435 セマカのダンジョン ②
サハギンをカード化した後も、順調に進んでいく。
二階層目には、他にもゴブリンとリトルサハギンがいた。
周囲の目が無いことを確認しつつ、どちらもカード化していく。ゴブリンは、今後のホブンの進化用に集めている感じだ。
またサハギンとリトルサハギンは、所持数が10枚ずつになるようにしておく。コレクション用なら、これで十分だろう。
他にも道中宝箱を見つけたが、中身は大したものではなかったので、割愛しておく。
そうして道なりに進んでいると、第三層目の階段を発見した。
できたばかりのダンジョンだからか、構造が単純なのかもしれない。
ダンジョンはダンジョンポイントを一定数溜め込むと、自動的に構造を変える。そうして少しずつ、最適化していくらしい。
まあ、それでも女王のような存在がいなければ、一般的なダンジョンは初期の状態を基準にして変化するので、そこまで大きな変化はないようだ。逆に女王が、特殊過ぎる存在ともいえる。
そんな事を考えながらも、俺とレフは第三層目へと足を踏み入れた。
ふむ。第三層目も、第二階層目と同じような構造だな。
鍾乳洞と地底湖の組み合わせは変わらず、まるで第二階層目の複製のような感じだった。
また第三層目までくると、冒険者などの数がかなり減っている。だが多少はいるようで、ある程度の力を持つ者は、ここを主戦場にしているのかもしれない。
見れば中堅冒険者パーティーが、慣れた感じでサハギンを倒している。
他にもキングが乗っていたシールドタートルと似た亀のモンスターとも戦っているようだった。
あれは初めて見るモンスターだな。俺も探してみよう。
そう思い中堅冒険者パーティーの邪魔をしないように通り過ぎて、モンスターを探す。
探知系スキルを使うことで、それらしき反応を見つけた。そのまま進むと、陸地にいる大きな青色の亀と無事に遭遇する。
さっそく、鑑定をしてみた。
種族:アクアタートル
種族特性
【水属性適性】【水属性耐性(小)】
【ウォータショット】【物理耐性(小)】
ふむ。シールドタートルの下位種という感じだな。ランクは、Dランクだと思われる。
あとはそろそろ、配下の一体でも召喚しよう。人も少ないし、見られても騒ぐ者はあまりいないはずだ。
それにダンジョンを踏破したらこの付近から去るので、多少は見られてもどうにかなるだろう。問題は、どの配下を召喚するかになる。
ネームドだと、残留組を除けばサンが一番ランクが低い。といっても、Bランクだが。
であれば、ネームドではない他のモンスターをあえて召喚してみるべきだろうか?
そんなことを考えていると、一枚のカードから出して出してという思念が伝わってきた。
はぁ。わかった。出すから待ってくれ。
俺としては別にどのモンスターでもよかったので、その願いに応じて召喚した。
「出てこい」
「わ~い! やっと出番だ~! ごしゅありがと~!」
そう言って元気よく現れたのは、リーフェである。銀色をした蝶のような羽を羽ばたかせて、俺の周りを嬉しそうに飛んでいた。
「おちついてくれ」
「うん~!」
リーフェは頷くと、俺の右肩へと座るようにして着地する。進化してから身長が30cmほどになったので以前より少々大きく、存在感があった。
また足をバタつかせながら、青色のタレ目はニコリと弧を描き、嬉しそうに体を横に揺らしている。
それによってリーフェの長い金髪が首にあたり、小さなツインテールが触れてくすぐったい。
しかしそんな風に揺れてもバランスを崩さないのは、流石はAランクというところだろう。
あとそんなに足をバタつかせるのは、ある意味危ない。
おそらく正面からだと白く短い丈のミニワンピースの中身が、丸見えになっていることだろう。以前なら、そう思っていた。
だが城のダンジョンで過ごす中で、リーフェは幻属性魔法を常に発動させて、パンチラガードをすることを覚えたのである。
覗こうとしても、見通すことのできない闇が広がっていることだろう。
なので他者からでは、ワンピースの中身を見られることは無い。
ただ他に人がいない場合そのガードを解除していることが多く、よく俺の周囲を飛んでいるので強制パンチラ、いや強制パンモロ状態である。
俺は何とも思わないが、リーフェにはもう少し恥じらいを持ってほしい。まあ、無理かもしれないが。
