表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クーリングクレジット:cooling credit 第四部  作者: マスター


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
13/24

第49話 18分の冷却ライン

第49話は、共同冷却ラインの過負荷まで残り18分という、第四部でもっとも時間制限の厳しい回です。

涼しいミストを止めるのか、それとも危険を承知で動かし続けるのか。ユウトは「冷やすこと」と「守ること」を両立させる方法を探します。

 共同冷却ラインの過負荷まで、残り18分。


 フリーマーケット会場の端では、突然動き出したミストが白く広がっていた。


 シューッ……。


 熱気を含んだ空気が、少しだけやわらぐ。


「涼しい!」


 子どもの声が上がる。


 日陰の少ない場所で立ち尽くしていた人たちが、ミストの近くへ集まり始めた。


「助かるなあ」


「さっきまで暑かったから……」


 その光景だけを見れば、成功だった。


 けれどユウトのスマホには、赤い文字が点滅している。


『共同冷却ライン:未承認稼働を検出』

『過負荷まで:17分32秒』


「止めるべきか」


 ハルが、画面とミストを交互に見た。


「でも、今ここで止めたら、人が一気に日向へ戻る。」


「止めなければ、全部が止まる可能性がある」


 ナギが言う。


 彼女は温度計を片手に、配管の分岐を確認していた。


「過負荷って、待合所の装置だけじゃない。

 共同ラインにつながっている冷却機能全体に影響するかもしれない。」


 蒼真が苛立たしげに腕を組む。


「なら、ラインを切ればいい。

 今動いてるミストだけ止める。」


「どこで?」


 ハルが聞く。


「バルブか制御盤だろ」


「さっき機械室で何をやったか、忘れたのか」


 蒼真の表情が硬くなる。


「……分かってるよ。」


 ユウトは、冷却ラインの地図を見つめた。


 旧待合所。

 外部冷却ユニット。

 フリーマーケット会場のミスト。

 そして、さらに先へ伸びる不明な接続線。


 分岐は三つ。


 ひとつは待合所。

 ひとつは会場。

 そして、もうひとつは――地図上で灰色になっている。


『接続先未確認』


「この灰色のライン……」


 ユウトが指で画面を拡大する。


 線は会場の反対側へ伸び、古い倉庫群の方向へ向かっている。


「ここが動いてるから、負荷が高いんじゃないか?」


「確認する時間はない」


 ハルが即答する。


『過負荷まで:16分48秒』


 ミナトが端末を操作しながら近づいた。


「現在、管理会社と倉庫会社に連絡を継続しています。

 ただし、遠隔停止に必要な管理権限の確認には時間がかかります。」


「時間がないんです」


 ユウトは言った。


「会場側だけ、出力を下げられませんか?」


「現場からは、操作できない仕様です。」


「じゃあ、使う量を減らせばいい」


 ナギが言った。


 ユウトが振り返る。


「使う量?」


「ミストは、ノズル全部が同じように動いている。

 でも、人が集まっているのは中央だけ。

 端のノズルまで全開にする必要はない。」


「止めるんじゃなく、絞る?」


「物理的にできるかは分からない。

 でも、散水ノズルの口径を一部だけ狭めれば、排出量は下がる。」


「勝手に触ったら危なくないですか?」


 蒼真が言う。


「水の出口側だ。

 機械室の制御盤よりは安全に確認できる。」


「でも、ノズルを塞いだら圧が逆に上がるかもしれない」


 ハルが指摘する。


 全員が黙る。


 ただ絞ればいいわけではない。


「……待って」


 ユウトは、昨日の旧待合所の男性の言葉を思い出した。


『夜勤明けも。

 子ども連れも。

 荷物を持った人も。

 暑い日も、寒い日もな……』


 待合所は、昔から誰でも休める場所だった。


 なら、冷却ラインも“全開で冷やし続ける装置”ではなかったはずだ。


「待合所の中に、古い案内がありましたよね」


 ユウトはミナトに聞く。


「利用時間の案内?」


「はい。

 あそこに、何か運用のメモはありませんでしたか。

 昔の人が、どうやって使っていたか。」


 ミナトはすぐに端末を検索する。


「……旧設備図に添付された運用記録があります。」


「読めますか?」


「一部だけ。

 紙が劣化していて、復元された箇所は限られます。」


 ミナトの画面に、古い文字が表示された。


『高温時は、連続運転を避けること』

『15分稼働、5分休止を基本とする』

『待合所利用時は、外部噴霧を低出力に切替』


 ユウトは息をのんだ。


「これだ」


「交互運転……」


 ナギが言う。


「待合所の室内冷却と、外のミストを同時に最大出力で回さない。

 昔からそういう運用だったんだ。」


 ハルが地図を見る。


「でも、待合所はまだ正式に使えない。」


「今すぐ中を開放しなくてもいい。

 扉の前に日陰を作って、短時間の待機場所にする。

 その間、ミストを五分だけ休ませる。」


「ミストを止めたら、人は不満を言うぞ」


 蒼真が言った。


「だから、ただ止めるんじゃない」


 ユウトは会場の中央へ走り出した。


「“次に涼める場所”を先に作る!」


「おい、ユウト!」


 ハルたちも後を追う。


 残り時間、14分03秒。


 ユウトは会場の管理者へ駆け寄った。


「すみません!

