勝負
「それでさぁ放課後にやりたいんだけど、観客は少人数がいいんだよね、僕と君とそれに真由美もかな?」
「なんで私が?」
「だって審判必要だし、君は多分色々知ってるから」
「そう、別にいいわよ? 引き受けてあげる」
「なぁ、ヒナもいいか?」
「あぁ、許嫁ちゃん? いいよ?」
「感謝する」
ここでチャイムがなり会話は一旦終了となり、放課後まで、また同じ会話がされることはなかった
「で、なんで仁也と葛葉がいるんだよ」
「いやー、武尊に誘われたから」
「南川はいないんだな」
「あぁ、気に食わないからって言って帰ったよ」
「そうか…」
「そろそろ始めますよ」
蓮也と仁也が話していると少し遠くから真由美が大きく手を振り合図をしてくる
(ああしてると子供っぽくてかわいいのにな)
「今、蓮也、真由美のこと可愛いって思った?」
気づくとすぐ側にヒナがいてじーっとこちらを見ている
「……びっくりした、そうだな、普段大人っぽい分あんな行動みると可愛らしく見えるな」
「……蓮也は、そっちの方が好きなの?」
「別に? 俺はその人に合っていれば何でも好みだぞ?」
「………ん、わかった、頑張る」
ヒナは何かを決意したように手をグーにして意気込んでいる
(ヒナのこの行動も可愛らしいな…)
日も陰り涼しい風が吹いている、会場は室内だが換気の為上の方の窓を開けているので少し肌寒い
「じゃあ、ルールはどうする?」
「武器の使用は禁止、ただし自己強化はあり、体術のみの試合、どちらかが戦闘不能または降参した場合に決着する、これでどうかな?」
「それでいこう、北岡頼む」
「はい、それではこれより戦闘を開始します、…始め!」
真由美の言葉と同時に蓮也と武尊は動き出す
最初に攻撃したのは武尊だった、蓮也の腹部を狙った蹴り、それを蓮也は避けるのではなく左手で受ける
(……結構重いな、隙があるように見えてこっちの攻撃をかなり警戒してるな、一筋縄ではいかなそうだ)
「随分と余裕ぶってるけど、大丈夫?」
武尊はニヤリとわらいながら話しかけてくる
「そんなに余裕ではないが、大丈夫だ」
今度は蓮也の攻撃の番だった
武尊は自己強化を使っていなかったので蓮也も使わずに距離を縮め顔に掌底を打つ
「……!っやるね…」
(かすりもしないか)
「完全に避けられるとは思わなかったよ」
「避けるのは得意だからね!!」
武尊はそう言いながら蓮也の顔目掛けて高く飛び膝蹴りの体制に入る
(これまた大きな技を、隙は……ないか)
蓮也はそう判断すると大きく後ろに下がり距離をとる
そうすると、武尊は着地と同時に自身の足に自己強化を付与しかなりのスピードで蓮也に突撃してくる
「うぐ…早いな」
「まさか、受け止められるとは思わなかったな…!」
蓮也も武尊が突進してきた瞬間自分の腕に自己強化を付与し武尊の攻撃を防いだ、しかし相手の方が力が乗っているので蓮也が押し切られそうだった
その時、武尊は蓮也の耳元である言葉を囁く
「ーーーー」
「…………!!」
蓮也はその言葉に驚いたが、力を抜き流すようにして武尊と距離をとる
「すこしの不意打ちにはなるとおもったけどなぁ」
「あのぐらいじゃあ、まだまだだな」
蓮也と武尊は同時にニヤリと笑う
「生憎と長期戦は好まない主義でね、ことまま押し切らせて勝たせてもらう」
武尊はそう言うとまた突進をしてくる
「奇遇だな、俺も長期戦は好まない、けど、勝つのは俺だ」