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The shadow which wriggles 「動き出す悪意」

恭弥くんが落ち着いたので、今週の投稿を進めます。


「はぁ、はぁ・・・・・・ってことになるので、もう、二度と、やらないで、くだ、さいね」

「は~いっ」


 息絶え絶えにして美夏が市長に説明する。相変わらず俺には何が起こったのかよく覚えてないが、あと少しでメアとキスできたというのに・・・・・・ちょっとだけ――――


「恭弥!?もう二度と妄想しちゃだめよ!!いいわね!?」


 美夏、勘のいい奴め。


「いや~こんな面白い人、久しぶりに見たよ!恭弥くん、また見せてね」

「だから市長!やめてくださいよっ」

「せやな。ワイらの喧嘩が終わるまでちょっと待ってて下さいや。こんな変態キモ妄想野朗やったらいつでも貸してあげますから」

「おっけ~!じゃあまたね」

「おいっ!?本人のあずかり知らぬところで勝手に取引をするな!っていうか俺はキモくねえ!!」

「って市長、帰らないで下さいよ!」

「ん?なんで~?」

「恭弥に訊きたい事があるんじゃないんですか?」

「無視すんなよー!お願いだから無視だけはやめろ!!」

「大丈夫だよ。知りたいことは識れたし」

「?」


 何を言っているのかいまいち分からなかったが、本人が納得しているのならいいのだろう。俺は無視され続けて全然よくはなかったが。


「では、今度はこっちから質問してもいいですか?」

「どうぞ~。メアちゃんを捕らえる作戦に協力して欲しいってこと以外だったら大歓迎だよ」

「えっ・・・・・・」

「おろ?どうしたの美夏ちゃん。そんなにおかしい事かな」


 市長の一言に場が静まる。須藤さんの私怨で嫌がっているように見えたが学生会は協力的だったし、警備隊も協力的。それに対し市長からは明確にダメだと言われたからだ。

 美夏が怯んでしまったので、俺が言葉を引き継ぐ


「えっと、市長は俺たちとは協力したくないということですか?」

「ううん。正確には協力できないってところかな」

「それは、一体・・・・・・」

「前提条件として私は学園都市の市長であって、市長っていうことはこの都市のことを一番よく知ってる人間である。このことは頭にあるかしら」

「それはもう」

「なら、研究区画という場所がどういう場所で何の実験をしているかっていうのも知ってるのよ――――ね~ヒメル」

「―――――っ!!!?」

「どうした、ヒメル!?」

「安心して。あなたのことは主任にも、恭弥くん達にも言わないから。あくまで私は『傍観者』だからね」

「そ、そう・・・・・・ほんと?本当に本当?」

「うん!本当に本当だから」

「一体何の話を・・・・・・」


 そういえばヒメルと最初に会った時、

 ――――う、嘘だ!!いっつもヒメルを狭い部屋に閉じ込めて、実験動物みたいにしてたもん――――

 そのことに関係しているのか?いくら考えても知ってる人たちが話してくれないと分からないからな。ここは詮索は入れないでおこう


「つまり、市長は傍観者やからワイらの喧嘩には手え出せへんと。というわけですかい」

「ちょっと違うかな。私はね、君たちの事情と研究区画の彼らの事情の両方の事情を知っているのよ。その事から考えて君たちに肩入れはしないでもいいかなって思ってね」

「あいつらにどんな理由があるんか教えてくれへんと・・・・・・」

「ダ~メ」

「やっぱか。せやけど、どんな理由があろうとワイらの仲間がやられたんや。市長が邪魔しても、落とし前はつけさせてもらうで」

「そこは君たちのご自由に~。私はあくまで傍観者。どちらの味方でもないからね~・・・・・・じゃあ、そういうことで、さよ~なら~」


 スクッと立ち上がり手を振りながら出て行ってしまった。言い逃げられた形だが、ピシャっと引き戸が閉められたところでようやく気を抜くことが出来た。思わず溜息がこぼれる。