 ミストを五分だけ止める必要があります!」


「え? 今、みんな使ってるぞ」


「分かってます。

 でも、このまま全開で使うと、ラインが止まるかもしれない。」


「止まる?」


「会場だけじゃなく、待合所の冷却も、ほかの場所もです。」


 管理者は、ミストの下に集まる人たちを見る。


「じゃあ、どうするんだ」


「待合所の屋根下を、五分だけの休憩待機所にします。

 中には入れないけど、扉の前なら日陰がある。

 出店者さんに、簡易椅子とシートを借りたい。」


「そんな短時間で?」


「やります」


 ユウトは即答した。


「今、ここで動ける人がいます。」


 ハルがすぐに、会場の備品置き場へ走る。


「俺は椅子を持ってくる!」


「私は案内を作る」


 ナギは段ボールと太いマーカーを受け取った。


 蒼真は一瞬迷った。


 それから、ミストの近くにいる人たちへ向き直る。


「俺は、人を移動させる。

 ……ただし、文句を言われたら手伝えよ。」


「もちろん」


 ユウトは言った。


 五分の休止。


 それは短いようで、利用者には長い。


 説明がなければ、不満になる。

 代わりの場所がなければ、ただ暑くなる。


 だからユウトたちは、止める前に動いた。


 待合所の屋根下に、折り畳み椅子を六脚。

 出店者が貸してくれたブルーシートを壁際に敷く。

 古着屋の店主が、商品用の小型扇風機を持ってくる。


「これ、コンセントは使えるか?」


「屋外用の延長なら!」


 管理者がコードを引いてくれた。


 ナギが段ボールに書く。


『ミストは5分休止します

 こちらで休めます

 次の冷却を守るための調整です』


「“守るため”って入れたんですね」


 ユウトが言う。


「止める理由を、ちゃんと見せた方がいい」


 ナギはペンを置く。


「我慢してもらうんじゃない。

 次も使えるようにする。」


 蒼真が、ミストの近くで大きな声を出した。


「すみません!

 このミスト、五分だけ調整に入ります!

 待合所の屋根下に休憩場所を作っています!」


「えー、止まるの?」


 子どもの声。


「すぐ再開するの?」


 別の人が聞く。


 蒼真は、少し詰まりながらも答えた。


「再開する。

 だから、今ここで全部止まらないようにする。」


 その言葉は、妙にまっすぐだった。


 人の流れが、少しずつ待合所の方へ動き始める。


 ユウトは、管理者の端末を見る。


「ミスト、休止できますか?」


「手動の止水なら、外側のバルブでいける。

 ただし、再開も手動だ。」


「お願いします」


 管理者がうなずく。


 カチン。


 バルブが回る。


 シューッ……という音が、ゆっくり弱くなる。


 白い霧が消えていく。


 同時に、ユウトのスマホに数字が表示された。


『共同冷却ライン負荷:92%』


「下がった!」


 ハルが叫ぶ。


 だが、まだ高い。


『過負荷まで:8分21秒』


「五分止めても、まだ危ないのか」


 ユウトは画面を見つめた。


 ナギが、配管の温度を測る。


「会場側は下がってる。

 でも、灰色の接続先がまだ動き続けてる。」


「倉庫側か」


 ハルが言う。


「誰かが使ってる?」


 蒼真が、地図をのぞき込む。


「待て。

 灰色ラインの先……倉庫じゃない。」


「え?」


「この位置、倉庫の裏じゃない。

 さらに道路を越えた先だ。」


 ユウトが画面を拡大する。


 線の終点に、かすかな建物名が表示された。


『旧・夜間配送待機所』


「夜間配送待機所……」


 ユウトは、その名前に引っかかった。


 街外れ。

 休む場所が少ない。

 旧待合所と同じように、かつて誰かが使っていた場所。


 そしてその直後、ミナトの端末が鳴った。


「管理会社から連絡です」


 全員が振り返る。


「共同冷却ラインの接続先には、旧待合所と会場だけでなく、夜間配送待機所が含まれています。」


「今も使われてるんですか?」


「……はい」


 ミナトの顔が、少し強張った。


「しかも、今夜から大型配送の臨時シフトが入る予定です。」


「今夜?」


 ハルが言う。


「じゃあ、そこが止まったら……」


「夜勤に入る配送員が、休める冷却場所を失う可能性があります。」


 ユウトのスマホが震えた。


『共同冷却ライン負荷:89%』

『次の優先対象を検出』


『夜間配送待機所』


 画面には、新しい通知が重なる。


『限定チャレンジ:第2条件を開放』

『旧待合所の再接続後、夜間配送待機所の負荷を確認せよ』


 その下に、小さく報酬が表示された。


『追加推定報酬:0.100 CC』


 ユウトは画面を見たまま、息を止めた。


 0.100 CC。


 これまでで、最大の数字だった。


 しかし、残り時間はまだ減っている。


『過負荷まで:6分57秒』


 旧待合所を完成させる。

 会場の冷却を守る。

 そして今夜の配送待機所にも向かう。


 ユウトの前には、急に大きすぎる道が開いていた。

第49話では、共同冷却ラインの過負荷に対して、ユウトたちが「止めるか、続けるか」の二択ではなく、交互運転と仮設休憩所という第三の方法を作る展開にしました。


今回のポイントは、以下です。


旧設備の運用記録から、「15分稼働・5分休止」という過去の仕組みを発見する


ミスト停止の前に、待合所の屋根下へ代替の休憩場所を作る


ハル、ナギ、蒼真もそれぞれの役割で動き、即席のチームとして機能する


共同冷却ラインの先に、夜間配送待機所という新たな拠点があると判明する


ユウトは、ただCCを稼ぐために設備を動かすのではなく、「次も使えるように止める」という判断をしました。

その結果、夜間配送待機所という、より大きな追加報酬0.100 CCの可能性が開きます。


ただし、目の前の共同冷却ラインはまだ完全に安全ではありません。

次回は、残りわずかな時間で旧待合所の冷却をどう再接続するのか、そして今夜の配送待機所へ誰が向かうのかが焦点になります。


原案・構想:マスター

物語構成・本文作成:リアル(Perplexity)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