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賢者勇者が実はラブコメ勇者だった件について

連作の三話目です。


またまた雰囲気が変わります。


強くてニューゲーム状態、ラブコメワールド展開!、主人公が表面上は熱い!



この様な感じですが、よろしければどうぞ

俺が魔王を討伐するまでに掛かった時間は前回の半分、一年ほどで終わった。


一年で済んだ理由は幾つかあり、その根源は俺が外道ではなくなった事だ。


外道ゆえに手段を択ばず、と言えば時短に繋がりそうに聞こえるが、実際は色々策を講じる必要があるので逆に時間が掛かるのだ。


じゃあ脳筋の如く全部真正面から突撃を慣行したのか、と言えばそうでもない。


今回の俺は強くてニューゲーム状態なので、不意打ちで殺した魔王以外の魔王軍幹部たちの実力や潜伏場所を把握している点が時短に大きな要因になった。


前回は見た目で敵戦力が判断出来ないので年老いた一般兵をまずぶつけてみて様子見、とかサクッてやってたからな、マジ外道。


今回は強いやつには俺かレオンが単騎で当たり、密集した雑魚には魔導士部隊の魔法による遠距離絨毯爆撃の後、騎馬部隊で強襲、運良く残った魔物に歩兵部隊を、という戦術を用いた。


怪我人はそれなりに出るのだが、怪我を負った兵で動ける者は自力で退却、動き難いまたは動けないほどの重傷者には控えの新兵や老兵が回収するのを徹底していたので死者がほぼ出なかった。


そして怪我人は女神教から派遣してもらった神官たちが回復魔法でばんばん治療して、集まった解放軍は減る事がない、どころかどんどん増えていった。


国を解放する事に兵が増えていくので解放スピードが加速していき、一年ほどで世界を救う事が出来たのだ。


まあ、前回の俺は一戦する事にアンジェをはじめ、美女美少女を喰ってたので進攻スピードがかなり遅かった、というのもあるな。


更にいえば国を解放する毎にファーラン王国へ帰還してパレード、祝勝会、王侯貴族からの誘い、アンジェをはじめ美女美少女を喰いまくる乱交、えとせとらで兎に角時間を掛けまくったのが、やっぱり一番かも知れない。


ある意味外道勇者って人外染みた存在だったよ、あれをやり切ったんだから。


今回の方が楽だった、と今だから言えるほど、差がありまくった。


その楽だった要因は俺が最初から強かったのもあるが、勇者パーティが揃った事が大きい。


剣聖として覚醒したレオン、魔法騎士であり軍師へ覚醒する事を知っていたアンジェ、攻撃魔法特化で殲滅範囲魔法が使える事を知っていたユーリ、今回説得して同行してくれた聖女アナスタシア、この四人の活躍だ。


