434 セマカのダンジョン ①
セマカのダンジョンに入る際には、色々と手続きがいる。
冒険者証を見せたりして、必ず出入りする人物を把握するようだった。
これは以前ダンジョンコアを破壊されたことで、衰退へと繋がったからである。
ちなみにダンジョンコアを破壊することは禁止されており、もし破ったら重罪として、最悪の場合は死刑もあり得るらしい。
まあダンジョンコアを破壊する気は無いので、気にする必要はないだろう。
そうして手続きを終えて、無事にダンジョンの中へと入ることができた。
ふむ。ここがセマカのダンジョンか。
見ればセマカのダンジョンは、鍾乳洞と地底湖が融合したような構造になっている。全体的に広々とした空間だ。
高い天井には辺りを照らすダンジョンではお馴染みの石と、鍾乳石があった。水滴が鍾乳石を伝い、石肌の地面へと落ちている。
また道は複数に分かれているが、地底湖が隣接している部分が多く、落ちたら面倒なことになるだろう。
他にも第一階層目には多くの冒険者やジンジフレ教の信者がおり、先へと進んでいる。
加えて中にはあの闘技場にいた者もいるのか、俺を見てギョッとしていた。
話しかけられると時間を取られるので、俺もさっさと先へと進み始める。
さて、ダンジョン内で配下のいずれかを召喚しようと思うが、ここだと人目も多いし、俺のことを知っている者もいるよな。
であれば選択として、闘技場で召喚した配下にするべきだろう。しかしサン以外はまだ復活中だし、サンではオーバーキル過ぎる。
ならここは一先ずレフと進み、人が少なくなったら改めて召喚について考えよう。
ちなみに闘技場を去る際には言葉に出さずとも、ちゃんとサンも回収していた。
闘技場では活躍していたので、あとで褒めておこう。
そうしてレフと共にダンジョンを進んでいると、早速モンスターが現れる。
「ギョッ!」
「むっ、こいつは……」
「にゃぁん!」
地底湖から飛び出してきたのは、小柄な青い鱗と人の手足を生やしたサハギンだった。サハギンが成人男性くらいなら、目の前のそれは子供くらいである。
とりあえず、鑑定しよう。
俺はそう思い、小柄なサハギンを鑑定してみた。
種族:リトルサハギン
種族特性
【水属性適性】【ウォーターショット】
「弱いな……」
「にゃん」
おそらく、Eランクだろうか? このダンジョンでの、ゴブリン枠かもしれない。
またサハギンとは違い、槍を持っていなかった。槍適性も無いので、使うこともできないだろう。
それと地上に出てきたが、何だか苦しそうだ。以前見たサハギンはそこまで苦しそうではなかったので、リトルサハギン独自のものかもしれない。
なので地上での活動は、苦手のようだ。見れば動きも鈍い。ゴブリンよりも、弱そうだった。
「ギョッ!」
するとリトルサハギンは、口からウォータショットを放ってくる。
流石に一般人であれば怪我をするくらいの威力はあったが、俺には単なる水鉄砲だ。軽くはたいて打ち消した。
まあ、第一階層目だとこんなものか。
そう思いつつ俺は擬剣パンドラソードを抜き、リトルサハギンを斬り裂いた。当然、一撃で敵は倒れる。
「ギョェッ」
さて、いつもならカード化するところだが、ここでは不味いな。
このダンジョン内は開けており、壁は少ない。加えてまだ入り口付近なので、人も多かった。
中には俺のことを注目している者もいるので、ここではカード化を我慢しておく。
なのでリトルサハギンの死骸は、ストレージに収納した。収納系スキルは、見せても問題ないだろう。
優秀な冒険者などであれば、所持している者もそれなりにいる。
そうして再びダンジョンを進み始めると、普通にゴブリンやスライム、ジャイアントバットも現れた。
どうやら第一階層目では、F~Eランクのモンスターが出てくるようである。
また冒険者たちの目的はリトルサハギンのようであり、中には撒き餌などを地底湖に投げている者もいた。
そういえば、セマカの町では魚料理をよく見かけたな。あれは、リトルサハギンだったのだろう。
