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水戸黄門

『異世界理美の日記 異世界生活21日目』の続き的な作品となっています。

https://syosetu.com/usernoveldatamanage/top/ncode/3236911/noveldataid/30160903/

理美は、自分の草たちが転生してから、駐車場でラジオ体操をするようになった。


異世界へ転移する際、「家をコピーしてくれ」と言ったので、車はこちらには来ていない。そのため、家の外にある駐車スペースは、ラジオ体操をするには最適な場所となっている。


しかも、理美の害になるものは理美の体には入らないということで、紫外線も完全にカットされている。日焼け対策をしなくてもよいのである。


これは、すでに理美がJINに確認済みだ。


理美は朝起きると、まず白湯を飲み、そのまま外へ出てラジオ体操をしている。


ラジオ体操は、別に音楽を流してもいい。


だが、なんとなく自分で声を出して伴奏を歌いながら体操した方が、カロリーも使いそうだし、踊りながら歌う練習にもなりそうな気がする。


そこで理美は、ラジオ体操の伴奏を自分の声で歌いながら、体を動かしているのである。


理美の中学校では、体育の時間にラジオ体操をみっちり教えられた。


子供たちが小さかった頃には、子供会の役員をして、夏休みのラジオ体操で子供たちのカードにシールを貼ったりもしていた。


だから、適当ではあるものの、それなりに覚えている。


まあ、不格好でもいい。


多少間違っていてもいい。


誰もここにはいないのだから……。


理美は、そう思っているようだ。


誰もいない。


だが――。


転生草たちは、いるのだ。


理美の死角になっている花壇では、実は転生した草たちが、理美のラジオ体操の口伴奏を聞きながら踊っている。


バリバリ踊っている。


ただし、理美が花壇の方を振り向くと――。


ピタッ。


草たちは静止する。


理美が前を向く。


踊る。


理美が振り向く。


止まる。


まるで「だるまさんが転んだ」である。


あるいは、『8時だョ!全員集合』のコントで、志村けんさんが振り返った瞬間だけミイラが動きを止める、あの状態。


会場の子供たちが、


「志村ー! こっちこっち!」


と教える。


志村けんさんがその方向を見る。


すると、ミイラは動かない。


あれである。


もしくは、音楽が鳴っている間は踊りまくるのに、音が止まればピタッと静止するフラワーロックというか。


とにかく、理美が見ていない時はバリバリ踊っているくせに、理美が花壇の方を見ると、何事もなかったかのように普通の草に戻るのである。


思わず漏れちゃったJINの神パワーによって、転生してしまった草たち。


これからどうお世話すればいいのか、理美がJINに聞いたところ、水やりなどはもう必要ないらしい。


つまり、放置していても大丈夫なのである。


それでも、せっかくなのだからと、理美は植物に音楽を聞かせたり、声をかけたりしながら育てることにしたようだ。


そうすると、より立派に育つらしい。


前世でこの草たちの育ての親だった理美は――。


どうやら今世でも、育ての親になろうとしているのである。



「あなたたちに、名前をつけなきゃね……。サンスベリアかあ。スベさん……え、スベさん? ガジュマルは、ガジュさん。スベさん、ガジュさん……あ」


理美は思いついた。


国民的時代劇を。


「サンスベリアの葉っぱは、剣みたいに立派だわ。剣の達人、助さんを彷彿とさせるから、あなたは今日から助さん。


ガジュマルは、幹がしっかりしていて、空手とか格闘に強そうだから、格さんよ。


日本にはねえ、『水戸黄門』っていう有名な時代劇があるのよ。水戸光圀っていう副将軍がね、越後のちりめん問屋の隠居に扮して、全国を漫遊しながら悪者退治していくの。


助さん、格さんというのはね、ご老公の護衛よ。見た限り、人質を取られたりしてない限り、負け知らずよ。最強の二人よ」


と、『水戸黄門』の話を長々と始める理美である。


中身が五十三歳の理美にとって、子供の頃の娯楽といえばテレビだった。


学校から帰宅すると、夕方に放送されている時代劇の再放送をよく見ていたので、わりと時代劇好きである。


『暴れん坊将軍』『大岡越前』『遠山の金さん』『大江戸捜査網』『銭形平次』……。


何でも来いである。