前回との大きな違いはレオンが覚醒、というか手に入ったドワーフが鍛え上げた名剣をはじめ各種最高装備を俺が独占しなかったからだろうな。


だってレオンに普通以上の剣を与えたら強さが劇的に上がったし。


前回は自前の騎士剣を召喚時に借りパクしちゃってから安物の数打ちの剣だったしな、あれだと全力出せなかっのだレオンは。


安物の剣は実力の半分も出しちゃうと折れて使えなくなるので、そうじゃなければハイオーガなんぞに相打ちで死亡なんて事にはならなかったはず。


名剣を使ったレオンは魔物だけじゃなく、鋼鉄の鎧だろうが防御魔法だろうが攻撃魔法だろうが全部一振りで切り崩してしまうのだ、相手の戦意と共に。


俺が女神から与えられたチートとしたら、レオンは世界から与えられたチートってやつだな、てかレオンが覚醒してたら俺を召喚しなくてよかったじゃん、とちょっと思ったよ。


レオン以外だと聖女アナスタシアの存在だな。


彼女は最初に解放した国、厳密に言えば滅亡寸前だった神聖ラ・ピュセル国にある女神教の総本山神殿で助け出したまでは前回も一緒だった。


ただ外道を拗らせ始めた俺の邪悪さを感じ取った聖女は解放軍への同行を拒否しちゃったんだよな、うん正解だ。


同行してたら絶対に無理やり喰ってたろうな、何せ凄い美人だし、スタイル良いし、神々しさを穢したくなったろうし。


女神へ求婚した一番の理由は彼女の存在が大きく、喰えなかったからだったりする。


聖女の代わりに女神を所望って、どんだけ外道だったんだよ、俺は。


そんな聖女アナスタシアが俺の説得に応じて同行したので解放軍のモラルは向上し、女神教の支援も最大限に得られたのは本当に助かった。


前回は戦で昂った解放軍兵士たちが解放に向かった村や町の娘を襲ったり、魔物でも人間に近い亜人の女性を凌辱とかやっちゃってたしな、外道勇者な俺が率先して。


聖女の神聖魔法は魔物が放つ瘴気を払うだけじゃなく、昂った気持ちを落ち着かせて賢者モードにする効果があったので本当に助かりました、流石聖女!


と、いう事で魔王討伐までのダイジェストと解放プロセスの前回との違いを説明したが、ここからは一部詳細を話そう。




初戦がどうなったかを簡単に言うと、あの童貞を貰ってくれた村娘の村なのだが魔物に壊滅させられる前に救えた。


勇者召喚から四日後にファーラン王国の王都を出発した俺たち解放軍は、慣れない軍行だった為進攻スピードはすげぇ遅かった。


それは前回でも体験していたので俺はイライラする事もなく、遅くなる理由、十分な休憩が取れずに体力を失い続けるを知っていたからそこを改善していた。


解放軍に参加する兵站部隊を充実させ、衛生兵部隊の新設、戦意高揚のために女性従事部隊というものを発案、同行させた。


兵站を充実する為に馬車には備品と女性だけを乗せ、騎兵以外の兵士は皆徒歩による進攻を徹底、補給拠点を途中で設置してファーラン王国や解放した国々からどんどん補充させ前線へ送り続けた。


衛生兵という制度自体が存在せず、怪我を負えば動けなくなるまで戦い、動けない重傷者は戦後まで放置なんて用兵だったのだ、この世界。


戦争自体が国同士の小競り合いや内戦程度だったので、兵を死なせない重要性を理解していなかったのだ、下手に回復魔法なんて手段があったから余計に。


なので一時的な戦力低下は無視して怪我人を回収させるのを徹底、兵を消耗しない用兵を取り入れた。


衛生兵は普段兵站部隊に組み込まれており、戦い慣れしていない新兵と戦意はあれど動きが鈍い老兵を衛生兵に回し、無駄を無くして新兵に戦を経験をさせるという一石二鳥の改革だった。


そしてもっとも異色で拒否反応を示したのが女性従事部隊を作った事だ。


基本的に戦場は男の独壇場で女が介入する余地なし、がこの世界の常識、まああっちの世界でも似たようなものか、なので提案した瞬間に一度却下された。


だが俺は知っている。


戦争というのは人を悪魔に変える化け物であり、悪魔、外道になった男は女性を喰い物にする事を。


だったら近くに女性がいると余計ダメなのでは?と思うかも知れないが、日本と某国で未だに問題視されている従軍慰安婦って忌まわしきものがあったよな、ようはあれをクリーンにしちゃったのだ。


おさわり厳禁だけど、綺麗なお姉さんが目の前で炊事洗濯、配膳までしてくれちゃうってなればやる気が出るだろう、男なら。


女性従事部隊の基礎はファーラン王国をはじめ各国の召使いたちから抜擢した。


ここで俺が使った手なのだが、出来れば他国を解放するのに自国の兵を出したくない、なんてこの期に及んで考えちゃう王侯貴族を丸め込むプレゼンだ。


兵がダメだったら新設する部隊に若い女性を回してくれない?ちゃんと貞操は守るから、ってな具合だ。


外道に娘や知り合いの未亡人を宛がうほどの男尊女卑が横行している世界なので、全く出さないのは外聞に関わるから女性なら出しちゃえ、って感じの落とし処を提示された王侯貴族たちはすぐに了承した。


まあ、軍部に関しては実際に体験してもらってその良さを理解させたら一発だったよ、やっぱ脳筋は単純でいいね!


