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銀髪の猫はなにを願う キャラクター&設定ガイド  作者: 熊猫


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ゼルハルト・ヴェルンハルト(Zelhardt Vernhardt)(初出 第三部 三十八章) ※ネタバレ含みます

挿絵(By みてみん)

■ ゼルハルト・ヴェルンハルト(Zelhardt Vernhardt)

 

挿絵(By みてみん)

 

基本情報

 

名前:ゼルハルト・ヴェルンハルト(初出 第三部 三十八章)

英字表記:Zelhardt Vernhardt

年齢:42〜45歳前後

性別:男性

身長:187cm

所属:ヴァルテール王国

役職:宰相

 

高齢の国王に代わり、ヴァルテール王国の政務を実質的に掌握していた人物。

軍部、官僚機構、王立魔導院、貴族会議などへ強い影響力を持ち、事件以前には王国の現体制を動かす中心人物となっていました。

 

***

 

人物概要

 

ゼルハルトは、単なる権力者ではありません。

彼は国家を、一つの芸術作品として捉えていました。

 

美しい秩序。

無駄のない統治。

整然とした社会構造。

 

それらを完成させることこそ、自身に与えられた使命だと信じていた人物です。

彼にとって国家とは、人々が生きるための場所である以上に、

「完成させるべき作品」

でした。


自分はその作品を設計し、正しい形へ導くために存在している。

ゼルハルトは本気でそう考えていました。

 

***

 

思想

 

ゼルハルトは、人間そのものを嫌っていたわけではありません。

むしろ、人間の能力や可能性を高く評価していました。

 

しかし、その評価は一人ひとりの人格や人生に向けられたものではなく、国家という大きな構造を支える存在としての評価でした。

彼にとって重要なのは、個人ではありません。

 

国家全体。

秩序全体。

完成された構造そのもの。

 

感情。

愛情。

友情。

家族。

誇り。

 

それらを完全に否定していたわけではありません。


ただし、

「国家より優先されるべきものではない」

と考えていました。

 

個人の感情によって国家の完成が妨げられるのであれば、その感情は排除されるべきものとなります。

人は国家を構成する部品であり、優れた者はより適切な場所へ配置されるべきだと考えていました。

 

***

 

性格

 

冷静沈着で、理性的。

礼儀正しく、滅多に感情を荒らげません。

怒鳴ることもなく、部下に対しても穏やかな態度を崩しません。

 

だからこそ、彼は恐ろしい人物でもあります。

ゼルハルトの命令には、憎しみも怒りもありません。

誰かを苦しめること自体を楽しんでいるわけでもありません。

 

ただ、国家のために必要だから行う。

本人にとっては、それだけのことでした。

 

他者の犠牲を理解できないのではなく、理解したうえで必要経費として切り捨てられる人物です。

 

***

 

欠点

 

ゼルハルトは、極端な完璧主義者です。

当初、その完璧さは国家をより良くするために求められていました。

無駄を減らし、争いを抑え、安定した国を作る。

その目的自体は、王国を守るためのものでした。

 

しかし、やがてその思想は、

「自分だけが、この国家を完成させられる」

という確信へ変わっていきます。

 

国家を愛し、国家のために働いていた男は、少しずつ国家そのものを自分の理想どおりに所有したい男へと変質していきました。

 

彼が求めたのは、王国の安定だけではありません。

自分の設計図どおりに完成した王国でした。

国家のために理想を抱いていたはずが、いつしか自分の理想を実現するために国家を利用するようになっていきました。

 

***

 

エルドリア家への執着

 

ゼルハルトが最も強く執着していたのが、エルドリア家です。

エルドリア家は、「魔導と記録」を司る高位貴族家。

ヴァルテール王国の術式、記録、封印体系の根幹に深く関わりながら、特定の政治派閥には属さず、中立を保っていました。

王国の魔導体系を掌握しようとするゼルハルトにとって、その中立性は国家という作品に残された最後の未完成部分でした。

 

彼の目的は、エルドリア家を政治的に取り込み、王国の魔導体系と記録体系を完全に支配することでした。

 

***

 

エルドリア家を取り込むための計画

 

計画当時、メル・エルドリアはまだエルドリア家の現当主ではありませんでした。

メルは次期当主であり、跡継ぎ第一候補として見られていた段階です。

 

ゼルハルトが最初に計画したのは、メルをすぐに失脚させることではありませんでした。

まず、メリル・エルドリアとの政略結婚によって、エルドリア家の血筋へ入り込む。

 

その後、メルが正式にエルドリア家の当主となるのを待つ。

そして、当主となったメルを亡き者にする。

 

メルが死ねば、エルドリア家に残る正統な血筋はメリルのみとなります。

そのメリルの夫であるゼルハルトが、唯一の血筋を支える者としてエルドリア家の当主となる。

それが、ゼルハルトの描いていた継承の設計図でした。

 

メリル本人を愛していたわけではありません。

彼女は、エルドリア家の血筋と権限を手に入れるための鍵として見られていました。

 

***

 

メルによる計画の破壊

 

メルは、ゼルハルトの狙いを察していました。

自分が跡継ぎ第一候補のまま正式な当主となれば、メリルはゼルハルトとの政略結婚に利用される。

 

そして、自分が亡き者にされた後、ゼルハルトがメリルの夫という立場からエルドリア家を奪う。

その継承の流れを断ち切るため、メルは自ら家の名誉を傷つけるような言動を重ねました。

 

「問題児」

「家の不名誉」

「次期当主にふさわしくない人物」

 

