↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

32/85

第三十二話 アーシャ、王子様の看病をする


「……うう……ここは……?」


「ディアノン様、目が覚めたっぺな!?」


王妃様が、目を覚まし次第ディアノン様と、伯爵令嬢の婚約式の日程の話し合いをする、と言って帰って行った後、ディアノン様は昼過ぎに目を覚ました。


「アーシャ、どうしたんだ……泣きそうだが」


「ディアノン様は、昨日の夜に倒れてから、今まで目を覚まさなかっんだ」


おいらはくしゃくしゃの顔だったのだろう。怪訝そうな彼に、彼がイカに眠っていたかを教える。


「熱も高くて、魔女の呪いが、どんな風にかかっているかもわからなくて」


「魔女……? ああ、謝罪しなければ、彼女に何という無作法を、我が国はしてしまったか」


ディアノン様が起き上がろうとするから、慌てて手を貸す。

半日、かなりの高い熱を出していた彼の体は、かなり消耗しているはずなのだ。

事実彼の体は、自力では上体を起こせなかったのだ。

手を貸し、ベッドの頭の部分にクッションを増やして、おいらは彼が寝台の上に座れるようにと調整をした。

そして、乾いた咳をしたディアノン様に、お湯を渡した。

問答無用で渡したのである。

かなり強引な渡し方だったため、王子様は目を丸くしている。


「謝罪云々の前に、ディアノン様は、せめて何か飲んでください」


体が水気を求めているはずだ。

そしてディアノン様は、おいらが渡したお湯を飲みながら、苦い顔になった。


「信じられない……たった半日程度寝ていただけだというのに……」


「魔女の呪いと、体の中の魔力が争っていたんじゃないっぺか」


詳しくは知らないけれども、魔女の呪いをかけられた人の中には、自分の魔力と呪いが戦ってしまい、体調を崩す人もいる、と先生が言っていた気がする。

先生とそんな話題になったのは、たしか、魔王の加護の話をしていた時だったか……?

いまいち思い出せない。


「とにかく、ディアノン様が目を覚ましたなら、厨房に何かお粥とか用意して来てもらうっぺよ、カップ半分くらいなら、入るっぺ?」


「あまり食欲はないのだが……」


「じゃあミルクがゆを、思い切り柔らかいのにしてもらうっぺな」


「そういえば……スーズはどうしたんだ」


周りを見回して、彼の優秀な侍従がどこにもいないから、ディアノン様が問いかけて来る。


「スーズさんは……ディアノン様にかけられた呪いの魔力にあてられて、近寄れなくなってしまったっぺ。近寄ると倒れんだ」


「彼の魔力に弱い部分が裏目に出たか……」


ディアノン様が溜息をつく。とても悲しそうだったから、おいらは付け足した。


「お医者様に見てもらった後、スーズさん呼んでくるっぺよ。ディアノン様が目を覚ましたら、きっと喜ぶっぺ。それに目を覚ましたから、もう、魔力にあてられなくなるかもしれないし」


「だといいな」


「んじゃあ、食べるもの用意してくるから、その後お医者様も呼んでくるっぺ」


ディアノン様の枕元から立ち上がり、おいらは厨房に向かった。

ミルクがゆは、簡単にできる物だったから、直ぐに用意は整った。

ディアノン様が、甘いのとしょっぱいのと、どちらが好きかわからないから、味付けはしないで、お盆に乗せて持っていく。

その時、おいらは、ディアノン様の部屋の前で、待ち構えている、スーズさんに出会った。


「中に入らないっぺか?」


「あなたが動いているという事は、殿下はお目覚めになったのですね!」


「起きたっぺよ、だから取りあえず、食べ物を持ってきたんだ」


「では私は、今からお医者様を呼んできます! ああ、我が君、本当に良かった……、魔女の呪いはとてつもなく恐ろしい物だから……」


スーズさんは滅多に見ないほど興奮していた。歓喜していると言ってもいいだろう。

長年仕えている人だから、おいら以上に、心配していたのだろう。

彼はそのまま、ぎりぎり走っていないと言える速度で、お医者様を呼びに、去って行った。

そこで、おいらは扉を開けて、中に入る。

中ではディアノン様が、背もたれにしているクッションに寄りかかって目を閉じていた。

お湯は飲み切ったのだろう。空の器が、ベッドのわきの小さな机に置かれている。


「ディアノン様、お粥持ってきたっぺ」


「……さっき話し声が聞こえたな、スーズの声だったが……」


「ああ、扉の前で待ってたっぺ。起きたって聞いたら、大喜びでお医者様呼びに行った」


「そうか」


持っていたお盆を卓に置き、おいらはお粥の器を持って、匙でお粥をすくって、ふうふう冷ました後、ディアノン様に匙を向けた。


「はい、あーん」


「私は食器も持てない子供ではないが……」


「さっきお湯を渡した時、かなり手が安定してなかったっぺよ。たぶんまだ体が疲れてる。お粥を落した方が大変だから、おいらの親切を受け取っておくっぺ」


「……」


色々考えたのだろ。自分の年齢と、自分の体調と、おいらの迷いのなさとをだ。

そして少し考えた後、彼は口を開けてくれた。

その口にお粥を入れて、しばらく噛んだ後、彼はなんとも言えない声でこう言った。


「ろくに味がしないんだが」


「ああ、味付けしてなかったっぺな。甘いのとしょっぱいのとどっちだっぺ?」


「……普通の従者だったら首になっているぞ、その忘れ方は」


「でもできないっぺな。おいらにディアノン様は借りがいっぱいあるっぺよ」


冗談のつもりで言ったのだが、ディアノン様は重々しく頷いた。


「生ける竜の死体の時と、魔女から庇ってもらったのと。確かに大きすぎるほど大きい借りだな」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。