている。

 だが、共通しているのは、やはり薄汚れた迷彩服を着込み、数多の重火器類で

 武装している事だろうか。

 その他にも、釘バットや白鞘に収められた鍔の無い日本刀の長脇差などで武装

 している姿もある。

 さらに、違法改造もしくは不正改造した大型トラックには、西洋音楽に

使われる 打楽器のバスドラムが設置されているのが見える。

 そこでは、筋骨隆々で上半身裸の数人が一糸乱れぬ動きで打ち鳴らしている。

そこには、無駄な動きがない。




 ただ、戦隊物のお面やアニメのお面で覆っているため素顔は

 まったくわからない。

 別の大型トラックでは、狼のマスクを被った筋骨隆々で上半身裸の者がエレキギターを弾きながら、雄叫びを発っしている。

その幾多の不正改造した大型トラックの中には、ある特撮番組に登場した架空の

ドリームカーが幾台も混じっていたりする。

この世界に巻き込まれた彼の年代的には、ひょっとしたら見た事や聞いた事が

無いかもしれない車体だ。




トランザムの第3世代モデル外観をして、ある特撮番組に登場した海外ドラマ

に登場した、人工知能搭載の車。

他にも、七十年代に公開されたアクション映画作品で登場したフォード・

ファルコンをベースに黒色の車体と600馬力のV8エンジンを搭載した改造車、

八十年代後半に公開した、カーアクションサスペンス映画で登場した、

ターボ・インターセプターが混じっている。

しかも、それが一台、二台とかではなく、数十台以上停車している。

それらの車体の何処かには、アロハシャツを羽織ったペンギンのマークが

ついている。

そのマークで判断出来るのは、どうやらこれらも露店が取り扱っている商品の

様だ・・・。





「(この集団は、略奪を行いにいくのか・・・それなら警察に通報しないと)」

 彼は、戦きながらそう思った。

「アイドルグループの追っかけが珍しいかい?」

 そう後ろから尋ねられて、彼は驚きながらゆっくりと振り返る。

「何も驚いた表情を浮かべなくても」

 そこにはストローを刺した牛乳パックを片手に持った男性が立っていた。




 その男性は、彼と同じように迷彩服を着込んではいなかった。

 上着として着ているのは黒い革製ジャケット、少し丈が長めでありタイトな

 線の同じくレザー・パンツと組み合わせた格好だ。

 胸を大きくはだけた蒼いシャツの襟元では銀のペンダント・チェーンが揺れ

 ており、手首には銀の腕輪が填っている。

 いずれも単純な輪状のものではなくデザイン制を全面に押し出した派手な

 代物だ。

 その手首に巻かれた銀の腕輪の表面には、『The loyalty is power』

《忠誠は力なり》と一文が刻まれている。




何処かのミュージシャンの様に整髪剤を付けて掻き乱した頭髪、右耳だけに

 付けた蒼いピアス、端整だが何処か軽薄そうな表情がこびり付いたその眼鼻

 立ちだ。

 全体的に飄々とした印象だが――――――――悪く言えば、繁華街にいる

チンピラだ。

 しかし、このような印象があっても、この男性も露店店員だ。

 男性店員の名前は、静納鷹谷せいのうたかや

 この世界に紛れ込んだ彼を何かと面倒を見ている1人でもある。

 また静納は、露店の表舞台ではなく露店の暗部を取り仕切っているため、

必然的にこの様な服装をしている。

各地域で営業活動を実施するために必要な地域情報、鬼獣情報、地理情報などの

収集、露店出店地域での盗聴、恐喝、誘拐、暗殺などの非公然・非合法活動が

専門だ。




「鷹谷さん・・・・あれアイドルの追っかけなんですか、どうみても

 無法者集団じゃないんですか・・・」

 彼は、何処か信じられない表情を浮かべながら尋ねた。

「あはは、本当に面白い事言うなぁ! オヤジさんをダウンさせるだけあるね」

 静納は、笑い声を押し殺しながらそう応えて、ストローを刺した牛乳パックの

 中身を飲む。

 静納が言った「オヤジ」とは、古株店員の重岡浩の事だ。




「・・・・別に面白い事を言っているつもりはないですよ」

 彼は、何とも言えない表情を浮かべながら応える。

「ごめん、ごめん。でも、本当に眼の前の集団はアイドルの追っかけだよ。

 手野グループ傘下の芸能事務所に所属している、最近売り出しのアイドルグループのね」

 静納は、そう説明してくる。

「・・・・・なんで、その追っかけがこんな所に?」

 微妙な間の後に、そう尋ねる。

 本当は、いろいろと言いたかったのだが、口から出てきたのはその言葉だった。




「17地区の公園で、イベントしていたみたいだよ。その時にこんな騒動に巻き込まれたみたいな感じさ」

 静納が応える。

「なるほど」

 彼はそう応えるが、いろいろと疑問に思うことはある。

 しかし、言えたのは、今の言葉だけだ。

「しっかし、いい加減にあの追っかけ達も気づいた方が良いと思うけどなぁ。

 アイドルが助け出されたりしても、ただ屈辱以外の何ものでもないのに」 

 静納はそう応えながら、紙パックの牛乳を飲む。



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