そう見られるように振る舞い、自ら跡継ぎの座を失い、エルドリア家から追放される状況を作り上げます。

メルが次期当主の座を手放したことで、継承順は大きく変わりました。

 

メリルはゼルハルトの妻となる前に、エルドリア家の正式な当主となります。

誰かの妻として家を継ぐのではなく、エルドリア家の正統な当主として立つことになったのです。

 

その結果、ゼルハルトが想定していた、

「メリルとの婚姻」

「メルの当主就任」

「メルの死」

「ゼルハルト自身の当主就任」

という継承の流れは崩れました。

 

当主となったメリルは、政略結婚のために差し出されるだけの立場ではなくなり、エルドリア家自身の判断によって婚姻や政治的立場を決められる存在となります。

 

メルは家を追われながらも、ゼルハルトの支配から外れた自由な立場を得ました。

メリルもゼルハルトの支配下には入らず、エルドリア家は中立を維持したまま、彼から距離を置くことになります。

 

ゼルハルトの計画は、表面上はメルをエルドリア家から排除することに成功したように見えました。

 

しかし実際には、メルによって計画の根幹である継承構造そのものを壊されていたのです。

 

***

 

事件当時に進めていた計画

 

エルドリア家の取り込みに失敗した後も、ゼルハルトは計画を諦めませんでした。

 

第二のエルドリア家計画

 

魔導士育成施設を利用し、エルドリア家に代わる国家管理下の魔導名門を作ろうとしていました。

血統や伝統に依存せず、国家が教育、選別、管理できる魔導士集団を作り上げる計画です。

 

エルドリア家を支配できないのであれば、その価値そのものを代替する組織を作ればよい。

ゼルハルトはそう考えました。

 

記録術の改変

 

歴史や公的記録を再編集し、国家にとって都合の良い記録体系を作ろうとしていました。

記録を完全に消すのではなく、必要な情報を残し、不都合な情報の意味を変え、国家が望む形へ整え直す。

それもまた、彼にとっては統治の一部でした。

 

王位継承への介入

 

王位継承問題を利用し、自身の構想に従う王族を次の王として擁立しようとしていました。

ゼルハルト自身が王になることを望んでいたわけではありません。

彼が必要としていたのは、自分の設計した国家を維持できる王です。

王は国家の象徴であり、ゼルハルトの構想を承認するための存在であればよいと考えていました。

 

***

 

外見

 

黒灰色から銀灰色の髪に、白髪が混じっています。

髪は常に整えられ、乱れた姿をほとんど見せません。

年齢を隠すような若作りはしていませんが、衰えた印象もありません。

瞳は鋼を思わせる青灰色。

感情よりも理性が先に見える、冷たい印象の瞳です。

顔立ちは整っていますが、若々しい美青年という印象ではありません。

やや痩せた頬と、目元に残るわずかな疲労。

口元には穏やかな微笑みを浮かべることがありますが、その笑みに安心感はありません。

長身で細身。

筋力や威圧ではなく、静かな存在感によって場を支配する人物です。

服装は黒と白銀を基調とした宰相服。

装飾は豪華ですが派手ではなく、素材と仕立ての良さによって地位と格を示しています。

 

***

 

象徴モチーフ

 

・設計図

・幾何学

・王冠

・歯車

・柱

・建築線

・白銀

・鋼

・国家

 

***


ヴェルナとの関係

 

ゼルハルトは、自分自身を舞台を作る側の人間だと考えていました。

自分が国家を設計し、王国を正しい方向へ導いていると信じていたのです。

 

しかし実際には、彼自身もまた、ヴェルナから観測されていた存在でした。

ヴェルナはゼルハルトに情報や選択肢を与えました。

けれど、最終的な決断を下したのはゼルハルト自身です。

 

ヴェルナに完全に操られて破滅したのではありません。

彼女が用意した舞台の上で、自分自身の思想と欲望によって選択を重ね、破滅へ進みました。

 

ゼルハルトは舞台を作るつもりでいながら、ヴェルナにとっては舞台に立つ役者の一人でもあったのです。

 

彼の破滅は、ヴェルナによって無理やり作られたものではありません。

ゼルハルト自身が選び続けた結果として成立したものでした。

 

***

 

物語上の役割

 

ゼルハルトは、単純に王国を壊そうとする悪人ではありません。

彼は本気でヴァルテール王国を良い国にしようとしていました。

無駄をなくし、争いを減らし、秩序ある国家を作ろうとしていたのです。

 

しかし、その理想の中に、一人ひとりの人生は含まれていませんでした。

人間を構造へ変え、感情を誤差として扱い、個人を国家という設計図の中へ配置しようとした。

 

だからこそ、彼は危険な存在となりました。

国を愛しているからこそ止まれず、自分の正しさを信じているからこそ、他者の痛みを見ることができなかった人物です。

国家を守ろうとする意志と、国家を自分の作品にしたいという欲望。

 

その二つが分けられなくなった時、ゼルハルトは王国を支える宰相から、王国を支配する存在へ変わっていきました。

 

***

 

一言まとめ

 

ゼルハルト・ヴェルンハルトは、国家を一つの芸術作品として完成させようとした宰相です。

人を憎んでいたわけではありません。

国を愛していました。

しかしその愛は行き過ぎ、いつしか国家のためではなく、自らの理想を完成させるために人を配置するものへと変わりました。

彼は王国を守ろうとした男であり、

同時に、王国を自分の設計図へ変えようとした男でもあります。

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