EP.003
「…パーティー、ですか?」
思わず聞き返した私に、義父はめんどくさそうに鼻を鳴らした。
「あぁ、レオナルド第二王子殿下の二十五歳の誕生日パーティーを開くらしい。表向きは。どうやら婚約者も探してるそうだ。ドレスは適当に見繕って、お前も参加しろ」
「そんな、急に言われても…今まで一度もそんなことありませんでしたよね?なんでまた急に…」
「うるさい!口答えするな!今回は今までと違うんだ!バカでもわかるだろ!…何度も言わせるな、とにかく用意だけしておけ、いいな」
一方的にそれだけを言い放つと、少しでも早く離れたいと言わんばかりに、義父は足早に母屋を出ていった。
両親が亡くなったあと、公爵家の爵位は本来は兄が継ぐ予定だった。
しかし、当時18歳で貴族学校に通っている最中だった兄にはそれが難しく、近縁の伯爵家から叔父と叔母──つまり今の義両親がやってきて家を引き継ぐことになった。
義両親は最初から私や兄の面倒を見る気はなく、この家の財産だけが目当てだったんだと思う。
兄が貴族学校で下宿状態だったことをいいことに、私は邪魔だからと早々に母屋に閉じ込められた。
また、両親を無くした悲しさで気がおかしくなっていると触れ回られたせいで、外界と連絡することなく月日が流れていった。
そのため、もちろん兄とも両親の亡くなった日以来会っていない。
何度も兄や知り合いに会いたいと頼んだが、「他人に迷惑をかけるな」と拒否され。
誰も私の元を訪ねて来ていない、手紙も届いてないと、そう言われ、すべてを飲み込むことしかできなかった。
五年の月日で、パーティーが一度も開かれていないわけがない。
それなのに今更、よりによって「第二王子の婚約者探し」のパーティーにあの義両親が私を参加させる理由とは何なのか。
──理由は、考えるまでもなかった。
(…相当、うちの経済状況は厳しいんでしょうね)
父と母の遺していた金品は、私の隠し持った数品以外すべて売られてしまった。
広い領地を所有しているこの家を、義両親が切り盛りできるはずもないだろう。
むしろ、五年はよく持ったほうだと思う。
きっと、このパーティーで、私をうまく金のある貴族の後妻として売り込むつもりなのだろう。
本当は、参加なんてしたくない。
兄とも、友人とも、五年間誰とも連絡が取れなかった。
取らせてもらえなかっただけなのかもしれないが、それでも、この五年、誰からも手が差し伸べられなかった事実は私の心に深く刺さっていた。
───レオナルド殿下も、きっともう私のことは忘れているんでしょうね。
誰かと婚約する彼を、見届けなければいけないのか。
どう考えたって、私にメリットは一つもない。
(…でも、どうせこのまま終わるくらいなら、最後に思い出作りをしてもバチは当たらないわ)
たった一夜、数時間のパーティー。
私はそう自分に言い聞かせ、パーティーへの参加を決めたのだった。
ひとまずの書き溜め分、ここから本編スタートです。