「なんちゅーか・・・・・・すごいとしかいえへんな」

「ああ・・・・・・完全に市長の独壇場だったな」

「ちょっと、疲れたわ。私、なんか飲み物持ってくる」

「ワイはコーラで」「湯冷まし」「じゃあ、仁君と同じで」

「はいはいっと・・・・・・」


 美夏が部屋から出て行った。そしてヒメルが楽しそうな顔で話し出す。


「それにしても、さくらって面白い人だったね~また会いたいな」

「ワイはもう会いたくないわ。掴みどころがないっちゅうか、逆に掴まれてるっちゅうか・・・・・・あの感じが苦手や」

「ええ~なんで?」

「仁って主導権を握られるのが嫌いだからな。なんでもかんでも自分の思い通りにならなくちゃ気が済まない性分っつーなんとも自己中野郎だからだ」

「へぇ・・・・・・そーなんだ」

「そうゆう誤解を招く言い方はやめい!ワイは手のひらで弄ばれるのが嫌いなだけや。決して自己中ちゃうからな!!」

「別に仁が自己中なのは今に始まった事じゃないし、気にしてねえけど・・・・・・そろそろ話を作戦会議の方に持ってかないか」

「せやな。じゃあ、いま一度状況を整理しようか」


 仁がホログラムを展開させる。と、同時に美夏が戻ってきたので、飲み物を飲みながらホログラムに視線を集中させる。


「さて、現状ワイらの戦力を見直すと・・・・・・

○近接:美夏、須藤さん(?)

○遠距離:仁

○不明:警備隊

 こんなところかの?」

「なんで警備隊が不明なんだ?」

「誰が来るかわからんからや。隊長が来たら遠距離に一人増えるんやけど、十和田さんが来るかもしれへんやろ?まだ不確定やから考えんと次に進むで」

「はいはい」


「ほんで次にターゲットのデータやけど・・・・・・

○銃主体の遠距離戦闘型

○投影速度はほぼノータイム。

○しかも好きな場所に投影可能だから背後から狙われる可能性あり

○ハンドガン2丁、機関銃7丁、スナイパーライフル1丁は最低限ある

○日程は4日後の4月22日、21時からで場所は西街地区中央通りの自然公園

 という感じか?」

「ああ、それでいいと思う」

「ねえ仁。メアって戦闘中にどんどん投影するから、銃は数えるだけ無駄だと思うわ」

「ふむ、確かにの・・・・・・ヒメル、メアって銃以外の兵器を投影した事ってあるか?」

「えっと・・・・・・夏休みの自由研究で大陸間弾道ミサイルやレーザー兵器を作った事はあるけど、あれは2ヶ月かけて作った大作だから今回は使わないと思うよ」

「そ、そか・・・・・・」

「いや~なんちゅうか・・・・・・マジで?」

「うん」

「そ、そんな辛気臭そうな顔をしない!!使ってこないって分かったんだからいいでしょ!!」

「せ、せやな!!――――そんで作戦やけど、まず強引に近接戦に持ち込む」

「遠距離戦用の銃は近距離に弱いって考え?仁、マンガ見過ぎよ」

「まあ最後まで聞け・・・・・・美夏は銃弾を避けられるんやろ?せやから美夏を囮としてメアと戦わせる。その隙に須藤さんが叩く。って感じでどうや」


 ヒメルはおおーと感嘆をあげ、美夏はうなって納得出来ていなさそうだ。俺は本当の作戦を知らされているのでノーリアクション。

 美夏が納得できないのか、仁に物申した。


「あんたは何するのよ」

「ワイは壁を投影してヒメルを守る。他にも空中に足場作って美夏のサポートしたり、メアの妨害したりするわ」

「ふ~ん・・・・・・」

「不満か?」

「なんか仁にしてはあっさりとしてるというか、何の捻りもないっていうか・・・・・・なんか納得いかないのよね」

「どんな策を練ったところで、圧倒的な戦力の前には潰されるのがオチや。そんならあまり凝らないで単純な作戦の方がええやろ」

「そういうものなの?」


 半眼ジト目の美夏が俺に訊いてくる。一瞬、答えに詰まりそうになるがなんとかいつも通りの調子で返す。


「まあ、そうかもな。仁にしては単純な作戦だけどこれでいいんじゃないか」

「ふーん・・・・・・わかった」


 渋々という感じではあるが美夏は納得したようだ。そして「今日はここまで。お開きにしよか」と仁の合図で作戦会議は終わる。俺を除く全員は部屋から出て行き各々(おのおの)好きなように過ごす。