蛇足だけど、この女性従事部隊だが徐々に一般公募で増えていき、解放軍に協力したいけど若い女性だから力になれないって少女たちが加わって結構な数になった。


そして増えた彼女たち女性従事部隊には当時この世界にはなかったメイド服を着せて服装を統一、魔王討伐後も召使いが着る服はメイド服っていうモラルハザードを起こしたのは想定外だ。


さておき、このように解放軍を改善する為に俺は王侯貴族たちと舌戦を繰り返して勝利し、軍部を説得したのだ。


勝利と説得の裏には前回で得た知識というか彼らの裏事情に精通していたので、それらを大いに活用したから成しえた事だ。


勝ち過ぎないよう加減するのにかなり苦労したけどな。


そんな俺たちだから遅いのは遅いが、スピードは一定だった為に村へ到着したのは魔物が襲撃を開始した直後だった。


なお、アンジェだが自らの意志で解放軍に参加し、現在は俺とレオンの傍で馬上の人となっていた。


「そろそろ今日の宿泊予定地の村に到着だな」


「久しぶりにテントじゃなくて屋根のある場所で眠れるのは嬉しいわ」


「いえ、アンジェリカ様。村でも私たちは簡易幕舎ですよ」


「ええ!? だって家があるのよ? それよりもアンジェと呼んでくれないの?」


「いやいや、アンジェリカ。今は軍行中だから公務中扱いだ、そういう場合は愛称は困るんだろう?」


「まあ、根に持っていたなんてレオン様は器が小さかったのね」


「はは、手厳しいな。ん? どうしたんだアカギ? 速度を上げて」


「嫌な予感がするんです」


「どういう事ですか?」


「この時間なのに煙が見えないのですよ」


「炊事の煙か! まさか村に何か。全軍全力前」


「待ってくださいレオン様! それよりも騎馬隊だけ先行して他は警戒しながら進攻しましょう」


と、言う感じで俺を含めた数十騎の騎馬だけが先行して村の木製バリケードへ殺到していた魔物の群れを蹴散らし、後詰めの歩兵で殲滅して村を救った訳だ。


この時俺とレオンはどこぞの無双キャラか!と言いたくなるような獅子奮迅の活躍をし、アンジェは魔法騎兵として戦った。


前回は到着時点で壊滅した村を発見し、唯一地下倉庫に隠れていた村娘を保護、敵討ちの懇願で寝屋へ、との流れだったが、今回はそういう事はなかった。


ちょっと残念に思ったのはアンジェにも内緒だ。




その後神聖ラ・ピュセル国に侵攻していた魔王軍を千ほどの解放軍で打ち破り、女神教の総本山神殿へと辿り着き、聖女アナスタシアと会う事となった。


彼女は女神教のトップ、教皇の階位ではないが、女神の声を聞く為の特別役職を与えられた存在。


女神教では一応教皇よりも重要視されているのだが、まあ、どんな世界でも歴史重ねた宗教は、ね。


前回女神に会った時に聞いたのだが聖女へ声を届けたのは百年以上無く、ただの名誉職ぽい称号なんだと、聖女って。


だからこそ、教皇をはじめ女神教のトップ陣の腐敗は酷かったりするのだが。


ま、そんな汚染物質の話は今はパスしてアナスタシアを説得した時の話だ。


「初めまして勇者様。此度は民の為、世界の為に立ち上がって頂いて感謝します」


公の場でのアナスタシアはそれはもう神々しい雰囲気を醸し出し、彼女が女神だ、と錯覚している信者が多いのも納得する女性。


まあ、プライベートではおっとりお姉さんだったりするからギャップ萌えがぐっとくる十九歳の美人さん、それが聖女アナスタシアだ。


「いえ、私は女神から与えられた任を遂行しただけ、そして自身の意志で戦ったまでですよ」


「まぁ」


と、公の場でも隠し切れないおっとりお姉さん成分が漏れ出ちゃう可愛い人、それでいいのか聖女様。


なお、前回の俺は彼女の見た目と雰囲気、声にやられて舞い上がり「あなたにそう言って頂いた事が何よりの褒美です」なんて言っちゃったから警戒されたんだよな。


