新たな力、別れの時
6話 新たな力、別れの時
固有能力、と言うのを知っているだろうか?
固有能力は生まれてきた時から決まっている、成長と共に固有能力が変わったり、増える事も稀ながらあるらしい。
人や獣人、魔族に発現する固有能力だが、大半の者は発現しない、つまり固有能力を持って入るだけで才能に恵まれていると言える。
そんな固有能力には当然ありきたりな物から貴重な物まで様々な種類がある、火を出したり、水を操ったりするのはありきたりで普通の人でも魔法を使えば同じような事ができる。この世界で固有能力が発現している人の大半がこのような者が多い。
なら、貴重な固有能力は?っとこの世界の人に問えば、まず最初にでてくる物は〈剣帝〉歴史上一人しか発現していない固有能力、その能力名と所有者の名前は今でも人間には恐怖を与える物である〈剣帝〉ウルベルト・クラウディス、すでに故人のこの魔族だが、魔国歴代最年少で魔王となり数々の勇者を殺してその名を広めた魔王である。そんな魔族がいたと言うだけで震え上がるがすでに2000年前の人物なので絶対に出会うことは無いのでよしとする。
さて、何故こんな事を説明したかと言うと・・・
「固有能力が発現したよ!」
「おぉ!ソウよかったじゃないか!」
イエーイと思わずコウさんとハイタッチをしてしまった。
「いやー、このクランに2人も固有能力持ちが入ることになるのかー」
「お、何だ他にもいるのか?」
先輩がコウさんにそう聞く
「おう、リーダーが固有能力持ちだ、しかもかなりのレアものだ」
「へー、それは気になるなぁ」
「いや、聞いても教えてくれないと思うよ~」
「そうなのか?」
「いや~なんでも、リーダーの生まれた国は3000年くらい前に実力は有るのに固有能力の事を話して負けた勇者がいたんだって~それでその国では今でも固有能力の事は本当に信頼できる人にしか教えなくなったんだって~」
「ふーん、んで、あんた誰?」
「誰ってフィルだよ!ケン酷いよ!」
「あぁ、いたなそう言えば影薄いから忘れてたよ」
「酷い、酷すぎるよ!確かに影が薄いってたまに言われるけどここまで言われたのは初めてだよ!」
そう尻尾を立ててウニャーっと言いながら先輩に文句を言うフィルさん・・・尻尾?
「えっと・・・フィルさん?」
「どうしたの?ソウ?」
「いや、それは・・・」
俺はクネクネ動いている尻尾?を指差して聞いてみる。
「何って尻尾だよ?」
「え?なんで、尻尾があるんですか?」
「何でってそれは私が獣人だからだよ?」
「え?獣人だったの!?」
「そう言えばまだ、ソウ達は知らなかったな、フィルは獣人だよ、帽子被ってるから耳は見えないし、尻尾も普段は服の中に閉まってるからわかりにくいけど」
「ふーん、まぁどうでもいいけどねー」
「ヤッパリ、ケンは酷いよね!?」
ケンは敵だー!っと騒いでいるフィルさんを軽くあしらいながら先輩は思い出したかのように聞く。
「そうだそうだ、知らないで思い出したがお前もそろそろ名乗れよ」
そう、リーダーさんに指差したを先輩が続ける。
「俺は違うが、谷山達が困るだろ、それに俺達も名乗ってんだそっちも名乗るのが礼儀なんじゃないか?」
「え?私・・・名乗ってない?」
「うん、名乗ってないな」
「ごめんない、てっきり名乗ったと思ってたわ」
こほんっと咳払いをしてリーダーさんは俺達の前にたち自己紹介を始めた。
「どうも、このクランウィンディーネのリーダーをさせて頂いています。リデント・フィアナと申します、遅くなりましたがどうぞよろしくお願いします、そしてソウ、エル、ようこそウィンディーネへ、私たちは心から歓迎します」
「よろしくお願いします!リデントさん!」
「よろしくお願いします」
「そんな他人行儀ならなくていいわ、もっと気軽にいきましょ」
リデントさんは「勿論ケンもね」っと言いなが先輩の方を見る、その時に一瞬驚いたような気がしたが、次の瞬間には元に戻っていたので気のせいのようだ。
「ところで固有能力の話をしてたんじゃないの?」
フィルさんがそう言って思い出した。
「そうだった!ソウどんな能力?」
「コウ、人に能力の事を聞くのはあまりやめなさいと言ってるでしょ」
「んなこと言うなよリーダー、気になるんだからしょうがないじゃないか」
「それでもです!もし、ファルト連合国出身の人なら絶対に怒りますよ!」
「まぁまぁ、リデントさん、自分は気にしていないのでそこら辺で許してあげてください」
そう言うと、まぁ本人が良いならいいけどっと言いながらリデントさんは退いてくれた。
「自分ではどれ位使えるかわからないですから、教えてくれればありがたいですし」
「わかった!教えるから教えて!どんな能力!」
コウさんは少々、いやかなり食いついてきた、それはもうかなりウザイと思うぐらいに、隣にいた先輩も、うわめんどくさっと呟くほどに。
「えっとですね、〈凍結〉ですね」
「ほう!それは珍しいじゃん!」
〈凍結〉一見ありふれた固有能力だと思われたこの能力だが、コウさんが言うには有りそうだが、あまりなく、魔法でも物を凍らせる物はかなりの魔力値が必要な事から希少な固有能力と言えるらしい。
「よかったじゃないか、ソウ固有能力も発現して、しかもそれがレア物とか」
