四十八話
しばらくして、テレビスクリーン内が慌ただしく動き始めた。
テレビスクリーンには、言葉を失った男性キャスターの貌が大写しになって
いた。
自分の姿がアップになっているというのに、そのキャスターの視線は、
スタッフから手渡されたメモに釘付けになったまま、口を開け、硬直したように動きが止まっている。
何か言葉を発しようとしても、すぐに言葉が見つからない様だ。
音を発することなく動きが止まったテレビーーーーー、それは見る者全てに
何か深刻な事態が発生したことを印象づける働きをした。
『・・・・・第一艦隊に・・・・随行している中継班から・・・連絡が・・・。
現場の映像が繋がらないと何とも言えませんが、現在、第一艦隊は、新種の鬼獣群の猛烈な襲撃を受けている模様です・・・」
かろうじて男性キャスターが言葉を発した。
男性キャスターの言葉が終わると同時に、現場の中継映像が映し出された。
中継映像には、蝙蝠の様な翼で上空を飛び回っている生物が映し出されている。
一匹(?)二匹といった数ではない。
空を覆い尽くすほどの数だ。
その生物は、爬虫類生物を彷彿とさせる外見だ。
ただ、全身を鱗で覆われ、長い尻尾と鋭利な爪や牙で装飾を施されている。
上空を飛び回っている爬虫類生物は、次々と空中から急降下による攻撃を
仕掛けてくる。
襲ってくる爬虫類様生物の群れに、艦船が機銃や高射砲を吠え立てさせていた。
しかし、それでも猛然と火を吹いた対空砲火を潜り抜けてくる爬虫類生物に
より、阿鼻叫喚の地獄絵図が映し出された。
幾多の巡洋艦、駆逐艦が、爬虫類生物の口から吐き出す炎に炙られて炎上している様子が見受けられた。
中には、体当たりを受け大破、爆沈している艦船の様子も映し出されている。
爬虫類生物の群れは次から次へと出現し、防御網を突破し、眼に付く艦船を見境無く、炎や長い尻尾、鋭利な爪で攻撃を繰り返し、耳を塞いで動きを止めてしまうほど大音量の咆哮を放っている。
彼は、映し出された迫力の映像に釘付けとなった。
いや、この食堂にいる露店店員の様子も同じだ。
この空間の全ての動きが止まったように静まり返っている。
誰彼の眼は、テレビのスクリーンを見つめたままだ。
しかし、その眼の瞳は、憎悪と怒りでぎらついている。
ーーーーただ、尚文露店主を除いてだ。
尚文露店主は、テレビスクリーンを一別すると、美味しそうにちくわと
焼き豆腐を咀嚼している。
「明日以降、艦の発注が殺到するな」
尚文露店主は、ただ短く告げた。
その声は、静まり返った食堂に響き、その場にいる全員が驚愕の表情を浮かべながら尚文露店主に視線を向けた。
「利益でますね・・・・」
テレビスクリーンを見入っていた彼が、思わずそう応えた。
彼にしてみれば、それ以外の言葉が見つからなかったためでもある。
この露店に雇用され、露店主の人となりを見ている彼にすれば、純粋に思い
浮かんだ言葉を言ってしまっただけだ。
たが、その台詞は、尚文露店主以外、重岡以下の店員には凄まじい衝撃を与えた事を除けばである。