その後も外道が漏れ始めて視線が豊かなお胸様に向いたりしてたから同行拒否になった、という感じであの時は本当に青かったよ、俺。


そんな感じで好印象を与えつつ、レオンやアンジェを交えて数十分会談し、同行を願い出て了承して貰ったのだ。


聖女が同行に同意してからも一悶着、腐敗物質たちとのやり取りが面倒だったが、敬虔な信者たちが魔法治療兵として参加する事となった。


これ以降、解放軍は戦死者が三桁に届かない程度で済んだのだから本当に助かりました。


そして次の国に向けて出発するのだが、最初はアナスタシアも信者たちと一緒にいたのだが、ちょっとずつ俺の傍で行動するようになり、気が付けば俺のパーティメンバーになってました。





何でか分からないがアナスタシアは俺が気に入ったようで、ビッチってほどではないけどナチュラルに俺へ接近してくるものだからアンジェがやきもきし始めたんだよな。


後から聞いた話だと、まだこの時点ではアンジェとレオンは婚約解消しておらず、それでも俺に近寄るおっとり美人のお姉さんの存在がもやもやの原因になった、だそうな。





残りのメンバーである魔導士ユーリが解放軍に従軍するようになったのは、三つ目の国を解放する作戦からだ。


彼女が合流したのは兵站の為に解放軍へやってきた文官魔導士アレンへ同行してたから、が表向きだ。


裏の事情で言えば、彼女の実力を知っている俺が手を回してアレンを呼び水に呼び寄せた、って訳だがな。


そうやって合流したユーリなのだが前回で知っていたアンジェとの繋がり、ファーラン王国へ亡命してからの子弟関係を口実に俺の近くで行動してもらう事になった。


アレンの傍を離れたくない、彼と会う時間がないのが嫌だ、と言っていた彼女なので、もちろんアレンは手を回して兵站部隊に参入させてちょっとした責任者に抜擢した。


アレンの抜擢についてはユーリ獲得の序なのだが、彼の事務能力の高さも要因だったりする。


さておき、そのユーリなのだが天才魔導士、俺の中では天才魔法少女(実年齢二十歳、でも見た目は十五歳)の攻撃魔法は本当に凄かった。


どれだけ凄いか説明するのに此度の解放戦線で彼女が放った一発の魔法でほぼ戦が決まった、と言えばお分かりいただけるだろうか?


あれは解放軍初めての大規模戦闘、敵魔王軍おおよそ一万に対して解放軍二千、実質戦闘要員千の戦い。


俺とレオンが一騎当千の活躍を見せたとしてもまずい状況だったのだが、ここには俺たちの超兵器、魔法少女ユーリちゃんがいるから俺だけは安心していた。


「流石にこれは厳しいな、ユウジ」


「一応公の場ですよ、レオン王子」


「そういう場合じゃないと思うな、ユウジ様」


「勇者様だったら大丈夫よねー?」


「いえ、アナスタシア様。私ではなく、ここは彼女にやってもらいましょう」


そんなセリフと共に俺が暇そうにしていたユーリを一瞥すると、レオンたちの視線が彼女に集まった。


流石にその状況で無視するほど豪胆ではなかったようで、彼女はちょっと焦っていた。


「な、何?」


「ユーリさん。全力で撃ちたくありませんか?」


「え? いいの?」


「ええ、もちろんですよ。今まで我慢されていたのでは?」


「・・・うん」


「でしたらどうぞ、ご存分に」


「分かった」


「ちょっと、ユウジ様? ユーリ先生に何言ってるの?」


「まあ、見ていてください」


この後ユーリが放ったのは隕石群を降らせる超絶殲滅範囲魔法であるメテオストライク。


草原の国と謳われる要因となったこの国の特徴である大平原に轟音と共に十六個の大きなクレーターを作り出した隕石群は、一万の魔物の群れを七千ほどに減らし、戦意を失わせた。


