EP.013
「……殿下、一応、私のいる前でそういう雰囲気は控えてください」
「はぁ?そういうって、別になにも変なところはなかっただろ」
「…まぁ、はい。…一旦いいそれでいいです」
ゴホン、と兄がわざとらしく咳払いをし、改めて話を再開しようとしたその時だった。
コンコン、と控えめでどこか急いだ様子のノック音が響いた。
「お話中申し訳ありません。
レオナルド殿下、アーサー様。臨時会議が入ったため、至急ご出席願いたいと言伝をお預かりいたしました。
アルバート様は先程到着され、そのまま会議へ向かわれています」
「会議…昨日の件か」
兄が小さくため息をつく。
「仕方ないな。ロゼリア、悪いけど、残りはまた戻ってきてからでもいい?」
「あ……はい、私はもちろん。大丈夫です」
「ありがとう」
そう言って立ち上がる兄の後に殿下も続く。
「じゃあ、行ってくる」
「…行ってらっしゃいませ」
二人が部屋を後にし、扉が静かにしまった。
残された私は、しばらくその場から動けなかった。
この部屋を出ていいのかもわからないし、だからといって、ただ座っているのも落ち着かない。
───アンに、今の話を相談してみよう。そう思い声をかけようとしたその時。
「ロゼリア!おはよう!」
勢い良く開かれた部屋の扉から、快活な声とともに姿を表したのは、アルバートと一緒に登城したのであろうマリアンヌだった。
「マリアンヌ!?おはよう…って、勝手に入って大丈夫なの?」
「さっきそこでアーサー様とレオナルド殿下に会って、ロゼリアが部屋にいるからって許可をもらってるから大丈夫!」
「そ、そうなのね。それならいいんだけど」
(まるで、自室のように入ってくるからびっくりしたわ)
でもきっと、それだけ気を許せる間柄になっているのだろう。
私が外に出れなかった五年間は、ちょうど子供から大人になる時期だった。
私の記憶のある頃では、少なくともレオナルド殿下もお兄様もマリアンヌも、私の共通の知人、というような間柄だった。
きっと私のいなかった五年で仲良くなったんだと思うと、少し、ほんの少しだけ、羨ましかった。




