第五十六部 ビギナーズラックとお財布いらずの昭和
今では「そんなことある⁈」と思ってしまうような、昭和の出来事。
高校生の頃のスロットと、アルバイト時代の社員旅行。
どちらも、当時は何とも思わなかったけれど、今振り返ると…
「昭和って、けっこう太っ腹だったなぁ」
と思う話です。
高校生の頃、福岡のいとこの家に泊まりに行くと、いとこの旦那さんが、なぜか私をスロットに連れて行ってくれた。
当時の私は、スロットなんて見たこともない。
初めて見るスロットの前に座ると、旦那さんが、
「ここをガチャッとして、ポン、ポン、ポンと押すだけ」
と教えてくれた。
「へぇ〜、簡単、簡単」
言われた通りにやってみる。
すると、始めてすぐに、訳の分からないことが起きた。
ジャラジャラジャラジャラ……!
「えっ⁈」
びっくりするほどコインが出てきた。
何が起こったのか分からず、私が呆然としている横で、いとこの旦那さんは慌ててコインを箱に入れている。
どうやら、当たったらしい。
でも、私には何が何だかさっぱり分からない。
その後、私たちはスロット屋さんを出ると、そのままお寿司屋さんへ向かった。
回っていないお寿司屋さん。
カウンターに座って、私は初めてのお寿司を食べさせてもらった。
その時は何も考えずに、美味しくいただいた。
でも、今になって思う。
(もしかして、あのお寿司……
私がスロットで当てたおかげだったんじゃない?)
そう考えると、あの日の私は、何も知らないまま大活躍していたのかもしれない。
そんな思わぬ幸運があったかと思えば、昭和の『太っ腹』を感じた出来事はこの他にもあった。
アルバイトをしていた頃のこと。
ある日、社員旅行に行くという話を聞いた。
すると、アルバイトの私も一緒に連れて行ってくれるという。
女性はアルバイトの私と女性社員の2人。
あとは男性社員ばかりだった。
「ホテルが二人部屋だからね」
ということらしかった。
私は社員の皆さんに混じって、一泊二日の社員旅行に参加することになった。
今思えば、アルバイトの私まで社員旅行に連れて行ってくれるなんて、ずいぶん気前のいい会社だったと思う。
しかも、昭和は景気が良かったからなのか、旅行中に自分のお金を使った記憶がまったくない。
社員の皆さんについて観光し、美味しいものを食べる。
もちろん、それも全部、社長さんが払ってくれる。
途中で買った飲み物も、お土産も、たぶん全部出してもらったと思う。
私はただ、みんなについて行くだけ。
財布はバッグの中に入れたままだった。
ホテルに戻ると、みんなでトランプをしたりして、ワイワイ盛り上がった。
特別な出来事があったわけではない。
どこへ観光に行ったのか、何を食べたのか、今となってはほとんど覚えていない。
でも、ひとつだけ、はっきり覚えている。
一泊二日の社員旅行で、私は一度も財布を出さなかった。
当時は、それを特別なことだとも思っていなかった。
でも、今考えると……
「えっ、全部会社持ちだったの?」
と、自分でもびっくりする。
高校生の私には、よく分からないまま、お寿司をご馳走してもらった。
アルバイトの私には、社員でもないのに社員旅行に連れてしてもらい、財布を一度も出させてもらわなかった。
今では考えられないような話だけど、当時はそれが、そんなに珍しいことだとは思っていなかった。
振り返ってみると……
昭和って、ほんとに太っ腹だったんだなぁ。
昭和、恐るベし‼︎
スロットでは、何も分からないまま当ててしまい、お寿司をご馳走になった私。
社員旅行では、アルバイトなのに連れて行ってもらい、財布を一度も出さなかった私。
今だったら、こんなに気前のいい話、なかなかないですよね。
当時は当たり前だと思っていたことが、今になって思い返すと、実はすごく贅沢なことだったんだなぁ。
昭和って、やっぱり面白い時代でした。