「じゃあ、私は家に帰るわね。明日また来るから」

「ねえ、ヒメルも美夏の家に行っていいかな。見てみたい」

「ヒメルって今追われてる身でしょ。フラフラ町に出たら捕まるかもしれないし、ダメでしょ」

「いんや。やっこさんは来ないと思うで」

「なんでよ」

「夜ならまだしも、昼間だと目立つし警備隊の巡回がわんさかいるわで満足に動けへんはず。陽があるうちに家に帰れば問題ないはずや」

「ふーん」

「まあ、どうしても心配なら変装用プログラムを発動すればいいんじゃないか?」

「それもそう、かな」

「わ~い!!じゃあ行こう!今すぐ行こう!とっとと行こう!」

「はいはい」


 美夏とヒメルが出て行った。仁も付き添いということで出て行った。ということで今この家に居るのは俺一人だけ。天井を見上げ、ポツリと呟く。




「仁には感謝しなきゃな―――――つっ!!」




突然襲い掛かる痛みに顔を歪める。全身から冷や汗が噴き出し、呼吸が荒くなる。しゃべる事が出来ない。

・・・・・・な、なんなんだ!?さっきまではなんともなかったのに、今頃になって痛みが!?

誰か、助けを―――

 ついに意識を失いそうになった、その時、フッと何の前触れもなく痛みが消えた。何が―――と考える前に、襖が開き白衣の保健医が入ってきた。


「神林君大丈夫かい?」

「はぁ、はぁ・・・・・・あんた、なんで?」

「何でとは?」

「あんた、俺の体に一体何をした!」

「ひどいなー命の恩人にそんな態度とるなんて。まだな~んもしてないんだけど・・・・・強いて言うならある程度の痛みを遮断するプログラムを打ち込んだってところかな」

「痛みを?・・・・・・ああ、なるほど。本来ならさっきくらいの痛みがあんたのおかげで和らいでたってことか」

「そうそう、私もあくまで医者だからね。目の前に重症患者がいるのに、ほうって帰るわけにはいかないよ」

「・・・・・・俺がかなりヤバイって気づいていたんですか」

「診た瞬間に気づいたよ。私が言った全治5ヶ月って言うのは、最先端の医療技術やD・PRGを活用して君の自然治癒力を考慮した結果での最短日数だから。医者としては1年くらいは入院が必要だと言いたいところだね」

「それは―――」

「無理って言うんだろ?分かってる。さっき、君が寝ている間に神経を弄くるプログラムで一時的に痛覚は遮断したけど治った訳じゃないんだから。――――いっしょに来てくれるね」


 少し脅すような命令口調で話した。どちらにせよ、4日後にこの怪我を完全に治すのは不可能だってことは分かったから、少しでも早く治すためにも早く鹿島の保健室に行ったほうがいいだろうな。


「はい。よろしくお願いします。鹿島先生」

「よく言えました。じゃあ保健室に運ぶまでちょっとの間眠ってもらうよ――――次に目が覚めたときは保健室だから」

「天国とかいうオチは無しですからね」

「はは、君が天国に行けるわけないじゃん」

「ったく、なんて医者だ」

「私が治療するんだ。君を死なせはしないよ」


 白衣をさっと翻しD・PRGを準備し始める。その顔にふざけた様子など一切なく、そこには『天才の医者』が居た。


「いつもこのぐらいしっかりしてたら、美夏にも警戒されないのに」

「だって~しょうがないじゃんっ!!かわいいんだもんっ。ぺろぺろしちゃうのは、しょうがないでしょ!!」

「・・・・・・さすがは天才にして変態の医者」

「うるさい!・・・・・・さて、準備が出来たよ。目を閉じて」


 目を閉じる。するとひんやりとした手が目に添えられて、だんだんと眠気が襲ってきた。この感覚を味わうのはこれで3度目。意識がスーと消えていくようだ。


 そして、俺の意識は途切れた。


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