六十三話
鬼獣群の侵攻を遅らせるため、17地区の幾つかのビルやマンションが爆破されていた。
その廃墟と化した所からは燃え盛る真っ黒な煙の柱が、幾つも立ち上っている。
分厚い布地を捻ったリボンの様に空高く伸び、ゆっくりと回転しながら成層圏
へと登っていく。
しかし、18地区から17地区へと続く大通りを進んでいる他地区からの
緊急増援部隊、日本決死隊などは誰も見向きもしていない。
本来、この部隊は大きく東に転じ鬼獣群を突破し、緊急防衛指定場所やラブホ
建設予定地へと向かうはずになっていた。
計画は良かったのだが、17地区に出現した鬼獣群の数が多すぎた。
また、そればかりでもなく新種鬼獣まで出現し、迅速な突破が成らなくなって
いた。
その大通りを高機動多用途装輪車両ハンヴィー900台、ストライカー装甲車
3200台が車両の間隔と全体の陣容には些かの乱れも見せずに進んでいた。
それら全ての車体に漫画・アニメ・ゲームなどに関連するキャラクターや
メーカーのロゴをかたどったステッカーを貼り付けられている。
その車両群は、出しうる限りの速度で進撃を続けていたが交差点に差し掛かる
寸前で、ばったりと中型鬼獣「イントゥルーダー」を筆頭に、従来型鬼獣
「ソルジャー」、猟犬型鬼獣「インベイダー」で構成した鬼獣群と遭遇した。
「糞がっ! 全車両に告ぐ!! 全車両に告ぐ!! 攻撃しろっ!!」
車両指揮官らしき男性住民が罵しりながら、無線機を使い指示を出した。
ブローニングM2重機関銃やM134 ミニガンが、一斉に吠えたてはじめた。
車両に群がってくる鬼獣群に、弾幕の洗礼を浴びせる。
アスファルトには空薬莢が転げ回り、各車より撒かれた弾幕は高速で鬼獣群を
引き裂き、粉砕する。
しかし、それでも次から次へと沸いて出てくるように数が減らない。
辺り一帯に、鬼獣の耳障りな金切り声や轟く銃撃音が響き、噎せ返るような
硝煙が充満した。
「ヒィィィィィィィィィィィィィィィィホゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!」
M134 ミニガンをぶっ放している一人の男性住民は、奇声を発する。
狂ってはいない。
ただ、自棄になっているだけだ。
「 「ロングソード109」より本部へっ! 現在********にて鬼獣群と
交戦中! 航空支援を頼むっ、オーバー!!」
車両指揮官らしき男性住民が無線機を使い、吠える様に告げる。
「 (本部より「ロングソード109」へ、これ以上航空支援は行えない。
そちらには地上支援部隊を向かわせたが、激しい交戦を行っている様だ
オーバー)」
無線機からは残念な返答が返ってくる。
「「ロングソード109」より本部へ、了解した!!。
報告する。こちらの鬼獣群には新種は見あたらない。オーバー」
車両指揮官らしき男性住民が告げた。
M2重機関銃やM134 ミニガンは、その間でも吠えたて続けているが、一台の
ハンヴィーが轟音と共に激しく吹き飛ばされた。
ハンヴィーをいとも簡単に吹き飛ばした、手に持つ棍棒を持つ中型鬼獣
「イントゥルーダー」は耳障りな寄声を発した。
しかし、その反撃は凄まじいものとなった。
某宇宙映画で出てくる植民地海兵隊の制式支援用重火器で武装した約二十名の
住民達によってに薙ぎ払われたからだ。