戦意と指揮系統を失った魔王軍を、俺とレオンの無双と解放軍によって蹂躙、壊走させた。


なお、メテオストライクを撃った後のユーリはそれはもうすっきりした表情で、俺と顔を合わせた瞬間に笑顔を見せたのだが、前回から合わせてもこれが初めて見た彼女の笑顔だった。





メテオストライクが撃てた事がよっぽど嬉しかったのか、この戦以降ユーリは正式に解放軍に従軍する事になり、魔導士部隊部隊長にして勇者パーティメンバー入りした。


前回と違って無理やりじゃなく心置きなく攻撃魔法を使わせてくれる俺に対してユーリは懐き始め、それを見たアンジェはアナスタシアの事もあって更にやきもきさせていく。


この時のツンデレ具合といったらご飯が三杯はいける可愛さだったのだが、この時はまだレオンの婚約者。


俺がアンジェとの愛を勝ち得たのはレオンと彼女の母国、剣と魔法の国ファーマギナス王国を解放した後だった。





ファーマギナス王国解放戦の話をする前に、俺の予想外だけれども俺とアンジェの関係、だけじゃなく、アナスタシアとユーリとの関係をも変えていく出来事を話しておこう。


それはアレンの事で、あえてこれから彼の事はアレンくんと呼ぶ事にするが、実は彼がこの世界の主人公なのでは、という事態に陥った話だ。


彼が解放軍に従軍するようになって最初の内は、大した魔法を使えない彼を馬鹿にする者が多かった。


元々王城で務めていた時も魔導士というより文官、内務での勤務採用だったので魔導士としては期待されていなかった。


もちろん平民出という事もあり、同僚や上司からも馬鹿にされていて、更に彼女が天才魔導士のユーリってのも拍車をかけて冷遇されていた。


ただし彼の事務能力の高さだけは認められており、便利道具扱いとはいえ虐めやクビにならない要因がそれだ。


そんなアレンくんが従軍した結果、兵站効率が劇的に向上し、嫌味を言う同僚や上司もいない、そして自分たちの軍行を楽にしてくれると人気が出始めたのだ。


特に女性従事部隊から。


ここまで言えばもう理解出来たかと思うのだが、想像通り、彼のラブコメ生活が始まったのだ。


不自然なほど彼の周りには女性、部隊特性から若い少女たちが集まり、王城では冷遇されてても王城勤めの平民の星たる彼を取り合う構図になっていく。


こうなると男性陣は良い気がしないはずなのだが、彼の人となりと能力が男性陣からの受けも良い。


唯一面白くないのは彼女である本妻ユーリだけで、アレンくんはそんな彼女のやきもちに苦労しながらも集まってくる少女たちにどきどき、ちょっとエッチなハプニングもあるよ!となるのだ。


そう、よくあるラブコメワールドの出来上がりだ。


これらを見て俺は「これがラブコメハーレムか。前回の俺の外道ハーレムといい、流石異世界」と思わず呟いちゃうぐらい余裕があった。


なんせこの時点では俺に直接関係ない、対岸の火事だったしな。


だけどユーリが俺の勇者パーティメンバーであるのだから全くの無関係でいれるはずもなく、俺のところに来る度にアレンくんのラブコメハーレムの愚痴を言い始めたのだ。


そんな彼女を慰めるのが俺の役目、そりゃレオンは一応アンジェの婚約者だからダメだし、アンジェやアナスタシアは女性だから同情での慰めだからユーリも心が晴れきれないので仕方がなかった。