毎朝、ラジオ体操が終わったあと、草たちに語りかけることにした理美だが、話のネタが尽きることはないだろう……。



同じ頃。


異世界の神・JINの自宅前にある花壇では――。



こちらにも、JINの力によって転生したサンスベリアとガジュマルがいる。


転生すると同時にJIN隊長から認められ、ISG――異世界理美親衛隊に入隊した草たちである。


理美の家にいる草たちも、JINの家にいる草たちも、もとは同じ遺伝子を持っている。


JINの家は、日本にあった理美の家をコピーしたものだからである。


いわば、クローンのようなものだ。


そして、どちらもJINの力によって転生し、特別な力を持つ「神の推しの子」でもある。


そのため、お互いに意思疎通ができるのである……。



「我らはISG隊員……。我らの方が、理美様の護衛としてふさわしいはずなのに……。なぜ我らではないのだ……」



ISGの「G」は、ガーディアンズの「G」。


確かに、一理ある……。


異世界神パワーとともに、JINの理美コールによって生まれ変わったこの草たちは、理美への推し愛と、ISG隊員としての誇りを兼ね備えている。


そのため、JINとよく似た、ちょっとグレーなところまでいきそうな理美愛を持っているのである。


助さん、格さんと名づけられた草たちへの嫉妬で、二つの草はぶるぶると震えている。



異変を察知したJINが、花壇に現れた。


「隊員の諸君。気持ちはわかる。ただ、この気持ちは抑えなきゃいけないことは、わかっているね。耐え忍ぶのだ……」


「隊長…………」


草たちの体から、なぜか雫が流れている。


悔し泣きだろうか……。



理美は、プライバシーを大事にする人である。


JINの理美への巨大な推し愛を全面的に見せてしまうのはやばい。


空気を読めない系異世界の神であるJINにも、それくらいはわかっている。


たまに漏れ出てしまうのは仕方がないとしても、あくまでグレーな推し活を進めていかなければならないのである。



JINは、二つの草を見つめた。


「この我らの気持ちを抑え、耐え忍び、陰からそっと見守る。


そう――君たちは忍びだ」



そして、サンスベリアを見る。



「サンスベリアの葉を二枚合わせれば、風車のような形になるな……。


君は今日から――風車の弥七だ」



続いて、ガジュマルを見る。



「ガジュマルよ。幹が太く立派だ……。壁など、その幹で破壊できそうだな。


肉体派の君は――柘植の飛猿と命名しよう……」



JINは推し活の一環として、すでに『水戸黄門』の知識はバッチリなのである(笑)



そして、命名されたその瞬間――。


二つの草の色が、みるみる黒くなっていく。


闇に隠れる、黒い草となったのである。



忍びの者たちを「草」や「草の者」と呼ぶらしい。



今、作者は、


「私、天才」


と思いながら書いていることであろう……。


ピッタリなのだ(笑)



こうして、神の推しの子――異世界弥七と異世界飛猿は、透明になり、テレポーテーションまでできるようになった。


これなら、諜報活動も可能である。



「君たち。言っておくが、バレないからといって、理美さんの家の中に入ることは禁じる」



異世界の草たちは、うなずく……。



確かにJIN自身も、理美から「招かれない限り家に来てはいけない」「生活を覗いてはいけない」と言われている。


しかし、草たちに関しては、理美はその存在すら知らない。


ということは、何も言われていない。


これまでJINが実践してきた、


「言われていないことならやってもいい」


というグレーな推し活理論からいけば、透明になった草たちが理美の家へ侵入することも可能なのではあるが――。


JINがそれを許さない理由は、ひとえに一つ。



自分は許されていないのに、こやつらが理美の家に入ることなど、許せないのである……(笑)



もし今後、理美が異世界を旅することがあれば――。


異世界の草たち。


助さん。


格さん。


弥七。


飛猿。


みんな、ついてくることになるのであろう……。



あっはっはっはっはっは。



ご老公の笑い声風の、エンディングなのである。



JINが『水戸黄門』の役をするとしたら、うっかり八兵衛あたりがいいかもですね。

愛すべき異世界の神様ですから。

By 作者

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