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神様との暮らし

作中で地名や物の名前が色々出てきますが、全て実話を参考に作ったフィクションです。

春と言う季節は中々良いものだ。

現代、令和の人々は「花粉症」という奇妙な病に苦しめられると春を嫌っているそうだが、それは自分にはあまり関係ないことである。街から少し抜けて、人気も少ない場所まで来れば、道のわきに桜が立ち並んで、ほっと心が落ち着く気がした。


「ただいま…」

「ん~おかえりなさ~い」

「…疲れた」

「まぁそりゃそうじゃろうな」

未来の東京に住み始めて、神様の巫女(?)になって軽く1カ月が経った。

「どうじゃった?」

「目が痛くてしんどい…」

ぐったりとしながら倒れこむように机に顔を伏せる。

僕がいた時代と今は違いすぎる。適応しようにも何もかもが違いすぎて、何からしていいかもわからない。例えば家。今住んでいるのはアリスが用意した東京のマンション、と呼ばれる長屋に近いものである。電子レンジ?やら色がついているテレビやらハイカラなものが沢山集まっており、家にいても落ち着かない…だが洋式の布団は案外寝心地が良くて満足だ。

一方元々の家は一軒家であまり記憶こそないものの、住み心地は良かった気がする。

住めば都ともいうし、案外前の家はここよりもずっと住みづらくて、ここの方が良いんだろうか?

「まぁこれでも使って休め」

「あぁ…ありがとう…」

目の周りを温めることが出来る目隠し(アイマスク、と言うやつらしい)を受け取り、ふぅと息をつく。時期ではないが、こたつでもあれば良いのにと思う…。

「…はよう帰りたい…」

「何を言う…一応今のここが汝の家じゃろうに…」

「そうですけど…そうじゃないんですって…」

「全く…飯はどうする?」

「…なんでも…」

「ん…何か作れるものあったかのぉ…」

ぱたぱたと靴下がフローリングを滑る音がする。冷蔵庫の中には大抵のものは作れるほどの食材が入っており、アリスはう~ん…と声を上げた。

「食材が在りすぎても困るな…何を作るか…」

「…味が濃いのはいやじゃ…」

「…そうじゃ!うどんにしよう!」

台所からカタカタと料理をする音がする。うどんか…久々だな…とぼぅっとしながら少し香るだしの匂いに心落ち着かせると、そんなにすぐ時間が経ったのか、すぐに美味しそうなうどんが運ばれてきた。

「ほい、食べれるか?」

「ん…いただきます…」

暖かいうどんは、やはり自分にとっては少し味が濃いが、つるつると食べやすく、疲れた身には最高の食事だった。

(…いや、待て待て…)

「…こんなのんびりしてて良いんですか…?」

「ん?」

「嫌、ん?じゃないでしょ…」

「…え?なんか今日あったか…?」

「…人助け、しないんですか?」

「…あぁ…そうじゃったな」

「そうじゃったな…じゃないでしょ。忘れてたんですか?」

ずずずっ…とうどんを啜る。メガネを掛けていたら曇りそうなほどの湯気が頬をじんわりと湿らせた。

「そういうわけではないんじゃ…」

「じゃあなんで…」

「んー…まぁ、どこから行くかちょっと悩んでおってな」

「はぁ…」

アリスはうどんを咀嚼しながら、ごそごそと何もない所を探っている。そして出てきたのもは、この前見たフィルムに似たものだった。

「それは…なんじゃっけ?」

「記憶フィルムじゃよ。他人の記憶を断片的に見ることが出来るものじゃ」

うどんの啜った汁が飛びそうになって、急いでフィルムを手に取る。フィルムに触れると、この前と同じように色のついた綺麗な映像がキラキラとして見えた。

「…相変わらず不思議じゃ…現代ではこんなものが普及しとるのか?」

「いや…もっと形が違うのぉ…こう、細長くて平たい板みたいな…街にいると皆構っとるじゃろ?あれじゃ」

「……あ、すまほってやつか」

「まぁその話はまた今度じゃ。ともかく……」

さらにゴソゴソと探すと、似たようなフィルムが沢山出てきた。

「…おお…」

「見ての通り、解決せねばならんことが沢山あるのじゃ。だからなにからするか…まだ悩んでおるのじゃ」

「なるほど…」

大きさの違う沢山のフィルムはどれもどんよりとした空気感を纏っていて、何だが見るのが申し訳ない気すらした。だがフィルムの映像自体はキラキラとしていて…まるでそこまでレアリティの高くないカードにラメシートを付けたみたいだった。


