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二十話

 

 まもなくして尚文露店主が店に戻ってきた時、露店内は何やら慌ただしい様子

 だった。

 その様子に、尚文露店主は怪訝な表情を浮かべた。

「なんだ? 局地的鬼獣警報が解除でもされたのか?」

 ちくわを齧りながら尚文露店主は、近くに寄ってきた男性店員にそう尋ねる。

 その男性店員は軽く会釈して、手に持っていたメモ用紙を手渡してきた。

「状況はこちらに」

 男性店員が静かに応える。




 尚文露店主はそのメモ用紙を受け取り、書かれている内容を眼で通すと、若干険しい表情を浮かべた。

 メモには、「現在17地区内の隔離閉鎖している無差別戦闘地帯の開放も同時に行うという通達あり」と書かれている。

「そんなにラブホ建設予定地を奪還したいのか・・・・。まぁ商品が売れれれば

 それでいいが――――、よし、155mm榴弾砲M198、M777 155mm榴弾砲、迫撃砲、

 FGM-148ジャベリン、それらの使用する砲弾を全て売捌けっ!!、

 弾薬や砲弾セットで30000発、追加は10万発、値段は10円~15円、

 値引き交渉は無しだ」

 尚文露店主は短く応えた。




「わかりました、準備に入ります!!」

 男性店員は頭を下げると、その場から立ち去って行く。

「・・・それで開放できるかどうかだな」

 尚文露店主は何処か険しい表情を浮かべながら呟き、ちくわを齧る。




 世界各国の主な無差別戦闘地域には、各国が共同で開発した鬼獣群を侵攻を食い止める(遅らせる)ための即時展開が可能な防壁が、無差別戦闘地域に設置され

 ている。

 それらはトラックで運搬し、そのまま直接荷台から立てて設置でき、また壁そのものは戦車の主砲の直撃にも耐えうるほど頑丈な防壁だ。

 下部にドリルのようなものがあり、アスファルトに穴を開け、支柱を差し込んで建てる仕組みになっている。




 問題は隔絶された無差別戦闘地域内だが、大規模な鬼獣群の影響のためか地域一帯が熱帯雨林化し、戦車や装甲車などの車両の進入を拒み、迫撃砲や航空機による支援攻撃の精度を落とす地形化と変貌を遂げている。

 それらの地域内での戦闘が歩兵だけとなっており、人類側にとってはありがたくない状況なのだ。

 その問題の無差別戦闘地域内には、無数の鬼獣の群れが息を潜めて待ちかまえているため、一度開放作戦が発動すれば熱帯雨林地帯や湿地帯と化している地形で、

 防衛側は交戦しなくてはならない事になる。




 そして、それに伴う夥しい量の弾薬がぶち込まれる。

 しかし、今回の解放される地帯は問題が一つあった。

 解放される地帯には、ラブホテルが建設される事に決まっているため、その事を

 知っている住民や国防軍の士気は上がるどころか、下がるだけだろう。

「(その問題は些細な事だ。一番問題なのはーーーー)」

 尚文露店主は、ちくわを咀嚼しながら考えたのは、無差別戦闘地域内に一体どれだけの数の鬼獣が潜んでいる事だ。




 間違いなく潜んでいるのは、従来型鬼獣「ソルジャー」は無数にいるだろう。

 17地区内でも無数に確認されている。

 猟犬型鬼獣「インベイダー」も潜んでいるはすだ。

 こちらも17地区内でも従来型鬼獣「ソルジャー」と共に無数に

確認されているが、無差別戦闘地域内の熱帯雨林地帯や湿地帯といった場所での

戦闘となれば、いつも以上に厄介な鬼獣と化すだろう。

 獲物を狩り出す能力、獲物との格闘能力も高く、そこに従来型鬼獣「ソルジャー」との連携襲撃が追加されるとなれば説明は不用だろう。

 同じく17地区内でも無数に確認されている中型鬼獣「イントゥルーダー」も、

 潜んでいるはすだ。

 全長2mを上回る鬼獣が群れて襲いかかってくる光景は戦慄するべき事だ。

 尚文露店主は今まで散々駆逐しているが、道具を使うだけの知能を持ち、手に

持つ棍棒で地面を叩くことで足場を不安定にさせる行動には厄介な鬼獣だ。

「(ーーーーーその三体はどうとでもなる。俺はもっと厄介な鬼獣との戦闘も経験している・・・・。今現時点で厄介なのはあの二体か)」




 尚文露店主としても、厄介な鬼獣と認識している二体(匹?)ーーーーー。

 18地区の「鬼獣の宴」と呼称されている戦闘で猛威を振るい、この世界へと

 飛ばされてきた彼が見た大型鬼獣「デバステーター」。

「河川敷防戦」と最大激戦地「4丁目の闘い」で、口から吐き出す有害な気体と

 よりよく組織化されたように頻繁に仲間を呼ぶ習性で、一時的に防衛軍が

 包囲殲滅寸前まで陥った。

 しかし、その原因がこの鬼獣一体(匹?)だけではなく、もう一体(匹?)だ。

 その鬼獣は、変異種鬼獣「ハウンド」と呼称されている。

 尚文露店主も手を焼いているのは、カメレオンのように周囲の風景に擬態し姿を隠すという特徴があるためだ。

 次元的な跳躍力を得意とし、その形状及び動作パターンは、ヤモリといった敏捷性に優れた爬虫類に近似しているためだ。

 それが一体(匹?)や二体(匹)では問題はないのたが、十体(匹?)以上で

 群で襲いかかってくるのだ。




 この鬼獣の脅威で包囲殲滅寸前まで陥ったが、ぎりぎりで海外から帰還した

 日本決死隊の増援が間に合ったため、その難は逃れる事が出来た。

 その精鋭の日本決死隊の戦闘は、尚文露店主でさえ感心する光景ではあったが、

 無差別戦闘地域内で潜む変異種鬼獣「ハウンド」は、どれほど

 脅威になることか、 尚文露店主は舌打ちをしたくなった。

 過酷な闘いになることは間違いないが、あるだけの弾薬を売り捌けば何とか

 なる。

「(重火器類の方が、使う人より多いと言われるほど売り捌いてやるか)」

 尚文露店主は、不敵な笑みを浮かべた。













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