十八話
露店に一足早く戻ってきた彼は、露店の銃器改良・メンテナンスカウンターで
客の行列が出来ているのを発見した。
机は黒い表面はやわらかい材質だが、所々凹んでいる。
後ろでは、銃の製造、改造、分解、メンテナンス等を主に行なっている店員達が
忙しそうに接客をしているのが見えた。
「(この光景がこの世界の常識とは、とても信じられない)」
彼は、そう思った。
尚文露店主から説明を受けた限りでは、「グランド・ゼロ」以降銃器が一般に
広く普及するのに合わせるかの様に、用者や用途に合わせた調整や改造、装飾などを行う銃の整備士が数多く誕生した。
尚文露店主からの説明では、雇い入れている整備士は銃の腕前も整備の腕前も
両方とも超一流の腕らしい。
また露店の地下には、彼が最初にこの世界のコンビニで見た射撃場が
あるらしく、 銃器を購入した客達や改造などを行った客達が、性能を試すために露店の地下射撃場へと向かっている。
射場入口側には、5列のベンチが並んでおり、順番待ちの客達が腰を
下ろしている。
「(まぁ、ちくわを喰いながら説明されてもなぁ)」
彼は苦笑を浮かべるのを必死に堪えた。
その地下射撃場に案内された時も、尚文露店主は終始ちくわを咀嚼していた。
露店の地下射撃場に案内された時、その広さに彼は驚いた。
ライフル、機関銃、拳銃射撃用の射座が五十以上あった。
間接照明に人工芝が映えるその射場の天井と壁には分厚い防音壁が貼り付けられていた。
これだけの実弾射撃場を屋内施設として設置している、尚文露店主は一体何者だろうかと、彼はそう思い鳥肌が立った。
「(ただ者では無い事は間違いないけど、まぁ、いろいろと尋ねたら答えてくれ
たし、考えない事にしよう)」
世間で称されている「鬼獣の宴」の時に、主に尚文露店主に「鬼獣」事などを
彼は尋ねていた。
答えてくれた所によれば、「鬼獣」にはそれぞれ種類があるらしく、防衛軍が
名付けた名が存在していた。
彼が最初に遭遇した「鬼獣」の名は、従来型鬼獣「ソルジャー」という呼称が
あり、日本国内名称「兵隊」と名付けられていた。
彼から見れば、姿外見がある映画の架空生物にしか見えないが。
そして、次に遭遇した「鬼獣」は、大型鬼獣「デバステーター」という呼称で
あり、日本国内名称「蹂躙するもの」と名付けられているらしかった。
他にも「鬼獣」について教えてはもらったが、彼は「鬼獣の宴」で
大方実物を見た。
また、その時、彼はもう一つ衝撃的な出来事を目撃した。
それは鬼獣群の侵攻を送らせるためか、ビルやマンション、また放置車両や
電柱などを爆破している光景だった。
現に、何百体(匹?)という鬼獣が爆発に巻き込まれていた。
これについても、彼は尚文露店主に尋ねた所、ビルやマンションには法律に
よって、爆薬を設置する事が義務付けられているらしかった。
また、爆発物が設置された自動車も各地区に約50台ほど設置する事もだ。
彼から見れば、それらの車両は、駐車違反や放置車両ぐらいしか
見えなかったが、やけに高級車が不用心に停車していたのが目に付いていた。
「(そりゃあ、うん、誰も盗んだりしないな)」
彼は、そんな事を思い出しながら、銃器を受け取っている客達に視線を向けた。
「まったく、絶妙なタイミングで戻ってきたぜ、俺の恋人明美が」
ヘルメットにタロットカードの塔を張り付けている男性客が嬉しそうな表情を浮かべて言う。
「何が恋人だ、フランキ・スパス12じゃねぇか」
ペットボトルのコーラを飲んでいた男性客が若干引き攣る様な表情を浮かべて
応える。
「お前馬鹿か?、銃にははな名前を名付けてな、愛でてやらんとご機嫌斜めになって助けてくれないぞ―――――で、代金は?」
タロットカードの塔を張り付けている男性客が、馬鹿にした様な声で告げながら、 店員に代金を尋ねる。
「メンテナンス及び改良費を込めて、17円になります」
男性店員が応える。
「うへぇ、さすが腕の良い整備士だけある・・・、これが他の所だと3円とか4円とかですむんだけどなぁ」
タロットカードの塔を張り付けている男性客が財布から17円を取り出しながら
告げる。
「・・・だったら、他の店で整備してもらえばいいじゃないか、それとさ、俺は
銃器に名前をつける様な趣味はない」
ペットボトルのコーラを飲んでいた男性客が応える。
「おれの明美を他の店で整備だと? それは断る、こんな艶があってむしゃぶりつきたくなる身体を他の店で整備させるなぞ・・・・、俺には耐えられん!!」
タロットカードの塔を張り付けている男性客が、店員に代金を手渡しながら、
ペットボトルのコーラを飲んでいた男性客を睨みむつけながら告げる。
「いや、だからさ、それさ、イタリアのフランキ社が設計した散弾銃だぞ
明美じゃなくて、フランキ・スパス12だからな」
ペットボトルのコーラを飲んでいた男性客が、何処か痛々しい眼をしながら
応える。
「違う! これは俺の恋人の明美だッ!!」
タロットカードの塔を張り付けている男性客が怒鳴るように告げながら、フランキ・スパス12の銃身をやらしく触る。
「お前は海兵隊か」
ペットボトルのコーラを飲んでいた男性客が溜息混じりに突っ込む。