ユーリが俺に懐いていた、というのも大きいだろうけど。


そんなアレンくんラブコメハーレムだが等々一線を越える出来事、肉体関係が発生した事で急展開を迎えた。


「・・・ユウジ」


「何があったのですか?」


それは六つ目の国を解放し、次はいよいよファーマギナス王国を、その英気を養うという意味で初めて大規模な祝勝会を行った夜の事、涙を流しながら俺の寝所にユーリがやってきた。


ぽつぽつと話す彼女の言葉から察するに、どうやらアレンくんも酒に酔ってやっちゃったようだ、しかも複数の乱交というラブコメのコメが消えちゃう展開を。


いやぁ、彼も随分我慢していたと思うぞ、ユーリという彼女が居る手前な。


だからこそのラブコメワールドだったのだが、手を出しちゃったらもうコメディではなくそういう話になっちゃうから笑えない。


いや、まあ、俺の場合は前回外道勇者をやっていたのだから笑う資格なんてそもそもないから今回は傍観に徹して、ユーリを慰める程度に留めておいた。


散々無理やり喰いまくって使い潰した前回の事もあり、彼女に同情、いや、懺悔の意味もあったのは否定しない。


けど、今目の前で涙ながらに語る彼女を見ていたら、それとは違う感情、あってはならないけど否定できない想い、ユーリを愛おしいと思う気持ちが大きくなってきた。


だからただ黙ってユーリを抱きしめた。


この時だけはアンジェへの愛情を上回っていたのを否定出来ず、後で悶々としちゃうのだが。




この後ユーリとアレンくんは正式に別れ、彼女は吹っ切れたかのように俺にべったり懐くようになった。


この時に俺も交えて別れの儀式を展開してくれたのだが、これって勇者の仕事じゃないと思うのだが、そこのところどうだろう?


それはさておき、これが切っ掛けとなった、というかアナスタシアも遠慮しなくなり、聖女という立場を貶めない程度だが俺への積極性を増した。


そうなると増々面白くない、というか自分の感情に気付き始めたアンジェも積極的になって来て、それを見て苦笑するレオンの姿が増えた。


あれぇ?


これ、ラブコメワールドだよな。


気が付くと、アレンくんじゃなくて俺がラブコメ主人公になっていた、勇者なのに。


なおアレンくんのその後なのだが、それからもユーリを除いたラブコメちっくなハーレムが続き、魔王討伐後はファーラン王国へ帰還する事なく、俺の部下として働きながらラブコメ風ハーレムも継続した。