「そうね、〈凍結〉は世界に数人ぐらいしかいない固有能力だからね」
「い、いいなぁ、僕もそんな固有能力あったらなぁー」
そう話していると先輩が立ち上がりこういった。
「さて、俺はそろそろ行くよ、準備しなきゃいけないからね」
「・・・先輩、本当に一人で行くんですか?旅だったら皆で行けばいいじゃないですか!」
そう、このクラン、ウィンディーネは世界中を旅する事が目的のクランだ、先輩は別に一人で行かなくてもここにいる皆で旅をすればいいはずだ。
「いや、俺はちょっと目的が有るから行くんだ」
「それも皆でやればいいでしょう!一人で行く必要は無いはずです!」
「・・・・」
先輩は黙って顔を伏せた・・・
「・・・・確かに、谷山お前の言うとおりだ、別に一人で行く必要は無い」
「だったらみんな・・・!?」
皆で行けばいいじゃないですか、そう言おうとした時に顔を上げた先輩の顔を見て、いや正確にはその目を見て俺は心の底から先輩に恐怖した。先輩のその真っ黒な目には誰が見てもわかるような憎しみと悲しみ、そして最大の怒りがあった。
「確かに、一人で行く理由は無い、だが他の奴と行く理由も無い、俺の目的とウィンディーネの目的は絶対に互いの邪魔にしかならない」
この世界その物を憎んでるような目をしている、この世界に来て少ししかたってないはずの先輩がする事は無いはずの目だ。
「っと、まぁ、俺は俺でそうするって決めたんだからいいじゃないか、これでお前は俺に振り回されることも無いし万々歳じゃないか、それにな、本音を言うとな谷山」
「な、何ですか?」
「お前、邪魔だよ」
一瞬先輩から何を言われたのかわからなかった。
「本人達の前で言うのはあれだけどパーティー組めって言ったのは邪魔だったから別の奴に押し付けようと思っただけだし、お前・・・弱いし」
続けて言われた言葉を理解した時にはもう動いていた、拳を握りしめ思いっ切り先輩の顔目掛けて振っていた。
先輩なら余裕で避けれる攻撃を先輩は避けずに顔で受け止めた。
「・・・この程度か?」
先輩はそう言うと俺を殴った。顔に激痛とふっとした浮遊感がそ全身を遅いそして、少し遅れて背中を強く打ち付けた。あまりの痛みに意識が飛びかけた。必死に気絶しないように我慢している俺に先輩はこう言った。
「お前さ、前から思ってたけどさ、もう少し自分で考えて動けよ、いつも俺の言うとおりに動いてさ、反論してきてもすぐに折れるしな」
確かにこの世界に来てから俺は先輩の言うとおりにしてきた、反論をしたことも有ったが、自分の考えを突き通さずに先輩の言うことを聞いていた。
「そんな奴がいても、足手まといだ、じゃーな、俺はもう行くぞ」
「ケン!流石に言い過ぎだぞ!」
「落ち着いてくださいコウさん!」
「そうだよ、怒ってもしょうがないよ」
先輩に殴りかかろうとした、コウさんがエルス君とフィルさんに押さえられていた。
「離せ!アイツは一発殴らないと気が済まん!」
そう言い、エルス君とフィルさんを押しのけ先輩を殴ろうとした時。
「やめなさい!コウ!」
その声でコウさんは拳を止めた。
「何で止めるんだよ!リーダー!」
「私も思うことは有るけど、これはソウとケンの問題よ、私達が口を挟んで良いことではないわ」
「でもよ!」
「コウ、私はやめなさいって言ったわよ?」
「っ!・・・チッ」
舌打ちをして、コウさんは拳を引いた。
「ケン、私は今回は止めたけど次からはコウを止めるつもりは無いわよ、私も貴方には言いたい事があるし」
「そうかそうか、んじゃそれは心の中に閉まっててくれ永遠に」
そうリデントさんに言い歩き出した先輩はあぁ、そうだったっと言い俺の方を見た。
「谷山、お前といた時間は悪くは無かったよ」
「・・・・俺もです」
「そうか、ならよかった、悔しかったら強くなれ、そして俺に一発くらわせれたら、謝ってやるよ」
「言いましたね、絶対土下座させてやりますよ」
「おぉ、怖い怖い、まぁできるもんならやってみろ」
「やってやりますよ」
「そうか、んじゃ、谷山の事頼むぜウィンディーネ諸群じゃーな」
そう言うと先輩は今度こそ止まることなく歩いていった。
ウィンディーネの仲間に介抱されて部屋に戻った時には先輩の荷物は無く、2人で貯めたGの半分と見慣れない短剣そして置き手紙しか無かった。
置き手紙を読むと自然と笑みが出てきた。
〈谷山へ、その短剣は俺からの餞別だ、いつまでもそんな武器使ってんじゃねーよ、加工屋に頼んで作ってもらった特注品だ、大事につかいな bye森田〉
「絶対に殴ったこと気にしてるなあの人は」
そうなんだかんだ言って後輩思いの先輩に誓った。
「追い付いてみせますよ、絶対に!」
序章 一人は流されるままに、もう一人は目的の為に
完
谷山が決意を決め、森田が目的の為に歩き出した頃、ある場所で別の物語が始まった。
「ようこそ!勇者様方!我々に力をおかしください、そして憎き魔王を倒してください!」
「キター!!」
「えっ?ここどこ?」
「???」
「いいですよ」
「めんどくせー」
それが世界を巻き込む、重大な事とは知らずに・・・
最近谷山君と森田君のダブル主人公でいいような気がしてきました




