六十四話
鬼獣群の驀進を受けているのは、17地区内にあるファーストフード店
「マクド」も例外ではなかった。
鼓膜が契れそうな、凄まじい発射音と寄生の雄叫びが空気を引き裂いている。
鬼獣群は、マクドの建物から100メートル近く接近している。
マクドの店内や駐車場には、付近住民や他地区からの増援部隊が立てこもって
いる。
立て籠もっている付近住民や他地区からの増援部隊は、老若男女が鬼の様な
形相を浮かべながら、群がるように突撃してくる鬼獣群に銃撃を加えている。
周囲のアスファルトには、夥しいほどの鬼獣の死骸が転がっている。
すでにこの時点で、約8000体(匹?)以上の鬼獣に銃弾の洗礼を浴びせて
いた。
一方、ファーストフード店「マクド」に立て籠もっている側の人的損害も
大きい。
しかし、この場所には嘆き、逃亡を図る住民はやはり誰もいない。
「 はっきりと聞こえなかった!! もう一度言ってくれっ 「マジシャン
01」 オーバー」
頬骨の尖った男性住民が、高機動多用途装輪車両ハンヴィーに備えられている無線機を使いながら尋ねる。
「( 繰り返すっ!! 「ハンターフェンリル」 こっちは今現在、迷彩服販売チェーン店「迷彩服の碧山」付近にて、約500体(匹?)の変異種鬼獣「ハウンド」と交戦中!!一歩も進めないっ!! アウト」
無線からは、切羽詰まった声が返ってくる。
そこには、激しい襲撃音と絶叫も混じっていた。
「糞っ!! 「ハンターフェンリル」から「マジシャン01」へ、何とか突破できないかっ!? オーバー」
しかし、向こうから返答は返ってこないため、頬骨の尖った男性住民は怪訝な
表情を浮かべる。
「「ハンターフェンリル」から「マジシャン01」へ!! そちらも苦しいのは
わかるが、何とかこっちに来てくれっ、オーバー」
しかし、返答は返ってこず、無線からは雑音混じりに銃撃音と耳障りな奇声と
魂が削られるような、凄まじい絶叫が流れてくる。
「 「マジシャン01」へ 応答しろ!!」
頬骨の尖った男性住民は罵り声をあげながらハンヴィーから離れ、FN SCARや
某SF映画で宇宙海兵隊の正式採用小銃をぶっ放している集団に近づく。
「悪い知らせだ!! 「迷彩服の碧山」付近で交戦中部隊からの応答が不通に
なった。 しばらく俺達だけでここを護るしかないぞ」
頬骨の尖った男性住民が押し殺した声で告げた。
それを聞いた者は、全員が呻き声を上げた。
軽快な発射音を唸らせる宇宙海兵隊の正式採用小銃に狙われた、猟犬型鬼獣
「インベイダー」は、着弾の衝撃で吹っ飛ばされる。
FN SCARの連射をくらった、接近してくる従来型鬼獣「ソルジャー」も次々と
なぎ倒されていく。
しかし、それでも鬼獣の数は増え始め、奇声を発しながら接近していた。
正確な射撃と速射で、次々と鬼獣群は路地に転がるが、それらを踏み越え
てくる。
「畜生っ、弾が切れたっ」
と、何人かが同じ様な事を叫ぶ。
「おい、誰か足の速い奴でコンビニで銃弾を買ってきてくれっ!!」
血走った瞳をした中年男性が告げる。
「出来れば、包帯や消毒薬もだっ!! これだけじゃ足りないっ」
鬼獣の攻撃を受けて負傷した住民達の手当をしている男性住民が言う。
そこには、ざっと100名の負傷者が固まっており、そのうちすでに多数が
死亡していた。