うどんを完食して一通りの片づけを終えると、改めて話し合いが始まった。

「んで、人助けの件じゃな」

「この量ならまぁ悩むのも納得です」

「そうじゃろう?それに、汝は今…未来の世界、それも都会の生活に慣れつつある。じゃから急にまた環境が変わるのは酷じゃと思ったのじゃ」

「今更ですが…人助けってどうやってやるんです?」

人助け、と言っても思いつくことは近所のおばあさんの手伝いとか、子供たちの遊び相手ぐらいしかパット浮かばない。それに今目の前にいるのは一応神様だ、きっと人助けと言っても規模感が全く違うのだろう。

「時空を飛び回って過去に行って、現地で解決する形じゃ」

あぁ、やっぱり思った通り規模感が全く違う。

「過去…んじゃあ、僕が産まれるより前に行ったりとかも」

「するかもしれんな」

「現地で解決…時空を飛び回る…」

どういう原理で??なんて聞いてみたかったが、聞いても神の力が~としか答えないだろう。聞いてもさらに彼女のことが理解できなくなるだけだ。

「じゃから、一度時空を移動したら、事件が解決できるまではその場所に留まる予定じゃ。宇宙空間に帰ってもよいが…逐一帰るよりもその場に泊まり、場所のことを深く理解する方が得じゃろう?」

「…時空旅行楽しみたいんですか?」

「そんなわけなかろう!!私はこれでも長うこと生きとるんじゃぞ!?」

ほぅと息つきながら軽く机に伏せる。人助けのついでに早く記憶を戻したいのだからちゃっちゃと決めてほしいものだ。

「…僕は何でも良いんで…早く決めてください」

「んな適当な…」

はぁ…とため息をついたアリスは、数多くの記憶フィルムの中から一つ取り出し、こちらに寄こしてきた。

「…ならこれでどうじゃ」

「…なんですかこれ」

アリスが見せてきたフィルムの中に移る景色は、今僕が住んでいる未来よりは古臭く、元々自分が住んでいた過去の日本よりも発展した、「中間地点」のような景色だった。

「これは1960年代の日本。場所は八日街じゃな」

「…なるほど…それで?」

「汝にはここで起こっている問題を解決する手伝いをしてもらうぞ」

「…人助けですか」

「その通り」

ジッとフィルムを覗くと、奇妙な映像が浮かび上がってくる。どうやら国民学校の校舎裏に誰かが呼び出され、詰め寄られているようだった。

「この現場に行って、問題を解決するのじゃ」

「…今思ったんですけど」

「んぁ?なんじゃ?」

「アリスは神様なんだから僕よりずっと長く生きてるだろう?なら過去の出来事だっていくつもわかってるんだから僕(巫女)なんかに助けを求めずとも一人でどうとでも出来るんじゃ…」

ぼそぼそとそう話すと、少しだけ間が開いてからアリスが口を開いた

「私が長く生きとるのは事実じゃ。…じゃが、今の私は過去の事を断片的にしか覚えておらぬ。断片的どころか殆どの事は覚えとらんかもしれぬなぁ」

「そうなんですか?」

「まぁそんなことは良い!ささ、早くフィルムの内容を確認するのじゃ!」

「…はいはい」

投稿主の受験が終わり、心身ともに回復してきたので久々に書き進めました。

この2話が上がるより前に、神様と巫女、タッグで解決!の原作参加型小説は一周年を迎えました。多くの方にお祝いの言葉をいただき、リバイバル版の参加型小説も多くの方に参加していただきました。本当にありがとうございます。

頑張って小説版も完結させたいなと思っているので気長にお付き合いしていただけると嬉しいです。

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