あとそんなリーフェのステータスだが、以前とは少しだけ変わっている。
種族:イリュージョンフェアリー(リーフェ)
種族特性
【幻妖精】【空属性適性】【空属性耐性(中)】
【精神耐性(大)】【フェアリーステップ】
【イリュージョンチェンジ】【貫通幻夢】
【魔法制御】【気配感知】【飛行】
【隠密】【アイテムポケット】【使徒】
エクストラ
【ランクアップモンスター】
スキル
【サイコカッター】【バリアー】new
【スリップ】new【スペースカッター】new
称号
【ジンジフレの加護(使徒)】new
装備
・偽装擬態のネックレス
新たに空属性の魔法を、いくつか習得している感じだ。これにより、リーフェの攻撃手段が増えたのである。
特にスペースカッターは、リーフェにとって貴重な攻撃魔法だ。幻属性のサイコカッターは、精神に異常を及ぼす攻撃なので、少々特殊なのである。
加えてまだ俺の加護による、適性二つは選んではいなかった。増やすよりも、既存のスキルを優先して鍛えることにしている感じだ。
とりあえずオーバーキルだとは思うが、リーフェにこのまま戦わせよう。
「リーフェ、あのアクアタートルを倒せ」
「わかった~!」
俺が命じるとリーフェは肩から飛び立ち、前方でボケっとしているアクアタートルに近づいていった。
すると少ししてアクアタートルもようやくリーフェの存在に気がつき、臨戦態勢になる。
だがそんなことをしても、意味はない。
「えいえ~い!」
「ガメッ!?」
さっそくスペースカッターを使用したリーフェにより、アクアタートルは縦に真っ二つになって死亡した。
吹き出した大量の血と断面からして、かなりグロい光景かもしれない。
「ごしゅ~! 倒したよ~! ほめてほめて~!」
そう言って返り血が飛んできていたのか、アクアタートルの血で全身を汚したリーフェがニコニコ顔で戻ってくる。ある意味、ホラーかもしれない。
「ああ、よくやった。だが、汚れをまずは落としてやるから、引っ付かないでくれ」
「えへへ~!」
生活魔法の清潔を発動して、アクアタートルの血を落としてやった。
「にゃ゛にゃ゛にゃ゛……!」
「え~? じゃあレフちゃんもぎゅ~!」
「にゃぁあ!?」
するとレフが俺に引っ付くリーフェに苦言をすると、なぜか勘違いしたリーフェがレフにも抱きついた。
大きさ的には同じくらいなので、先ほどのホラーが嘘のように、ファンシーな光景が広がっている。
とりあえず俺はその間に、アクアタートルをカード化しておいた。
「アクアタートル、ゲットだ」
「にゃ゛ん゛にゃ゛!!」
「げっとと~!」
俺たちはそんなやり取りをしつつ、そのままリーフェの召喚を維持しながら、探索を再開する。
第三層目には、他にサハギンしかいないようだった。つまりこの第三層目は、アクアタートルとサハギンの二種類だけのようである。
どちらもDランクモンスターなので、中堅冒険者パーティーにはちょうどいい階層なのかもしれない。
大きな怪我をせずに安定して狩れるというのは、大事なことだ。
どちらも食料になることに加えて、サハギンは槍、アクアタートルは盾や防具の材料になりそうな、甲羅が手に入る。
そういう面でも、稼ぎとしてはちょうど良い相手なのだろう。
思えば第一階層目では、槍を持った駆け出し冒険者などが多かった。あれはサハギンの槍を、どこかで買ったのだろう。
ちなみにサハギンの槍は持ち手は木製であり、先端が鉄になっている。
種族由来の武器なので、サハギンが使っている分には、木が腐ったり先端の鉄が錆びたりすることはない。
なので奪った直後は、ほとんど新品同様だったりする。
ある意味多少とはいえ鉄が手に入るのは、町にとっては大きいことなのだろう。
それとアクアタートルの甲羅も、盾や防具として重宝されるはずだ。
だとすればこのダンジョンは、結構バランスがいいかもしれない。
食料、武器、防具素材。これらが手に入るのは、かなりのプラスだろう。
セマカの町が再び栄え始めていたのにも、納得である。
それをハンスは自身の手柄にしていたというのだから、おかしな話だ。まあ、既に終わった話だから、どうでもいいけどな。
俺はそんなことを思いつつ、探索を続けるのだった。




