第183話
それからしばらくして…
すぐに嫌気が差すと思っていた私の予想は覆された
マイコは私の苦しい訓練を日々、耐え抜いた
涙こそ、何度流しただろうか
だけど、愚痴や文句や泣き言を口に出す事はまったく無かった
私との厳しい訓練漬けの毎日
嫌にならないんだろうか
しかし、マイコは黙々と訓練を受けていた
しかも、まだ料理も出来ない彼女に私が料理を作ってやると嬉しそうに食べてくれる
「…美味しいです…エヘヘ」
なんて、少し微笑みながらモグモグと口に運ぶマイコはなんだか愛らしかった
ーバシッガシィッ!ー
ある日、マイコは私と実戦を踏まえた訓練をしていた
「ほらほら!そんなんじゃ私に一撃すら与えられないよ!!このウスノロ!」
ーバシィッ!ー
「ガフッ!!」
私の蹴りに声を上げるマイコ
そして膝をつく
「…もう終わりかい?」
「…………!!まだ…!」
ヨロヨロと立ち上がるマイコ
しかし、私の蹴りやパンチを何発も浴びて、さすがに私もやめにしようと思っていた
「…やめだ…!」
「…嫌です!!」
「…アンタ、何発喰らえば気が済むんだい?」
「まだ…やれます!…あ…!」
フラフラとなり、私に寄りかかってしまう
「ったく…ほら、少し休もうぜ?私だって疲れてるんだからさ」
「は…はい…」
私はマイコを座らせる
そして、私はいつも厳しい態度をしていたので、たまには…と思ってマイコと話をする事にした
「なぁ、マイコ」
「はい…」
「アンタは…なかなかのモンだ…」
「いえ…私なんか…」
「いや、まだ訓練の最中だけど…私の訓練でここまで根を上げないのはアンタが初めてだ」
「………………」
マイコは私をジッと見つめる
「文句や泣き言も言わないしな…なぁ、辛かったり、文句があれば言って構わないんだぞ?」
マイコは首を横に振る
「私は別に…ありません…」
その答えはウソだろうと思った
結局、上司である、そして厳しい私に遠慮して言えないだけ…
そう思っていた
「…あ、でも…1つ…」
なんだ、やっぱりあるんじゃないか
けど、改めて言われるのって結構ドキドキする
「良いですか?」
「お…おうよ!」
「お酒飲んで、デッカいゲップはやめてください…」
「え?」
「ヒトミさんも…女性ですし…」
「…それだけ?」
「はい…」
「…ふっ…フハハ♪アッハッハ!」
「な、何がおかしいんですか?」
「アンタがそういう事言うとは思わなかったからさ」
マイコは不思議そうに私を見つめる
そして、私は聞きたいと思っていた事があった
「…なぁ、正式な死神になって現世に戻ったら…アンタは何がしたいんだ?」
マイコはしばらく考え、そして
「…私…生まれてすぐに死んじゃったから…お友達が欲しいです…」
「そうか…そうだよなぁ…私と毎日訓練してちゃつまらないよなぁ」
「そ、そんな事ないです…厳しいとは思うけど…ヒトミさん…優しいですし…」
「私が…優しい…?アンタ本気で言ってんのかい?」
ーコクリー
マイコはゆっくりと頷いた
私が優しい
そんな事を言われたのは初めてだった
「…私は…お母さんもお父さんも知らないし…ご飯作ってくれる人ってヒトミさんが初めてなんです…美味しいし…」
「あんな飯がかい?ほとんどパスタとかカレーのローテーションだぞ?」
ぶっちゃけ、私は料理は得意ではなかった
今でこそマイコが作ってくれてるけど…
預かった弟子に、ひもじい思いをさせてはいけないという義務感だけなのに…
「ん〜欲を言えば、サラダがあれば良いかなと…」
「サラダか…フフ!分かった!フフフフフフフ!」
……初めて、訓練を施した部下を可愛く思えた
私は…気付かなかっただけで、私は可愛く思っていたんだろう
この会話がキッカケでマイコとの距離がグッと近くなった、
ーガシッー
マイコの頭をほんの少し強めに掴みワシャワシャと撫でる
そういう風にしたいと思ったのも初めてだった
「痛た…」
「痛いかい?フフ…♪アンタは…しっかりと育ててやる…責任を持つ…最後まで…」
「…はい…」
「そーいや他に何かないのかい?生き返ったらしたい事」
「………………」
マイコは考え、そして
「好きな男の子作って…恋愛したいです…」
「そうか…わかった…!フフ!そりゃそうだよな…アンタも女の子だもんな!」
ーワシャワシャワシャワシャー
マイコよ頭を撫でまくる
「痛いですってば…」
目を瞑りながら私に頭を撫でられまくるマイコ
思えば、あの時は…
本当に楽しかったと思う…




