元魔王と見捨てられた勇者
5話 元魔王と見捨てられた勇者
王国に見捨てられた勇者 武田優子を護衛することになった、一応最低限の支援はしてくれるらしく要求した金とは別に金をくれた、ちなみに報酬は前払いだったらしく報酬金も貰ったが、はっきり言ってもっと貰いたいぐらいだった。
「あ、あの・・・」
「ん?なんだ」
俺は思わず不機嫌そうに返してしまった。
「えっと、な、名前は・・・?」
「あぁ、そういえば名乗ってなかったな森田 健だよろしく」
そう名乗ると武田は驚いた顔をした。あ、そうかこの世界にこの名前の人間はほとんどいなかった。
「え・・・森田って言うことは・・君日本人?」
「あぁ、そうだ」
別に隠す事でも無いし、素直に答えた。
「って言うことは君も勇者なの・・・?」
「いや、俺は違う、変な扉開いたらこの世界にいたんだよ」
「そんな事もあるの?」
「知らん、有るかも知れないし、ないかも知れない」
たぶん谷山がこっちに来たのは俺に巻き込まれただけかもしれないが、あんな事がそうそうあるとは思えない。
「その後輩さんは今どこにいるの?」
「アイツはクランに入れさせて来た」
「クラン?」
そう聞き返した武山に驚く、流石に冒険者を知っているのならクランだって知っているはずだ。この世界のほとんどの冒険者はどれかしらのクランに所属している。クランに入っていないのは俺みたいな一人でやったほうがいい目的を持っている奴かよっぽどの物好きかしかいない。
冒険者と言えばクラン。それが当たり前の世界だ。
「クランは冒険者のほとんどが所属しているものだよ」
「森田君もそのクランって言うのに入っているの?」
「いや、俺は入っていない、クランは俺にはには合わないだろうし」
「そうなんだ~」
「はぁ・・・おい、そろそろ行くぞ」
依頼はこいつの護衛だったが好きにしろっと言われているので好きにさせてもらう。
「え?どこに行くの?」
「武器屋だ、まさかお前そのままで戦うつもりじゃないだろうな?」
「も、もちろんだよ!」
「はぁ・・・わかったらさっさと行くぞ」
「あ、荷物取ってくるから先に門にいってて」
そう言って荷物を取りに武田は走っていった。
門に行き30分ほど待っていたら荷物を纏めた武田が来た。先ほどと服が違う、学校の制服からレザー系の防具になって腰に片手剣を刺していた。
「武田、お前その装備どうしたんだ?」
「えっと、ルルって子に貰った、旅に出るなら必要だろうって」
「そうか、ならお前の分の装備を買わなくてすむな」
「うん、気に掛けてもらってありがとうね」
「気にするな、依頼をやり易くするためだ、まぁ、武器屋には結局行くけどな、そろそろ俺は武器を変えないとここから先きつくなって来る」
王都周辺はガーレ村とあまり変わらないくらいの強さのモンスターだが、少し離れればモンスターの強さは極端に上がる、そのため今の武器じゃ最悪刃が通らないかもしれない。
武田が貰ってきた武器はなかなかいい物みたいだから変える必要はない。
「それじゃ、行くぞ」
「うん!」
───武器屋───
「うわぁ・・・」
「ん?どうした武田」
武器屋に着いたら武田が物珍しそうに武器を見ていた。
「あぁ、お前武器屋初めてか」
「うん、お城ではちょっとした訓練しかしてなかったし、こんなに武器を見るのも初めてだよ」
「そうか・・・」
返事もそこそこにして俺は剣を選び始める。
「お、いいのあるじゃん」
「お、お客さんそいつに目をつけるたぁなかなかいい目をしてるじゃないか」
俺が手に取った剣は小竜〈ワイバーン〉の素材を使ってある剣だ、ワイバーンは他の竜種に比べ体は小さいし、力も無いが、その牙は鋭く、集団でなら中型の竜種をも倒してしまうことがあるモンスターだ。
「店主こいつ2本いいか?」
「あいよ、2本で15万Gだよ」
「おし15万だな」
財布から15万Gだし渡す。ちなみにこれで報酬は全部無くなったのは言うまでもない。
武器屋をでてギルドに行く、簡単な依頼を受けに行くためだ、武田がどこまで戦えるかしらないが一応把握しておいたほうがいいだろう。
「お前ギルドに登録はしてあるのか?」
「う、うん一応してるけど・・・」
「ならいい、今から依頼を受けに行くからお前も来い」
「え、依頼ってどんなの受けるの」
「討伐系だ、お前がどこまで戦うこと出来るか見るためだ」
「う、うん!がんばるよ!」
───王都周辺草原───
今回は王都から割と近くにある草原に迷い込んで来た中型のモンスターの討伐依頼を受けてきた、目標はフィンリル、ウルフ系モンスターの中でも上位に入るモンスターだ、別にこいつを武田に討伐させる訳ではない、そんな事をしたら護衛依頼自体が失敗になる。ではなぜ受けたか、それは道中で武田の戦闘の様子を見るためだったが・・・
