EP.009
──翌朝。
疲れもあったのか、久しぶりに深く眠りについていた私は、とても懐かしい声とともに、朝の光に引き戻された。
「…様、お嬢様、ロゼリアお嬢様、おはようございます!」
「ん〜…おはよう、アン…………アン?」
体に染み付いた朝のやり取りを、寝ぼけたままにかえして、ふとおかしなことに気付いた。
「はい、アンです!おはようございます!」
「えっ…?どうしてアンがここに…!?」
思わず起き上がって声の方向を見ると、そこにはあの頃と変わらない笑顔で笑う彼女が立っていた。
アンは、両親が健在だった頃に我が家に仕えてくれていた侍女だった。
年齢が比較的近かったこともあり、専属の侍女達の中でも特に気心の知れた仲で、まるで姉のように大切な存在だった。
両親の死後、侍女や執事は全員暇を出され、入れ替わったと聞いている。
アンもそのうちの一人であり、挨拶もできずに別れたことから、密かに気にかけていた。
「公爵家を離れたあと、レオナルド殿下に王城の侍女として拾っていただいたんです」
「レオナルド殿下が…?」
「はい。『いつかまた、公爵家に戻れるように』って。そう言ってくださいました」
驚き言葉の出てこない私に、アンは楽しそうにこう続ける。
「そんなに大切に想われていて、お嬢様が羨ましいです」
「…そんなことないから。朝からからかわないの」
懐かしいやり取りに思わず笑みが溢れる。
レオナルド殿下が知らないところでそのように動いてくれていたとは思わなかった。
今はまだその事実をどのように受け止めていいのかはわからないけれど──少なくとも、私のことを忘れてしまっていたわけではないと、思ってもいいのかもしれない。
「さぁ、目が覚めたら準備しましょう!レオナルド殿下とアーサー様が執務室でお待ちですよ」
そう言われ、五年前を思い出すのように、彼女に化粧と髪型を施してもらい、二人でレオナルド殿下の執務室に向かった。
───これからと、今までの話をするために。




