SS ドヴォールとザグール
※推奨読了話数194話くらいです。
Q.ドヴォールとザグールってだれ?
A.城のダンジョンで、門番兼守護者をしているスケルトンナイト。
ドヴォールとザグールは、城のダンジョンにて門番をしている二体のスケルトンナイトだ。
本来の役割は守護者であり、城下町で敵を待ち構える必要がある。だがそれはあまりにも暇であり、また城の外の情報が一切無かった。
故に二人は女王の命により、今では城の周辺の情報を得るために、門番の方をメインで活動をしている。
なお門といっても、守るのはその横にある小さな出入口の門だった。
加えて時間帯によっては、城の周囲を巡回もしている。その際当然だが門は無防備になってしまう。
けれども正直な話、ダンジョンとしては侵入されても構わないのだ。
二人にこの命を出しているのは、あくまでも周囲の情報収集と、二人の暇つぶしを兼ねてである。
すると、そんなある日のことだった。ドヴォールとザグールの二人は、城の門の前で行き倒れを見つけたのである。
「ふむ。ザグールよ。こやつ、まだ息があるようだぞ?」
「ドヴォールよ。そのようだな。こんなことは初めてだ」
そう言って行き倒れの対処に困った二人は、どうしようかと頭を悩ませた。
「とりあえず、女王様に報告するべきだろう」
「そうであるな。我々の判断できる範囲を超えている」
行き倒れなど城の門を守り始めてから、初めてのことだったのである。故に判断が困難だと考えた二人は、守護者の繋がりから女王に報告することを決めた。
だがそんな時、行き倒れの人物が二人の声に反応して、顔を上げる。
「み、水……」
そして絞り出すかのように、そう口にした。
「む。水か。よかろう。私が取ってくる。ザグールは、女王様への報告を頼むぞ」
「承知した。ドヴォールよ、早く水を持ってくるのだ」
全くの部外者からによる水の懇願とはいえ、助けを求められたことなど初めの出来事である。
根が善人のドヴォールとザグールは、その願いを聞いて即座に動き出した。
またアンデッド故に、人がどれくらいの脱水症状で死に至るかなど、忘れて久しい。
故に一分一秒が惜しいと、城下町から急いで水を取りに行った。
最終的にその行き倒れの人物は、無事に助かることになる。更には新たな仲間として、城のダンジョンに迎え入れられるのだった。
その人物こそ転移者の一人である、ヴラシュ・シルバニアである。
ドヴォールとザグールは命の恩人だと言われ、ヴラシュにとても感謝された。
心からの感謝など、いったいいつ振りのことだろうか。二人は失われかけていた何かが込み上げてくるのを、強く感じたのである。
「ザグールよ。人助けとは、良いものだな」
「ドヴォールよ、その通りだ。また誰かが困っていれば、まずは確認をとるべきだろう。襲ってから気づいたのでは、遅いからな」
そうして二人は次回から遭遇する人型種族に対して、まずは警告や誰何することを決めるのだった。
また奇しくもそれ以降、小規模国境門の乱立により、二人は急がしくなってしまう。
だがそれでもまずは話を聞くべきだと考えており、出会った者に声をかける。
しかしその後は全く上手くはいかず、遭遇した者とは戦闘になってしまうのが大半である。
そのことに悩んだ二人はヴラシュにも相談をして、アドバイスをもらったりもした。
加えて何かあれば、自分にいつでも声をかけても構わないと、ヴラシュに言ってもらう。
そうして何度か部外者との遭遇を繰り返し、とうとう運命的な出会いを二人は果たす。
「待たれよ! 剣を抜けば、敵とみなす!」
「なっ!?」
剣に手をかけた少年に対して、二人は続けてこのように声をかける。
「他国の者よ! ここはルベニア王国の王都、ジークランデである! 事と次第によっては、全面的な攻勢に出させてもらう!」
「今はただでさえ小規模国境門が異常発生しておるのだ。許可なき他国の者を通すわけにはいかん! 直ちに立ち去られよ!」
警戒はしつつも、二人は理性ある警告を発した。その声をかけた相手は、もちろんジンである。
二人はCランクのスケルトンナイトだが、技量を加味すればBランクに迫る実力者だった。しかし相対したジンの底知れぬ何かを感じ取り、戦えばただでは済まないだろうと直感してたのである。
またここまでヴラシュ以外に対話が上手くいっていなかったこともあり、二人は何時でも戦えるように自然な形で構えていた。
だが結果としてこのまま戦闘に移るかと思いきや、ジンが穏便な対応をとったことで、最悪は免れたのである。
そしてこの出来事が切っ掛けになり、ドヴォールとザグールだけではなく、城のダンジョン全体に、大きな変化をもたらすことになるのだった。
もしも仮にドヴォールとザグールが何も声をかけなければ、城のダンジョンとジンが敵対していた未来もあり得たかもしれない。
故にこの何気ない会話のやり取りが、運命を決定づけたのである。後にジンの実力を知った二人は、敵対しなかったことに心から安堵するのだった。