「やっ!!」
武田の振った剣がブラックラビットを切り裂いた、本日10匹目である・・・
「何こいつ、谷山よりすっごい使えるんだけど・・・」
「え?どうかしたの?」
「いや、なんでもない・・・」
そう言えばこいつは一応勇者だったなぁ・・・っと思いつつ考える、最初は素人と同じようにただ剣を振り回すだけだったが、時間が経つにつれてどんどん強くなっていっている。どう考えても勇者の補正じゃ説明がつかない、何かしらの固有能力があるのかもしれない。
それにしても何故王国はこの子を見捨てるような事をしたのだろうか、確かに勇者としては弱いかもしれないが鍛えれば強くなると思うんだが・・・
「おっと、武田隠れろ・・・」
「え?うん・・・」
草に身を隠し様子を見る、銀色の毛をもち、全長は4mはありそうなそれは、今回の目的のモンスター、フィンリルだった。
「おし、来たな・・・」
「も、森田君・・・!あ、あんなのどうするの?」
「どうするもこうするも、倒すためにここに来たんだろう・・・」
フィンリルは辺りを警戒しながらゆっくりと歩いていた。
「おい、武田お前は巻き込まれないように見ていろ」
「え、あれ森田君一人で倒すの?」
「まぁな、ちょっとキツいかもしれんがやれないことはない」
そういい俺は出来るだけ音を立てずにフィンリルに近づこうとすると武田が話しかけてきた。
「森田君・・・」
「なんだ」
「頑張ってね」
「はいよ」
そう返事をし俺はフィンリルに向かって走り出した、さっきはこちらを見ていたが今は反対側を見ている。まだ見ていない、俺は新調したばかりの剣を抜き無防備なその後ろ足に全力で振り切った。
ワイバーンの牙を主に作られたこの剣は中型モンスターの中でも上位の軟らかさを持つフィンリルの皮膚を用意に斬り裂いた。
「おっしゃ!やっぱり良く切れる!」
突然の痛みに体を硬直させたフィンリルに対し容赦なく同じ場所を切る。フィンリルは素早さが売りのモンスターだ、足を潰せば動きは遅くなり、戦闘力も下がる。バキッ!っと音が鳴りフィンリルは悲鳴のような泣き声をあげだした。
どうやら足が折れたようだ。こうなったらこっちのもんだ折れた方とは逆の足に双剣戦闘用スキル〈乱舞〉を繰り出す、このスキルは使用者の俊敏値と技量値によって威力と攻撃回数が変わるスキルだ、因みに俺の俊敏値と技量値は102と65だ、人間で言うとトップクラスの冒険者とほとんど変わらないそのステータスはモンスターと言っても中型でしかも他より軟らかいフィンリルの足を斬り飛ばすだけではなく、その体に無数の傷をつけていく。
「ふぅ、思ったより楽だったな・・・」
乱舞が終わった後はフィンリルは腸を撒き散らせ、その銀色の毛を真っ赤に染めて息絶えていた。ぶっちゃけすっごくグロイ、それはそうか、乱舞は一応双剣専用戦闘スキルの中では上位に入るスキルだし、魔族とそう変わらないであろう俺のステータスによる補正で馬鹿みたいな威力を発揮する。もし魔族にこのpointと戦闘用スキルがあったら人間はとっくに魔族に滅ぼされていただろう。
「ふぅ・・・おい武田大丈夫か?」
「も、森田君・・・ちょっとあっち向いてて・・・吐きそうだから・・・」
「おい、その言い方は俺が気持ち悪くて吐きそうに聞こえるから止めてくれ」
「うん・・・わかった・・・ごめん・・・うぇ・・・」
この光景はやっぱり武田にはきつかったのだろう、さっきから茂みの方を見ながら吐いている。その内にフィンリルから剥げる素材を剥ぎ、剣に付いた血をふき取る。
「も、もう大丈夫だよ・・・」
ゲッソリした顔でそう言ってくる武田に俺は水を渡しながら武田に聞いた。
「武田は魔力はちゃんと操作できるか?」
「魔力を操作?」
「あぁ、魔力を操作できるようになれば武器に魔力を乗せて威力を上げたり、そのまま魔力を飛ばしたりできるようになるから便利だぞ」
あ、そう言えば魔力操作は主に魔族の技術で人間側にはあまり浸透していないのか。一部の例外で谷山のような固有能力を持っている人間が無意識に使用しているぐらいか。
「ん~なら王都に着たばかりだが、しょうがないか」
「どうしたの?」
「いや、次に行く場所を決めたんだよ」
「どこにいくの?」
魔術操作を覚えるなら同じ魔力を使う物を学べばいい、俺はそれを使えないから感覚でしか教えられないが、こと魔法に関して言えば頂点っと言ってもいい国がこの国の隣にある。それにあの国にはあれがあったはずだ・・・
「魔法の国、シルトキア共和国」
一度分かれた物語また交わろうとしていた。早すぎるそれはこの世界に何をもたらすのか、それは誰にもわからない
森田君中型モンスター瞬殺




