第四話
深夜・某県廃倉庫
暗い路地の奥へと向かって小走りで進む、結構な時間走っていると路地を抜けた先にのっそりとした建造物があった。
その建造物はよく見ると倉庫であった、金属とコンクリートで出来たその倉庫はかなりの大きさがあり先程よりも暗くなった今では全体を見ることは出来ない。
元々は立派であったろう倉庫は今や見る影もなく今にも崩れそうなほど朽ちてきている。
まさかこんな場所に倉庫があるとは思わなかった、こんな奥ばった所では不便だろうに。
『むしろ此処に建てたからもう使われてないんだろ』
成る程、そう言う考え方もある。そんな話を聞きながら俺は倉庫に近づきシュウジに借りた特典で中を確認するのだった。
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「糞が、手こずらせやがって!」
薄暗い倉庫の中で一人の人物が苛立ちを表すように吐き捨てた。
その人物はこの廃倉庫に居るには余りにも似つかわしくない容姿をしていた。
まず目につくのは神がかった美しさである、髪は星の光を溶かし込んだような銀色で思わず撫で付けたくなるほど艶やかである。
次に目につくのはその両の目である、片側はルビーのような赤色てもう片方はサファイアの如き青色である。
それでいて顔はまるで芸術家が描いたかの如く美しく其の幼さもあって何処か危うい色香を醸し出していた。
立ち振舞いから恐らくは少年であろう。
しかしその中性的な顏も今は怒りに染まっていた、狩が巧くいかなかったのだ。
ドォォオオオン!!!!
その時廃墟にけたたましい爆音が廃倉庫に響いた、驚く事に廃倉庫の扉が吹き飛んだのだ。
「なんなんだよチクショォ!!」
扉は少年の方へ物凄いスピードで飛んでくる。廃倉庫の扉は金属製で三メートル以上あり、それが自動車並の速さで吹き飛んで来るのだ、もはや攻城兵器の域である。
少年の命運は万事休すかと思われたが、しかし驚くことに扉は何か見えない壁のような物に当たり激しい破壊音をたてながら急停止した。
「危ねぇなチクョォが戦車でも来たってのか!?」
少年は飛んできた扉を凝視する、よく見ると扉にはまるで拳で殴り付けたような後がついていた。
「誰だよクソヤロォ‼殺す気か!?」
少年が扉があった方向を睨むとコツコツと何が歩いてきている音がした、入口に舞う砂塵でその人物を把握できないようだ。
「誘拐犯がこんなガキだったとはな」
濛々と舞い上がる砂塵の中から人影が現れる。
砂塵は段々と薄れていきその全貌が露になっていく。
少年は困惑した、その人物が余りにも場違いだったからである。制服を来ているところを見ると恐らく未成年、体格もいたって普通である。
しかしその青年は驚く程に顔が整っていた、まるで作り物の様に見える。だがその顔は怒りに染まり、生きた人である事を示していた。
何より不可解なのはこの人物が鉄扉を破壊したということである、その青年は鞄一つ持っていないのである。
確かに途轍もない破壊音がしたが火や煙が無い所を見るに爆発物を使ったわけでわ無さそうだ。
(素手で殴り壊したのか、、、?)
少年は飛んできた扉にチラリと視線を飛ばす。注視すると扉はまるで粘土に拳で殴り付けた様な跡がある。
少年が扉に意識を向けた瞬間、青年は凄まじいスピードで少年に殴りかかった。
20mはあった間隔は瞬きをする間もなく消え去った。青年は勢いを乗せたまま右手を少年に向けて振り切った。
しかしその拳は何かにぶつかり少年の眼前で静止した。