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備蓄していた俺、アパートの部屋ごと転移。異世界で宿屋始めます。  作者: 島田まかろん三世


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3/8

風呂

 ハクが部屋の外をぐるりと回って、玄関までやって来た気配と、野太い叫び声。


 俺は震える手で、ドアのチェーンをかけたまま、数センチだけ隙間を作った。


 そこにいたのは、身長は低いが横幅が俺の倍はある、もじゃもじゃの髭を蓄えた小山のような男だった。


 ハクに襲われて――いや、じゃれつかれている……おじさん?


「おい! やめろ! ててててててっ……。爪を立てるな!!」


 俺はチェーンを外し、外に出た。


「ハク。やめなさい」


「おお。おぬしがこやつの契約主か。まったく……野生のフェンリルに喰われるかと思ったわい」


 フェンリル――ん? 神話に出てくる巨大な狼とか、幻獣の?

 ハクが?


「大丈夫ですか?」


「大丈夫かどうかで言ったら大丈夫ではない。わしはこやつの涎でべたべたじゃわい」


 見ると確かに、おじさんは、大変なことになっていた。


「……すみません。うちのハクが……」


「まあ、よい。……それより。おい、おぬし。この『黄金の香気』は、おぬしの仕業か?」


 黄金の――香気?


「これじゃ。この……」


 おじさんは目を閉じ、周囲の匂いをくんくんと嗅ぎ始めた。


「何とも言えん、胃の底をきゅうっとされるような。掴まれるような匂いじゃ」


 ぐぅぅぅ、と。

 それは、おじさんの腹の音だった。


 ああ! カレーか!?


「たぶん……はい」


「おお!! すまんが、その。一口だけでも、食わせてはもらえんだろうか?」


「ああ……はい。もちろんです」


 ハクがこんなにしてしまって、断れない。

 だが。


「それよりあの。その恰好のままでは申し訳ないので。よかったら、風呂をお貸ししますが」


 見知らぬおじさんではあるが、ハクもいるし、危険はないだろう。

 そもそも、おじさんをこんなにしたのは、ハクだしな……。


 するとおじさんは、目をまん丸に見開いた。


「風呂!? 風呂じゃと――!?」


 おじさんの絶叫が、玄関前に響き渡った。


「そんなもの、貴族の邸にしかないぞ――!!」


 どうやら俺は、家賃6万8千円のアパートを、この世界の宮殿レベルに変えてしまったらしい。


 いいだろう。走馬灯なら、豪華な方がいい。

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