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五十三話

「(本当に、あれば現実に起きている事だったのだろうか)」

彼はそう思うと眼に映る全てが、幻の世界の中の映像のように虚ろに見えた。

食事を終えた彼は、倉庫から弾薬商品を台車に載せて運んでいた。

彼の視線の先には、車と人の長蛇が続いていた。

「(俺は、悪い夢の中にいんるじゃないだろうか・・・)」

彼の貌が僅かに緩む。

しかし次の瞬間、フラッシュ・バックの様に海原に浮かんでいた艦船が、空を縦横無尽に飛び回る鬼獣によって撃沈されていく、テレビスクリーン越しの映像が

鮮明に浮かび上がった。

彼の胸に、苦く鉛のように重たい熱が込み上げてくる。

再び彼はその映像を脳裏から振り払おうとするが、視線の先の車と人の長蛇の

光景を見れば、否応なしに本当に起きている事だと認識する。

なにせ、その長蛇の列には、車・・・・いや、車というより戦車の列が

出来ているからだ。




彼は最近知ったのだが、この付近は「戦車優先道路」らしく、道路も戦車が運行出るように舗装されている。

ここ数日で、彼は戦車の姿を100両以上を見かけている。

もっとも初め、彼は純粋に「何両あるのだろうか」と密かに数えていたが、

あまりにも大量に通過するので、途中で諦めたのだが。

戦車について会話していた、他の露店店員の話を聞いた所では、ざっと3000両の戦車が通過しているらしい。

数だけでも想像絶するが、それらは全て国防軍に所属しているのではなく、

一般戦車(?)だ。




現に戦車の車体には、漫画・アニメ・ゲームなどに関連するキャラクターやメーカーのロゴをかたどったステッカーを貼り付けたり、塗装を行うなどして装飾した

戦車の列が出来ている。

彼は、まだ戦車の種類や名前などはわからないが、列には、様々な国々で運用されている最新鋭の主力戦車が静かに停車している。

M1エイブラムス、チャレンジャー2、PT-91 トファルディ、T-90など・・・。

また、破損した戦車などの軍用車両を回収するための装甲回収車も存在している。




その付近では、戦車搭乗員同士がなにやら会話をしていた。

その中で、かなり異様な格好をした搭乗員も彼から見えた。

「戦車同好会が壊滅だって?」

スルメを囓っていた男性搭乗員が怪訝な表情を浮かべながら答える。

「知きやながったのか 九七式中戦車 T-26  ヴィッカース 6トン戦車 

M3軽戦車のども、鬼獣の群れの前だば立ち往生だ」

訛のある声で、かなり異様な格好をした搭乗員が告げる。

その搭乗員は、髑髏と骸骨を模した甲冑に身を覆い、髑髏の双眸の奥に光を

宿している。

威厳ある佇まいだが、訛が酷い。




「お前な、散髪でスポーツ刈りを頼んだのに、スキンヘッドにさせられたから

といって、その格好はやめろよ」

スルメを囓っていた男性搭乗員が呆れた声で応える。

「戦車同好会の生き残り少数が、後退した。その結果、鬼獣群はさきやさ

侵攻していら」

髑髏と骸骨を模した甲冑に身を覆っている搭乗員が告げる。

「俺の質問は無視か・・・おっ、お前の彼女きたぞ」

スルメを囓っていた男性搭乗員がふてくされた表情を一瞬浮かべながら応えた。

「わんつか用事思い出した」

髑髏と骸骨を模した甲冑に身を覆っている搭乗員が、そう告げると軽やかに身を

翻して、立ち去っていく。




髑髏と骸骨を模した甲冑に身を覆っている搭乗員が立ち去ってすぐに、反対側から

迷彩服を着込んだ、女性がやってくる。

急いで走って来たのか、少し息切れをしている。

「……えへへ、ダーリンは?」

その女性は、えくぼを小さく作り尋ねてくる。

「お前のダーリンは、いそいそと何処かに行きやがったよ」

スルメを囓っていた男性搭乗員が短く応えた。



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