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セブン  作者: 明るいあかり@ユリ
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14/18

ⅩⅣ

外を目指して、走る。

ここではない『外』を目指して、走る。

まだまだ敷地の中。

自由は程遠い。

なのに、エータは足を止めた。

「待て、待ってくれ!」

途切れ途切れに息をしながら、エータはセッテの腕を掴んだ。

「どうなされたのです、まだ敷地の中ですぞ!」

焦り。

その感情が、軍人であり体力もあるセッテの呼吸を乱す。

だが、エータも焦っていた。

「ここ、シークのお気に入りの場所なんだ!」

「ここ……?」

逃げることしか考えていなかった二人は、この時冷静になった。

今、そんな二人を包む、この場所を。

この景色を。

エータはシークに見せたいが為に、焦っていた。

時間がない。

追われる身として、焦ったのだ。

「…薔薇園、ですか。」

それは、古い記憶。

幼きセッテとシークが遊んだ、薔薇園。

『身分は違っても、いつか本当に結婚ができたらいいのに』

セッテが強く、そう願った場所。

そこがシークにとっても思い入れのある場所だとすれば…。

郷愁に浸りつつ、セッテはシークへの想いを、より強く募らせる。

「少しだけでいい。この景色をシークに見せてあげたい。」

「……わたくしも、お嬢様とお話がしたいです。」

そんな男の気持ちを、エータはすぐに理解する。

シークの兄として、妹を愛する男の気持ちを、理解する。

「へ、オレは邪魔ってか?いいぜ、今度はオレが眠ってやる。」

それは一瞬だった。

カクン、とエータの首が落ちた。

そして、彼女は目を覚ます。

「…?あ、れ?ここ、ワタシ??」

「お嬢様…!」

「セッテ??…セッテ聞いて!」

長い長い眠りの中。

シークは一度だけ目を覚ましていた。

兄が母親を殺そうとした時、突発的に目を覚ましていた。

虐待の記憶を、無意識に消そうとしている彼女にとって、それはショッキングな出来事であった。

現在の状況を理解することも忘れ、シークはセッテにすがった。

「大変なの、お兄様を止めて!お兄様がお母様をナイフで…!」

起きてみたら、兄が母親を殺そうとしている。

起きてみたら、屋敷の外にいる。

そんなことよりも、シークは母を心配した。

「落ち着いてください、お嬢様!大丈夫です、大丈夫ですから。」

「そう、なの??よくわからないけど、貴方がそう言うなら…。」

今のシークには、目の前のセッテしか頼れる人物がいない。

故に彼女は、男の発言を信用し、安心した。

だから、気になった。

安心したからこそ、今、自分が置かれたこの状況が、気になった。

「何でワタシは眠ってたの?何でお外にいるの?こんな真っ暗なのに…。」

そして、彼女は、

「わぁ…!」

今を、感じる。

「薔薇…!」

今だけを、感じる。

他のことは忘れて、美しいモノだけを見る。

「覚えてる、セッテ?薔薇は色で花言葉が違うんですって。二人で図鑑片手に全部毟り取っちゃって怒られて…。」

「はい、よく覚えています。」

シークの笑顔が、昔から変わらぬ笑顔が、セッテには愛おしい。

その笑顔を守りたかった。

今までは守れなかった。

これからは、守る。

男の決心は、強固なモノになる。

「…お嬢様、時間がありません。だから伝えたいことだけを伝えます。今、お嬢様にはこの状況が飲み込めないかと思います。ですがもし、もし全てが上手くいったら…。」

心臓が、高鳴る。

手に汗が、滲む。

「ここじゃない、どこか遠くで、二人…いえ、エータ様と三人で暮らしませんか?」

それは、求婚に近かった。

身分が低くても。

頼りなかったかもしれないけど。

これからは隣で、ずっと、守る。

彼の思惟が、今までの想いが、その言葉には含まれていた。

「え、…?」

セッテの想いを、シークがどこまで理解できたのかは定かではない。



だが、



彼女は笑った。



『これから』を想像し



『今まで』とは違う未来を夢見て



笑った。



「それ……凄く面白そうだわ!そうなったら、お外にも遊びに行けるわ!」

「えぇ、毎日、遊びましょう。」

「いいの!?……誰にも怒られない?」

「もちろんです。」



何もかも忘れて。



遊びつくせたら。



「そんな幸せなこと、本当にいいの?」



シークの言葉を否定するかのように、それは鳴った。

軽快な音が、園に響く。

耳心地が良いからこそ、夜に響き渡りやすい音だからこそ。

認めたくなかった。

その音を認めたくなかった。



弾丸を放つ音が、園を穢した。

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