表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クーリングクレジット:cooling credit 第四部  作者: マスター


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
12/21

第48話 冷却機能の向こう側

第48話は、旧待合所・限定チャレンジの核心に入る回です。

ユウトは「安全確認」と「報酬効率」という二択の前で、自分の成り上がり方を選びます。そして機械室で見つかるのは、ただの古い冷却装置ではありませんでした。

 旧待合所の奥。


 薄暗い廊下の先に、機械室の扉があった。


 錆びた金属扉。

 古い注意書き。

 かすれた赤文字。


『関係者以外立入禁止』


 ユウトのスマホには、二つの選択肢が浮かんでいる。


『安全確認を優先する』

『報酬効率を優先する』


 残り時間は、2時間41分。


「……露骨だな」


 ハルが画面をのぞき込んだ。


「ゲームみたいに見せてるけど、要するに急ぐか、確認するかだ。」


「急げば、報酬が増える?」


「たぶんな。

 古い機械室を早く再接続できれば、“最初に成功したプレイヤー”として評価される。」


 短髪の男性が、少し離れたところで言った。


「なら、答えは決まってる。」


 彼は迷わずスマホを操作した。


『報酬効率を優先する』


 ピロン、と軽い音が鳴る。


 短髪の男性の画面に、新しい表示が出た。


『効率優先ルートを選択しました。

 先行調査権を一部付与します。』


「ほらな」


 男は機械室の扉に近づく。


「待ってください!」


 ユウトが声を上げた。


「救急隊は、まだ建物の安全確認を終えてない。

 中に入るのは危ないです。」


「さっき人が倒れていた場所とは違う。

 ここは機械室だ。」


「だから危ないんですよ。

 古い配線、古い機械、何が残ってるか分からない。」


「怖いなら、そこで見てろ」


 男は肩をすくめた。


 ハルが低い声で言う。


「名前くらい名乗れよ。」


「ソウマだ」


「俺も相馬だけど」


 ユウトが反射的に言った。


「そっちの相馬じゃない。

 蒼真だ。」


 蒼真は扉の取っ手を握る。


「俺は、待って報酬を逃す方が嫌いなんだ。」


 ギィィ、と扉が開いた。


 中から、冷たい空気が流れ出した。


 ユウトは息をのむ。


 冷気。


 待合所の中が、外より少し涼しかった理由。


「本当に、動いてる……」


 機械室の中には、古い大型装置が並んでいた。


 壁に沿った太い配管。

 点滅している小さなランプ。

 年代の古い制御盤。

 そして、低い振動音。


 ブゥゥゥン……。


 完全には止まっていない。


 蒼真は一歩、中へ入った。


「ほら。

 問題ない。」


 その瞬間。


 ピピピピピッ!


 制御盤から、鋭い警告音が鳴った。


 赤いランプが一斉に点滅する。


『圧力異常』

『換気停止』

『点検未実施』


 ユウトのスマホにも、警告が表示された。


『危険判定:未確認機器に近接しています。

 安全距離を確保してください。』


「蒼真、出て!」


 ハルが叫ぶ。


「大丈夫だ。

 ただの古いエラー表示だろ!」


 蒼真が制御盤へ手を伸ばす。


 次の瞬間。


 ガンッ!


