episode26
「.......」
私はそのままの足で大学を出た。貴重品以外は全部研究室に置いてきたまま。
響さんとは悪い雰囲気で離れた。
響さんのコートを強く握りしめたまま、行方も知らずに歩き続けた。
今にも雪や雨が降りそうな曇天だった。
私はいつの間にか、来たことのない裏道に来ていた。
「ここ、どこ.....」
「うぇ〜い!」
なんだか危ない輩がたくさんいた。
やだ。
こんなところ早く抜け出そう。
私はそう思い来た道を戻ろうとした。
その時だった———
「おねぇさんさ!俺らと遊ぼうよ!」
「す、すみません、大丈夫です」
「えーなんでよー!」
「本当に大丈夫です」
「俺らと遊ぶ方がもっと楽しいよー!」
「離してくださいっ!」
私は掴まれた腕を勢いよく追い払った。
すると、男は目の色を変えてこちらを睨んだ。
「てめぇ、女だからって何すんだよ!」
「きゃあ!」
肩を押されてその場に倒れ込んだ。
「や、やめてください!」
「うるせぇなー!静かにしろって.....言ってんだろ!」
「やめて!」
咄嗟に自分の腕で顔を守った。そのおかげで殴られることはなかったけど。
「てめぇ、ムカつくなぁぁぁ!!!」
「や、やめて———えっ?」
「!?誰だテメェ!うわっ!!」
ガチャァァン!!
男は押し倒されて後ろに倒れた。
「凛ちゃん. . . . !なんでこんなところに.....」
「響さん」
なんで、ここにいるの。
「ここは危ないから行こ」
響さんは私の腕と肩を持った。
「なんでここが.......」
「それはあとでいいから、ここを抜けよう」
手には温もりがあって、もう離さないと力が込められてる。
「あぶない!!」
「え———?」
金属の鈍い音がした。
カランカランと、地面にバッドが転がった。
響さんは私に覆い被さるようにしていた。
「ひび、きさん?」
バタン!!
「響さんっ!!!」
響さんは、その場で倒れた。
「ひびきさん!!ひびきさん!」
なんで、なんで倒れたの!?
何度声をかけても返事はない。
「こら!君たち何やってるんだ!」
「やっべ!」
「待ちなさい!」
狭い路地裏に、数人の見回りの警察官が来た。
「君!大丈夫か!?」
「響さんが....響さんがっ!!」
「もしもし?こちら吉村、怪我人がおり、ショック状態です。至急、救急をお願いします」
「響さん!!響さんってば!!!」
私は響さんを膝の上に乗せた。
「起きてよ!!何やってんのよ!!!」
ピーポー!パーポー!
しばらくして、救急車が到着した。
「すみません通ります!」
「響さん!!」
「お姉さん、一度離れてください」
「やだ!!ひびきさん!!!」
響さんはストレッチャーの上に乗り、救急車の中に運ばれていった。
「お姉さん、付き添いの方ですか?」
「はい....」
「では、一度一緒に来ていただいてもよろしいですか?」
「分かりました」
私は小走りして救急車の中に入って行った。
「響さん」
「26歳男性、頭から出血あり」
さっきの音.....
「さっき、知らない男の人に金属バッドみたいなので、殴られて」
「分かりました」
鼻をすする音が止まない。
涙が止まらない。
「響さん....響さん———」




