EP.023
『え?王都ですか?しかもフラテリーニ商会?』
『そうなの。お買い物に行きたくて…アンが一緒ならいいかと思って。…どう?』
『私は全然…むしろ嬉しいですけど。ただ、多分、アーサー様には言っておかないと怒られますよ?』
『ダメ!絶対止められるもの!お願いアン、二人だけの秘密にしておいて!』
『えぇ〜…』
困ったように笑うアン、ただ、私はアンがなんだかんだ私に優しいことを知っているのだ。
(ごめんね、アン。ちょっと利用させてもらう…!!)
『まぁとりあえず、外出届、出してみますね。アルバート様にお渡しすればいいんですよね?』
『そう!アルバートなら大丈夫だから!』
『はい、わかりましたよ』
───この会話をしたのがあの日の夜。
そしてその数日後。
許可が降りたから出かけましょうと言われた日付が、今日だった。
王都まで乗る馬車を用意してくれているという待ち合わせ場所にいたのは、アンではなく見知らぬ男性だった。
(…私、場所間違えた?)
少しカールのかかったふわふわとした黒髪が目元までしっかりと隠しており、こちらからは顔を見ることができない。
少し市民の装いに寄せてはいるものの、見るからに高貴なオーラが漂っていた。
どうすれべきか迷い、そっと踵を返そうとしたその時。
「全部顔に出てる。待ち合わせ場所はここで合ってるよ」
聞き慣れた声の主に腕を掴まれる。
「…まさか」
「──ほんとにロゼリアは油断ならないな」
髪をかきあげたそこには、レオン様の顔があった。
「どうして!?」
思わず声が裏返る。
「なんで急にポンコツになるんだよ。アルバートに言えば俺まで流れてくるに決まってるだろ」
「嘘!アルバートは絶対秘密にしてくれると思ったのに…!」
「残念だったな、ほら行くぞ」
くすっと笑ったその顔はとても楽しそうで。
当然のように歩き出す彼を、慌てて引き止める。
「ちょ、待ってください、アンが──」
「アンは今日来ない」
「え!?」
「アンの代わりに俺が一緒に買い物に行く」
「えぇ!?」
そうなんですね、となるわけがない。
ただ、よく考えたら今朝のアンはおかしかった。
『お嬢様、今日はこちらの新しいお洋服にしましょう!』
『いや、ただのお忍びでのお買い物だし、いつもの服で大丈夫よ?』
『いえいえ!さ、お洋服に合わせて、髪型も化粧もバッチリ任せてくださいね!』
やたら浮かれているなと思っていた。
まさかこういうことだったとは。
そんなことを思っていたら、抵抗する間もなくそのまま腕を引かれ、あっという間に馬車に乗り城を出発してしまったのだった…。