最終的にどうなったかは語るつもりはないが、アレンくんよ、俺みたいにピチュンされないよう気を付けろよ、とだけ言っておきます。





「ユウジ、剣を取れ」


「分かりまし、いや、分かった、レオン」


剣と魔法の国ファーマギナス王国とは、数百年前に建国された強き者であれば種族を問わない、というこの世界では一風変わった王国だ。


建国の祖と言われる王は剣一つで成り上がったファーラン王国出身の剣士で、後に剣聖と称された傑物だ。


そしてその伴侶たる王妃は嘗て魔女と揶揄された魔導士で、辺境に居城を構えて周辺国家から恐れられていたのだが、剣聖に討伐されて妻となった女傑。


二人の傑物によって建国されたこの国は、人間たちが住まう平原と人間たちが亜人と呼ぶ妖精族や獣人族が住まう辺境との境に領土を構えた。


建国以後数百年の間、辺境に住まう者たちからの侵攻を阻み続けた人間たちの防波堤として君臨し続けた。


だが此度の魔王軍侵攻に際しては防波堤となりえず滅亡したしまうのだが、その要因は人間たちの国々の所為だ。


魔王軍の宣戦布告を受け、亜人と呼ばれる種族の内、妖精族である森の民エルフと大地の民ドワーフの国だけは人間側に付いた。


亜人とされながらも彼らは人間の国々と取引き、特にファーマギナス王国との関係が強かったゆえの選択だったのだが、その所為で魔王軍がまず攻めたのは彼らだった。


そんな隣人の危機に対してファーマギナス王国は各国に対して救援を提案するが、人間至上主義が当たり前である国々は首を縦に振らず、単身救援に向かった。


その救援部隊を率いていたのがレオンであり、彼に付き従った数百の兵は魔王軍と勇敢に戦い、そして散っていった。


何度か魔王軍を退けるも支援物資が段々と届かなくなり、そうなってくると一騎当千の傑物とはいえ戦えるはずもなかったからだ。


支援物資が届かなかったのは各国がまだ対岸の火事、いや、この機に亜人が滅べばと考えた王侯貴族たちの決定による事が大きい。


ファーマギナス王国一国だけでは戦線を維持する事叶わず、戦線が崩壊し、レオンも大怪我を負って撤退する事となった。


母国に落ち延びたレオンだったが、魔王軍の次の進軍先はファーマギナス王国。


この時点でやっと人間至上主義国家の中で唯一、親戚筋であるファーラン王国だけが救援部隊を派遣していた関係で、レオンとその婚約者のアンジェだけがファーラン王国へ亡命した。


もはや戦う力などなかったファーマギナス王国はこうして滅亡したのだ。


そしてその亡国の地に唯一の正当王位継承者であるレオンが足を踏み入れ、勇者アカギの協力の元、解放するに至ったのが昨日の出来事だ。


天には月が輝き、二人の剣士が相対している。


ドワーフ族が鍛えた中でも傑作中の傑作の名剣、折れる事なき剣デュランダルと名付けられた騎士剣を持つ青年剣士。


女神が与えたとされ、女神教総本山神殿の地下に封印されていた聖剣、勇を選定せし剣カリバーンを持つ魔法剣士。


幾度となく戦場を並び立った二人の剣士が、今、雌雄を決しようと対峙していた。


おそらく二撃はなく、一撃で決まるであろう二人の腕は人間最強を決める戦いでもあった。


などと語ればそれっぽく聞こえるけどさ、これって俺がアンジェと付き合うのを許すっていう儀式なんだろうな。


だよね?


と、真剣な顔をしつつも、真っ当に剣で勝負したら絶対に勝てない、と最近思い始めてきたレオンの戦いぶりを思い出し、戦々恐々としていた。


だってさ、この間誤射というか、気合いが入りすぎて巨大すぎた俺の真空の刃がレオンに迫った時、彼は苦笑しながら一振りで霧散させたんだぞ。


その一撃を受けて魔王軍の大幹部の一人が縦に真っ二つだった、やつをだぞ?


序に言えばトリガーハッピー状態になったユーリの攻撃魔法が飛んで来た時も、振り返らず無造作に背後に剣を回しただけで霧散させたんだぞ?