リトルサハギンは子供くらいのサイズなので、一尾? 一匹? 一匹でいいか。一匹でもかなりの大きさになる。食べ応えはあるだろう。
ただ気になるのは、人に酷似した手足だ。流石にその部分は、食べないと思われる。町でも見かけなかった。もし並んでいたら、流石に気がつく。
ちなみにリトルサハギンの身長の半分は、人に似た足である。だがそれを無しにしても、魚と考えればとても大きい。
そんなリトルサハギンはダンジョン産なので、乱獲してもいずれは復活する。
セマカの町が再び景気が良くなった要因の一つは、このリトルサハギンにあるのだろう。
あと切断した手足は、どうするのだろうか? まあ、何かしらの方法で処分していると思われる。流石に食べてはいない……はず。
そんなことを考えながらも、俺は無事に第二階層目に続く階段を見つけた。道なりに進んでいたら、普通にあった感じである。
迷うようなら、こっそりカード化して案内役を用意しようと思っていたのだが、しないで済んだ。
まあここは人が多いし、さっさと第二階層目に進もう。
「先に進むぞ」
「にゃんにゃ!」
そうして俺は、ダンジョンの二階層目に足を踏み入れる。二階層目も、同じような光景が広がっていた。
広々とした鍾乳洞型のダンジョンであり、地底湖がいくつも存在している。
ただ第一階層目とは違い、道の本数が少なくなっていた。加えて人の数についても、かなり少なくなっている。
やはり安全に稼ぐなら、第一階層目でリトルサハギンを狩るのが主流なのだろう。
一般人に毛が生えたような冒険者も一階層目ならば、問題なく活動できるはずだ。
故に第二階層目にくる者は、それなりに戦える者が多そうである。
また見れば、地面から巨大な鍾乳石のようなもの、石筍が生えていた。
なのでここであれば視線を遮れる場所もありそうなので、カード化もできるだろう。
そう思いつつ、俺は第二階層目を進み始める。
加えて鍾乳洞と地底湖の組み合わせは、とても見ごたえがあった。観光気分で入ったが、それは正解だったかもしれない。
普段見れないものを見る。これも旅のだいご味だろう。
するとそんなとき、地底湖からモンスターが飛び出してきた。
「ギョギョ!」
「む。サハギンか」
「にゃにゃ!」
現れたのは、以前ガマッセの取り巻きであるキギョが召喚していた、サハギンである。
見た目はリトルサハギンと似ており、青い鱗をした魚に、人の手足が生えている感じだ。
ただその大きさは、成人サイズである。またその手には、槍を持っていた。
俺は再び、鑑定を飛ばす。
種族:サハギン
備考
【水属性適性】【ウォーターショット】
【槍適性】【スピア】
まあ、Dランクモンスターだな。適性には、武器系と属性系を所持している。
もし仮に育成することを考えれば、バランスが良いかもしれない。適性系は、後から手に入れるのは困難だからな。
ちなみに地上に出てきても、リトルサハギンとは違ってそこまで苦しそうには見えなかった。
だが地上は居心地が悪そうであり、動きも少し鈍い。やはり魚だし、水の中の方が得意なのだろう。
とりあえず周囲からの視線も無いので、ここはレフに戦わせることにした。
「いけ、レフ。弱めのダークサンダー」
「にゃぁあ!!」
「ぎょぇぇ!?」
そう命じると、レフは口から小さな黒い雷を放つ。かなりレフとしては手加減したみたいだが、やはりスキル無しの手加減は、難しいみたいだ。
結果としてサハギンは、丸焦げになって倒れた。
力が大きすぎるとその辺の調整が中々上手くいかないのは、俺もよく理解している。
なのでいずれレフにも、手加減のスキルを覚えさせようと思う。
そして周囲から視線がないことを確認すると、俺はサハギンをカード化する。
丸焦げのサハギンが光りの粒子になり、俺の手元に集まってカードへと変わった。
「サハギン、ゲットだ」
「にゃんにゃにゃん!」
俺はいつも通りの台詞を呟き、レフもそれに続く。
サハギンは正直ザコモンスターだが、いくつかコレクションのために集めることにしよう。
そうして俺はサハギンのカードをしまうと、ダンジョンの探索を再開するのだった。




