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妄想

ソフィーの配信を聴いていた。


あ、私の悪い癖が出てる。


ソフィーの配信に、初めての方が来た。妄想の世界で生きていると思われる方だ。


自分で作った設定を、本当の経歴のように話して楽しんでいる人というのだろうか?


そういう方に、ソフィーが色々と質問しているのである。


その方を否定はしない。


「へえ。そうなんだ。。」


と相槌を打ちながら、色々聞いて、事実か否か、辻褄が合っているかどうかなどを確かめている作業を、ソフィーはしているのだ。




まだJINさんと出会っていない数年前、私がソフィーとして配信しているころ、一人の男性リスナーさんが入ってきた。


医者であるという。


アメリカの病院で働いていたこともあるという。


「アメリカで聴いていた曲を歌ってほしい。」


とリクエストされ、歌ったりしていた。


私が配信しているアプリは、一日に無料コインを四百ポイントくらいもらえる。


その方を仮にSさんと呼ぼう。


Sさんは、来ると三百ポイントのアイテムをくれる。


来るたびに三百ポイントくれるリスナーさんは、なかなかありがたい方ではある。


聞きもしないのに、年収が億単位であるという。


たぶん、医者であることや年収が高いことを言うことで、「すごい」と言ってほしいんだと思う。


でも私は、


「いや、私にすごいって言ってもらいたいなら有料ですよ。ここは私の自慢をする場所なので、リスナーさんが自慢するなら有料です。十ポイントください。」


と返していたと思う。


くそな自慢は聞きたくないから言ってるんだが、こんなことを言われても毎回来てくれるのである。


Sさんが来るたびに、聞いてもいないのに、


「私は東大出身の医者です。」


とかいうのである。


否定はしない。


でも、


「ああ、妄想設定でお話してる方だな。。」


と分かってくる。


家族に東大を出た人もいるので、なんとなくどういう場所かということも分かっている。


「東大出身で、お医者様ってことは理Ⅲですか? 理Ⅲって研究者の方が多いと聞いてるんですが、そちらの道には進まなかったのですか?」


など、「へえ。」と言いながら根掘り葉掘り聞いていくのである。


ある日は、


「国境なき医師団にいたことがある。」


とコメントされ、


「何年ごろ行かれてたんですか? どこの国ですか?」


など聞いていくのである。


とにかく質問して、私の中でSさんの年表を作っていく。


時系列が合っているか。


こんなことが可能なのか。


ちなみに、うちの近所のクリニックで、東大工学部を卒業してから他の国立大学の医学部へ入り直し、いろんな医局を回ったあと、実家を継いでおられる先生がいる。


理Ⅲから町のお医者さんって、普通ないよな(笑)


そのころの私は昼間に長時間配信をしていたので、リスナーさんが一人もいない時間もあった。


そういう時間帯によく来られた。


「今から手術だ。その前に来た。」


というような時もあった。


私は割と鋭い質問をする。


Sさんの設定が崩れるような質問だ。


もしくは、実際にそういう経歴なら知っているはずのことを質問する。


そういう時、Google先生に聞いているのか、しばらく返事が来ない。


そして、かなり待ったあと、何かそれらしいコメントをしてくる(笑)


普通の方なら、私が妄想設定だと気づいていながら知らない顔をして色々質問している、と気づき、逃げると思うのだが、こういうお遊びは長らく続いていた。


たぶん何かしら事情のある方だったんだろうと思う。


私が困るような質問をしても、話し相手になってくれてうれしかったのだろうか。


誤字脱字が多く、文章もたまに意味不明。


「論文とか書く時、どうしているんですか?」


とも聞いたことがある。


秘書が清書してくれるらしい。


調べものも、たくさんの本や資料が自宅にあり、それで調べたりするそうだ。


今の時代に、すべてローテクである。


Sさんと私だけの配信に見えていたが、かなりの人が潜って聞いていたようだ。


私が連絡先を交換しているリスナーさんから、


「Sさんと、またやってますね。。」


みたいな連絡が来るのである。


みんな、妄想設定の方だと気づいているのである。


私が聞き出したSさんの経歴。


東大理Ⅲ卒業。


アメリカで医師として二年間働いた経験があり、国境なき医師団で数か国を回った経験もある。


現在は国立大学の教授をしながら、実家の病院は奥様やお子様たちが頑張ってくれているが、手術の執刀医が足りない時は、自分が赴くという。


大病院なのに人手不足である。


そして、美容整形の手術もアルバイトでしており、美容整形クリニックにもたまに行く。


というような感じだったと思う。


凄い人なのである。


こんな人が現実にいたら、かなりの有名人なはずなんだけどね。。


私も妄想は好きである。


妄想はかなり楽しい。


待ち時間が暇な時、眠れない時、何もなくても妄想だけで楽しめる。


だから、妄想自体はいいのである。


Sさんの与太話も、基本どこまで私が突っ込んだら「降参です。」となるのかな。。というような意地悪な気持ちもありつつ、お付き合いしていたのだが、私はSさんに最終宣告のようなことを言ってしまった。


日本で大きな地震があり、被災地が本当に困っている時だった。


その時に、


「今から医者として被災地へ行く。」


というようなことを言い出したのだ。


私は被災地に親類もおり、本当に心配していた。


その時に、そんな嘘を言い出すのか。。と腹が立ったのだ。


誰も傷つけない嘘はいいと思う。


でも、そんな嘘には付き合えない。


もうやめてください。


と言ったと思う。


もしかしたら、妄想と現実の区別がつかなくなっていて、そういうことを言い出したのかもしれない。


被災地を心配するあまり、そういうことを言い出したのかもしれない。


でも、そこまで優しい気持ちにはなれなかったなあ。。。






今の異世界での私は、今までの妄想をすべて現実にして楽しんでいる。


何というんだろう。


妄想か現実か分からないような人、それって私なんじゃないの?(笑)


日本の理美に申し訳ないって気持ちが、ちょっとあるかなあ。


なんだか昨日のソフィーが、妄想設定の人に色々質問しているのに対して、ちょっと後ろめたいような気持ちが出てるのは、異世界で好き勝手してるからかな。。


なんて話をJINさんに配信で話していたら……


JIN

「理美さんが色々されていること、理美さんの妄想を現実にしていることは、私も一緒に楽しめてうれしいんです。


理美さんも楽しい。


私も楽しい。


このままでいいと思います。


どんどん妄想を現実にしていきましょう。


毎日、私も楽しみです。」


私は、一気になんだか胸の中にあったしこりがなくなったような解放感に包まれた。


JIN

「でも、今日の方にしても、その医者だという方にしても、見たらすぐばれるようなことを言っちゃうんでしょうねえ。


わからないなあ。。。」


いやいや、すぐ見に行けるのは異世界の神様だけですからね(笑)

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