EP.019
──とは言ったものの、何から調べればいいのやら。
別にこれといった情報がある訳でもなく、何か頼れる伝手があるわけでもない。
うちの事情…公爵家のことを詳しく理解する人物なんて、あの二人以外にいるのだろうか。
どうしたものか…と頭を抱えていたその時。
私の視界を見慣れた赤髪が横切って行った。
今この城で、唯一私が頼れそうで、事情を知っていそうな人物。
「アルバート!!」
「うおっ!えっ、マリアンヌ!?な、どうしたんだよ急に」
「ちょ、ちょっとあの、こっちに!」
有無を言わさず彼の腕を掴んで歩き出す。
「は!?え、ちょ、待てって!」
半ば引きずるように、たまたま空いていた近くの空き室に押し込んだ。
「えっちょっと、ロゼリア、流石に俺マリアンヌと婚約してるしそういうのは…ロゼリアは可愛いけどさ…」
「…」
「いや、ごめんって。冗談じゃん。そんな死んだ目で見るなって」
コホン、わざとらしく咳払いをして誤魔化すアルバートを尻目に、部屋に置かれていたソファーへ腰掛ける。
アルバートも、頭を掻きながら、どさりと向かいのソファーに腰を下ろした。
「急にごめんね。…あのね、ちょっと聞きたいことがあって」
「聞きたいこと?レオンに聞いたほうが早いんじゃねーの?」
「レオン様に聞けない話なの!わかるでしょ」
この言葉に、アルバートは一瞬面倒くさそうな顔を見せた。
「うわ〜…俺を面倒事に巻き込むなよ」
そうは言いつつ逃げずに話を聞いてくれる──渋々ではあるが。
アルバートは相変わらず優しい友人である。
初めてあったときからずっと変わらない。
「…家のことを知りたいの。公爵家の…それに、今、お兄様とレオン様は何をしてるの?」
僅かに空気が凍った気がした。
「いや、俺から言えないって!そんなの!」
「お願い!何もしないから!」
「絶対嘘だろ!」
「本当に!本当だから!」
ソファーの間においてあるテーブルに身を乗り出すように話す私と、のけぞるアルバート。
「何もしないって言って、本当に何もしなかったことないじゃん!」
「今回は本当だから!」
「"今回は"ってもうその時点でだめだから!」
どちらも譲らぬ押し問答が続くことおおよそ三十分。
はぁ〜、と大きなため息をつき、根負けしたのはアルバートだった。




