437 セマカのダンジョン ④
「まあ、こんなところか」
「わ~。たくさん~!」
「にゃふふんっ!」
あれからしばらく経ち、第四階層目のモンスターの大部分を倒し尽くしていた。
この階層は、リトルサハギン、サハギン、ハイサハギン、シールドタートルの四種類から構成されていたようである。
枚数など気にせずにカード化していったので、中々の数になった。
ただ個人的に端数は揃えたいので、一応枚数には区切りをつけている。
その結果として、このダンジョンで手に入れたカードは、現状以下の通りになった。
・ジャイアントバット 1枚
(所持枚数が元々9枚だったため)
・スライム0枚
(既にある程度所持していたことで、特に必要性を感じなかったため)
・ゴブリン86枚
(ホブンの進化用。こちらは見つけ次第ほぼカード化している)
・アクアタートル 10枚
・シールドタートル 300枚
・リトルサハギン 500枚
・サハギン 500枚
・ハイサハギン 300枚
正直リトルサハギンやサハギンは、ここまでいらなかったかもしれない。
けれども将来的に水軍を作るのであれば、足しにはなるだろう。
アクアタートルはこの階層にはいなかったので、枚数は三階層目で手に入れた分だけになる。
またこれ以外にもカード化しなかったのも多く、当分の間は魚に困ることはないだろう。
それと宝箱についてだが、こちらはほとんど無かった。おそらく冒険者やハンスたちが、定期的に回収していたのだろう。
一応いくつか見つけた宝箱の中身も、大したものは無く、少々ガッカリした。
いまさら金銭や弱い装備が出てきても、使いどころがあまり無い。ストレージの中で、眠り続けることになるだろう。
ちなみにあの後地上部隊も召喚して、人海戦術で探索を行った感じだ。
サハギンを召喚して道案内させてもよかったが、気分的にそうしたかったのである。
その結果として第五階層目、ボス部屋に繋がる階段を無事に発見していた。
あとは稀にダンジョンに一体だけいるモンスターがいないか捜索をしたが、残念ながら見つからずに終わっている。当然、イレギュラーモンスターもいなかった。
以前ハパンナダンジョンでは、ハイオークやブラックレオパルドなどがいたのだが、アレは実のところ稀有な例だったのかもしれない。
そうして第四階層目でやることが無くなったので、レフとリーフェ以外の配下たちをカードへと戻した。
さて、次は第五階層目のボス部屋だな。ちょうど倒されずに残っていることは聞いていたが、実際大丈夫だろうか。
実はブッチ代官から、ダンジョンボスが倒されていないことを聞いていた。
いつもはハンスたちが独占しており、勝手に倒すと面倒なことになっていたらしい。
だが今回はハプンとサマンサを連れて倒す予定だったらしく、ハンスはダンジョンボスを倒さずにキープしていたようだ。
なのでキープしているダンジョンボスを倒さないようにと、周囲に命じていたようである。その情報を、ブッチ代官も得ていたようだ。
その結果として、俺がダンジョンボスに挑める機会が回ってきたのである。これについては、タイミングがよかった。
そうして階段を下ると、程よい広さをした部屋の正面に、大きな両開きの扉が見える。あの扉の先に、ダンジョンボスがいるのだろう。
仮に倒されていれば扉は存在していないか、何かしらで封じられているので、これでボスモンスターがいることが確定した。
ちなみにこの程よい広さの部屋は、安全地帯となっている。
いつもはここで、ハンスたちの親衛隊が休憩していたり、ダンジョンボスに人が来ないか見張っているようだ。
しかし現状この部屋には、誰もいない。
だがその理由は、ここにいた者が闘技場へと招集されたからである。
ここに来るには親衛隊でも実力が必要であり、あの時ハンスは、実力者をもしものために招集していた。
なので一時的にこの場所に人がいなくなり、またあの闘技場での出来事で、この場所に戻ってくることができなくなった感じである。
もしかしたらザコの一人や二人はいるかもと思ったが、どうやらそれは杞憂だったみたいだ。
いたら会話するのも面倒なので闇に葬ろうと思っていたのだが、実に運のいいやつらである。
さて、ちょうど誰もいないし、ここで小休憩でもしよう。少し小腹も空いたしな。
とりあえずボス戦前に小休憩がてら、リトルサハギンを焼いて食べてみることにした。
まずリトルサハギンをストレージから取り出して、邪魔な手足をカット。ついでに生活魔法の飲水で洗い、鱗も生活魔法の解体で取り除いた。
それを事前に生活魔法の製作で作っておいた、四つ足の鉄網台の上に乗せて、同じく生活魔法の火種で下から焼いていく。