 機械室の奥で、何かが大きく揺れた。


 床が震える。


「うわっ……!」


 蒼真がバランスを崩した。


 装置の横から、白い蒸気のようなものが細く噴き出す。


「全員、下がれ!」


 ミナトの声が飛ぶ。


 会場管理者が、すぐに廊下の入口へロープを張る。


「機械室から離れてください!」


 蒼真は顔をしかめながら、慌てて外へ出てきた。


 手は無事。

 転びかけただけ。


 しかし、その顔にはさっきまでの余裕がなかった。


「……今の、何だ」


「だから言っただろ」


 ハルの声は厳しい。


「機械は止まってなくても、安全とは限らない。」


 ユウトはスマホを見た。


『効率優先ルート:リスク判定を確認』

『安全確認ルート:追加情報を取得可能』


 蒼真の画面には、赤いマークが増えている。


『安全リスク加算:-0.010 CC相当』


「マイナス……?」


 蒼真が画面をにらむ。


「そんなの、聞いてないぞ。」


「ルールに書いてあった」


 蛍光ベストの女性が、冷たく言った。


「安全性が評価項目。

 読まずに選んだだけでしょう。」


 蒼真は何も返せなかった。


 ユウトは、自分の画面を見つめる。


 まだ、選択は残っている。


『安全確認を優先する』

『報酬効率を優先する』


 残り時間は、2時間23分。


 ここで安全確認を選べば、時間を使う。

 その間に、ほかのプレイヤーが外側の休憩拠点を完成させるかもしれない。


 報酬を最優先するなら、今こそ急ぐべきだ。


「ユウト」


 ハルが言う。


「俺は安全確認を選ぶ。

 お前はどうする。」


 ユウトは、あの救急車へ運ばれた男性の言葉を思い出した。


『ここは、昔……誰でも休めたんだ』


 休める場所にしたい。


 でも、危ない場所に人を入れてしまえば、意味がない。


「……安全確認です。」


 ユウトはボタンを押した。


『安全確認を優先する』


 画面の色が、青に変わる。


『安全確認ルートを選択しました。

 周辺情報へのアクセスを開放します。』


 地図が表示された。


 旧待合所。

 機械室。

 屋根。

 換気口。

 非常口。

 そして、建物の裏側にある、細い通路。


 その先に、見慣れない表示があった。


『外部冷却ユニット』


「外部……冷却ユニット?」


 ハルも、自分の画面を見ている。


「機械室の中じゃない。

 裏側に、もう一つ装置があるのか。」


 ミナトが近づいてきた。


「安全確認ルートを選んだ方には、建物の旧設備図が開示されます。

 この待合所は、室内機だけで冷やしていたわけではありません。」


「外部ユニットが、まだ生きてる?」


「可能性はあります。

 ただし、確認には建物裏手へ回る必要があります。」


「じゃあ行きましょう」


 ユウトが動こうとすると、ミナトは止めた。


「待ってください。

 裏手には別の問題があります。」


「問題?」


「建物の裏は、会場の管理区域ではありません。

 隣接する倉庫会社の敷地です。」


 ユウトは地図を拡大する。


 確かに、待合所の裏側にはフェンスがある。

 その向こうには、古いコンテナと、倉庫の搬入口。


「許可を取れば……」


「日曜日なので、倉庫会社の管理者とまだ連絡がついていません。」


「また鍵と許可の問題か」


 ハルが苦く笑う。


「でも今度は、扉じゃなく土地の境界だ。」


 残り時間は、2時間12分。


 そのとき、蛍光ベストの女性が言った。


「待って。

 裏に行かなくても、外部ユニットの状態を見られるかもしれない。」


「どうやって?」


 女性は、待合所の屋根を見上げた。


「換気ダクト。

 あれ、外部ユニットにつながってるなら、風の流れで稼働状態が分かる。」


「屋根に上がるのか?」


 蒼真が言う。


「危ないでしょ」


「上がらない。

 外から確認するだけ。」


 女性は、持っていた小さな温度計を取り出した。


「風向きと温度差を測る。

 外に熱を逃がしているなら、排気口の近くは周囲より熱いはず。」


 ユウトは目を見開いた。


「それで、機械室を触らずに冷却機能を確認できるかもしれない。」


「そういうこと。」


 ハルが小さく笑う。


「名前は?」


「ナギ」


「ナギさん。

 やりましょう。」


 四人は、待合所の外側へ回った。


 ユウトは案内板の裏から、換気ダクトの出口を探す。

 ハルは周囲の安全を確認。

 ナギは温度計を使い、壁際の温度を測る。

 蒼真は少し離れて、悔しそうな顔で端末を見ていた。


「……俺も手伝う」


 蒼真が言った。


「余計なことしなければな」


 ハルが返す。


「分かってる」


 蒼真は、壁際の配管を指差した。


「この管、途中で二股に分かれてる。

 たぶん外部ユニットだけじゃない。

 別系統がある。」


 ユウトが地図を見る。


「ほんとだ。

 旧設備図にも、途中で分岐がある。」


「何につながってる?」


 ナギが聞く。


 ユウトは、画面を拡大した。


 細い線の先は、待合所の屋根を越え、会場の端へ伸びている。


 そこには、古い表記が残っていた。


『街外れ共同冷却ライン』


「共同……冷却ライン?」


 全員が黙る。


 待合所一棟だけの装置ではない。


 もしかすると、会場の一部。

 あるいは倉庫。

 さらに別の場所までつながっている。


 ユウトのスマホが、強く震えた。


『重大発見を確認。

 限定チャレンジの評価条件を更新します。』


『新目標:

 旧待合所を開放するだけでなく、

 “共同冷却ライン”の接続先を特定せよ』


「……話がでかくなったな」


 ハルが言う。


 そして、その直後。


 会場の向こう側で、突然、歓声が上がった。


「ミストが出た!」


 誰かの声。


 フリーマーケット会場の端。

 これまで動いていなかったはずの古い散水ノズルから、白い霧が噴き上がっている。


 シューッ……。


 夏の光の中に、細かな冷却ミストが広がる。


 しかし、ユウトの画面には赤い警告が出ていた。


『共同冷却ライン:未承認稼働を検出』

『過負荷まで、残り18分』


 ユウトは、ミストを見た。


 涼しい。

 人が喜んでいる。


 けれど、このままでは何かが止まる。


「……次は、止めるか。

 それとも、使い切るかだ」


 ハルの言葉に、ユウトは息をのんだ。



第48話では、ユウトが「安全確認」を選ぶことで、単なる旧待合所の再利用を超えた“共同冷却ライン”の存在へたどり着きました。


ユウトは今回、安全を優先しました。

しかしそれは、ただ慎重だったからではありません。安全側の情報を拾ったことで、より大きな報酬や影響力につながる可能性がある発見に到達しました。


次回は、残り18分の過負荷にどう対処するかが勝負になります。

ミストを止めれば、目の前で涼んでいる人たちをがっかりさせるかもしれない。使い続ければ、共同冷却ライン全体が止まる可能性がある。ユウトたちは、限られた時間で“冷やしながら守る方法”を探すことになります。


原案・構想:マスター

物語構成・本文作成:リアル(Perplexity)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