俺なんて必死で逃げて、それでも避けきれないものを剣で必死に砕き、それでもダメなやつはアンジェの防御魔法で防いでもらったのに、だ。


明らかに剣士、というか戦いという一点で見た場合の実力はレオンの方が上なんだが。


殲滅力は俺の方が上なんだろうけど。


などと女々しい事を考えていても仕方がない。


俺はレオンと真剣に向き合う、そう決めたんだ、そしてそうしてきたんだ。


それにアンジェが好きだ、その気持ちに嘘は吐きたくないし、逃げたくもない。


だから、全力でぶつかる、それだけで良いはずだ。





結果だけ言えば、やっぱり俺とアンジェの仲を許す為の儀式だった訳で、レオンは王位継承権を放棄してただの剣士になった。


継承権の放棄、それはアンジェとの婚約も破棄、いや無効化された事を意味し、各国の王が揃う中で彼は堂々と宣言した。


この時初めて正式にファーマギナス王国は滅亡した事になり、その領土は隣国であり先に解放していた国に併合される事となった。


その国とはマージナル王国という国で、前回では俺によって悲劇の最後を迎えたシスコン王子と妹姫の国だ。


今回彼らと大きく関わる事はなかったのだが、隣国だった関係でレオンとシスコン王子の間で話し合いはあったらしい。


解放の順番を早めて欲しいという要求に対してレオンはファーマギナス王国との併合を要求、という密約をしていたようだ。


その話を聞いたシスコン王子は最初、可愛い妹を第二王妃にと狙っていると勘違いしていたのだが、俺とアンジェの関係を知って誤解と分かり、更に継承権放棄宣言を受けて倒れた。


なにせ小国だったとはいえいきなり二国分の領土を持つ大国の王になっちゃったからな。


ちなみになのだが、レオンと妹姫は結婚して俺の国に住んでますよ。


この結婚の時にシスコン王子改めシスコン王が一悶着起したのだが、それは語らないでおこう。


あ、俺とレオンの対決結果だが想像通りに俺のぼろ負けだったさ。





「くっ、まだ、やれる」


「いや、十分だ、ユウジ」


「だが、まだ」


「十分なんだ、ありがとう、ユウジ。これで決心が付いた。安心して君にアンジェを任せられる」


「・・・レオン」


「絶対に幸せにしてやってくれ」


「もちろんだ」


「まあ、アナスタシア様やユーリも、か?」


「うぐっ」





レオンの王位継承放棄宣言の後、俺とアンジェは正式に付き合う事となった。


後ろを押してくれたレオンには一生頭が上がらない気がするな、俺。


後ろを押されたのは俺じゃなくてアンジェの方な。


俺の事が好きだと気付いていたとはいえ、長年婚約者として連れ添ってきたレオンの事もあり、俺の告白も断られた。


ただし、レオンやアナスタシア、ユーリという勇者パーティ勢ぞろいの場面での告白という、ある意味馬鹿な告白シーンだった為、すぐさまレオンからのフォローが入り、アンジェも頷いてくれたのだ。


だってさ、俺がアンジェを愛しているのはもはや公認されてたんだし、雰囲気がちょっとでもあれば直ぐにでも、いな、ある意味最高の場面だと思ったのだ、その時は。


後で聞いた話だが、彼女は告白を受けて嬉しかったが、同時にふざけるな、とも思ったそうだ。


デスヨネー。


なお、この告白シーン、付き合う事になりました、の直後にアナスタシアとユーリも即座に俺に求婚してきましたさ。


はっきり言えば二人に対して愛情を感じていた、アンジェの次ぐらいに。


あくまでもアンジェが一番だったので、断った、と言えたらいいのだが、アンジェの前で嘘を吐きたくない俺の回答はアンジェを一番愛してる、だった為に逃げれなかった。


いや、逃げるつもりはないけどさ、前回から合わせて三年以上の想いが実った瞬間だったし、アンジェを優先したいじゃないか。


一番じゃなくても愛していてくれているなら、なんて事を言われたら男なんてコロですよ、コロコロ。


その雰囲気を悟ったアンジェは激怒寸前だし、レオンは苦笑していたのだが、アンジェが折れてくれた。


というか器の大きい所をなのか、それとも貴族としての血のなせる考えなのか。


権力を持つ者が複数の女性を娶る事が当たり前、という考え方だ、流石異世界。


こうして外道じゃなくなったけど賢者な勇者やってたらハーレムを作る事になりました。


さ、三人だけじゃハーレム言わないよな?





魔王討伐までの途中経過はもういいか。


ならば魔王討伐戦を語ろう、と行きたいけど今日はもう勘弁して欲しい。


だって今日はやっとアンジェと、大切な人と想いが繋がった日なのだからそっとしておいて欲しい。


たぶん、長くなると思うから、アンジェの次はアナスタシアやユーリが待ってるので。

お読みくださってありがとうございました。


まだだ、まだ終わらんよ!

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