本来火種は乾燥した木などに発火するための魔法なのだが、火種程度では発動しても魔力の消費は無いも同然だ。なので火の大きさを調整して、そのまま維持させた。
また俺はそこへ、お馴染みのソルトタートルの塩をまぶしていく。リトルサハギンの塩焼きである。
そうして良い感じに焼けたところで、用意していた大きな取り皿に移す。湯気が立ち込めており、皮もパリッと焼けている。この焼き加減には、とても食欲をそそった。
ちなみにリトルサハギンという名称だが、魚と考えるとかなり大きい。口から尾までだと、たぶん1m以上あるのではないだろうか。
加えて元々青い鱗をした、鯛にも見えなくもない。そう考えるとやはりリトルサハギンは、食用に適したモンスターだった。
「わ~い! いいにお~い!」
「にゃにゃにゃにゃにゃ!」
するとリーフェとレフも、興味津々にリトルサハギンの塩焼きを見てよだれを垂らす。
特にレフは猫系だからか、魚には何か惹かれる何かがあるのかもしれない。
「待ってろ、今取り分けてやるからな」
そう言ってリトルサハギンの塩焼きを取り出した菜箸でほぐし、小皿へと分けていく。
ついでに大根のような野菜を生活魔法の製作ですりおろし、横に添える。
またそれに実は女王にお願いして作ってもらっていた、醤油をかけた。
こうした地球の調味料などを再現できるのは、女王の力あってこそである。
困ったときに女王に頼めば、大抵のものは作ってくれるだろう。しかし頼り過ぎてもよくはないので、本当に必要な物以外は頼まないことにしている。
それに俺の直感が、女王に頼り過ぎてはいけないと警鐘を鳴らしていた。
何というか、頼り過ぎてそれが依存へと繋がると、抜け出せない沼に引きずり込まれるような、そんな気がするのだ。
たぶん俺がお願いすれば、女王はそれを叶えるために何でもしてくれるだろう。またシャーリーもそれに加わって、世話をしてくれる。いや強制される気がした。
なのでほどよいお願い程度で、済ませておいた方がいい。アレは人をダメにする何かを秘めている。
そんなことを思いながら、俺はリトルサハギンの塩焼きを分け終えたので、さっそくリーフェとレフと共に食べることにした。
箸で湯気の上がるリトルサハギンの身を摘まむと、それを口へと運ぶ。
すると口の中でホクホクとした身がほぐれ、旨味と塩味が調和する。
「うまっ!」
「おいし~!」
「にゃぁん!」
リーフェとレフも、俺とほぼ同時に声を上げた。
「これは、旨いな」
セマカの町では食べなかったことを、少し後悔してしまうほどである。
これなら、カード化せずにストレージへと全て入れておけばよかったかもしれない。
つい、そんなことを考えてしまう。
「ごしゅ~! おかわり~!」
「にゃにゃにゃ!」
「ああ、わかった。まだまだたくさんあるから、どんどん食え」
リーフェとレフはリトルサハギンの塩焼きが気に入ったようであり、何度もおかわりをした。
俺も当然それに続き、大きいと思っていたリトルサハギンの塩焼きをみんなで平らげてしまう。
するとそのとき、ふと俺はあることに気がついた。
なんかリーフェの腹、妊婦みたいに大きくなっているな……。
「おなかいっぱ~い!」
「にゃにゃん!」
本人は特に気にした様子はなく、満足そうに自身の腹を撫でていた。
というかリーフェの大きさを考えると、胃袋以上に食べていたような気がする。よく張り裂けなかったな。
まあ、それについてはレフと俺も似たようなものか。リーフェと比べたらそこまでではないが、食べ過ぎたような気がした。
しかしそこに苦しさはなく、満足感だけが存在している。
おそらく胃袋自体が常人と比べると、かなり強いのだろう。胃液についても、強力になっているかもしれない。
なので仮に小人が胃の中で剣を振り回して暴れても胃は傷つかず、即座に胃液で消化してしまうと思われた。
実際少しすると、妊婦のように大きくなっていたリーフェのお腹が、元の大きさへと戻っていく。無事に消化したのだろう。
傍から見ていると、それはある意味不思議な光景である。また食後の動きについては、特に問題は無さそうだ。元気そうに飛び回っている。
よし、小休憩はこのくらいでいいだろう。
「そろそろ行くぞ」
「は~い!」
「にゃにゃん!」
そうして小休憩を終えた俺たちは、いよいよダンジョンボスへと挑むことにするのだった。
話数的には437話ですが、全体の公開数的には、500エピソードとなりました。
本編+設定+SSなどで、500エピソードという感じです。
まさか500エピソードまで続くとは……。
なんだか感慨深いものがあります。
なので今回も章終わりに、記念SSを掲載しますね。
もはや毎回行っているので、記念という感じはしませんが。(笑)
引き続き、『モンカド』をよろしくお願いいたします。
乃神レンガ




