完結記念~ノルン家兄妹によるネタバレ座談会3~
「さて、そろそろか……」
「もう~テンション低いですよ、ミスティ兄様!」
「そうですよ、兄さん。
栄えある最終回(予定)なので、
ここは長兄らしく、びしっと決めて下さい」
「ああ、はいはい……
ユナもシャスも手厳しいな。
分かったよ。
それじゃ好評かどうかは知らんが、キャラクター座談会――
トリを務めるのはノルン家長男ことミスティ・ノルン、
つまり俺だ」
「それで兄さん」
「何だ、シャス?」
「今回はどのような話をメインに据えるんですか?」
「ん~そうだな……俺自身の設定でもいいが、
まず琺輪世界について少し解説してみるとするか」
「わっ、それ凄く興味があります!」
「まあ色々シリーズ化されている俺達が住むこの世界、
名称を<琺輪>という。
これは何故か分かるか、ユナ?」
「え~っと……
この世界の象徴たるアカシックレコードの別称、ですよね」
「だな。
正確に云えば転生前のユナが生前いた<地球>……
って、面白い名付け方だな。
絶対捻くれた学者か哲学者が名付けたろ、これ?
まあいいや。
上記を含む多元世界を創造した造物主から管理者を命じられた存在。
それが<琺輪>だ。
さすがの俺でもプロテクトが硬過ぎてまだアクセスに成功した事はないけどな」
「――兄様、そんな不届きな事を実行しようとしてたんですか……」
「おう。まずは思考し、その後は試行錯誤あるのみだろ?
あとまあ<琺輪>は世界管理者の名称でもあるし、管理部署の総称でもある」
「霊長の維持管理を司る<琺輪の守護者>……
師匠の務め先でもありますしね」
「そ、そうですね」
「顔が赤いぞ、ユナ(はん)。
まあそこに辿り着ければ何でも願いが叶うらしいがな。
まったく興味がないけど」」
「兄様には叶えたい願い等はないのですか?」
「ない。
っていうか、そんなもんがあったとしても自分で努力しなきゃ意味がないだろ?
誰かに与えられ押し付けられた幸福なんぞ俺は真っ平ごめんだな」
「それは兄さんが強いからですよ。
僕でしたら絶対……」
「ほい、ストップ。
お前はすぐ暗くなるしな。
あまり抱え込まずちゃんとミラナさんにも相談しろよ?(意地の悪い笑み)」
「よ、余計なお世話です!」
「はは。悪い悪い。
まあそんなこんなで俺達の世界は琺輪によって管理・維持されている訳だ。
まったくご苦労な事だ。
心地よい箱庭を作ってもらってるしよ。
一部納得のいかねえ事もあるが……そこは妥協しなきゃな」
「そうだったんですね。
ナイアル様からおおよその概要は伺っていましたけど。
そういえば――兄様」
「なんだ?」
「ナイアル様って邪神って伺ったんですけど……本当ですか?」
「その質問に答えるには<神>って存在について触れなきゃならない」
「というと?」
「まず――この琺輪世界の人々が一般的に言う神々……
これは<真族>と呼ばれる人類以前の覇者、
その中でも人族に好意的な存在である<神族>の事をいう。
丁度108柱いて世界に同化した後は神担武具に魂を宿す存在だな。
それ以外の世界に敵対した者たちの総称が現在で言う<魔族>だ。
読み方は違えど同種族、いわば同じコインの表裏といったところか」
「正確に言えばエントロピー限界を迎えようとする世界に対し、
滅びゆく定めを世界へその身を還元する事で救済しようとしたのが神族。
全生命体の存在消失と引き換えに琺輪に至る窓をこじ開け延命しようとしたのが魔族です。
似たような事はユナシリーズの世界蛇もやっていましたね。
あれは大陸全土に血の魔方陣を設置し起動を図っていたようですが」
「詳しいな。
さすがは元魔族の女王」
「からかわないで下さい。
魂に刻まれた記憶が色褪せないだけですよ。
まあそんな魔族達も精神生命体の柱である転輪王の封印と共に――
長い眠りにつきました。
つい最近までは」
「え?」
「学院シリーズでついに封印が解けた。
俺も魔族とバトルしてるしな。
っていうか、これ実はあれだ。
あの元勇者が加わった組織<六界将>が関わってる」
「規格外の力を持つ、異端者ばかりの組織ですか。
いったい何が目的なんでしょう?」
「そこは後程明かされる予定だろう。
普通は神々の封印を解くのは困難なんだが……
あいつら無駄に能力値高いからな」
「どのくらいなんですか?」
「甘く見積もっても今の俺以上」
「に、兄様クラスの人が6人も……」
「分かんねえぞ。
他にも協力者とかいそうだしな。
最終的な俺達ノルン兄妹の敵だけあって設定盛り込み過ぎだしな」
「まあ僕も兄さんも切り札がありますし」
「だな。
シャスなら天の位階に到達する技法こと<アストラルエンジェリング>、
俺なら聖霊皇に嘆願し同一を図る<聖霊皇降臨>の裏ワザがある」
「……もう、兄様達だけでいいんじゃないですか?」
「いや、正直これでも戦力的に不安なくらいだ。
こっちの陣営には魔導学院の漆黒の魔人や琺輪の守護者等の有力者もいるがな。
あっ、ユナ。お前は強制参加な。拒否権無し」
「うう……ミスティ兄様の鬼~(涙)。
そんなチートレベルの人達の間で私は役に立ちませんよ~」
「一番のバランスブレイカーが何を言ってる」
「まったくですよ、ユナ。
人外な彼らに本当の意味で通用するのは貴女の<符理解な編成統合>だけなんですからね。
自覚を持ってください」
「は、はい!」
「とまあ話がズレたな。
それで上記の神々だがこれはいわゆる亜神というカテゴリーに位置される」
「亜神?」
「そう、亜神<アークオブイース>……
彼らは<神に成ったもの>達です」
「んで例のナイアルことナイアルラトホテップだが……
あいつらは外なる神<アウターズゴッド>という真神の一柱だ」
「真神?」
「はい、真神<エルダーズゴッド>……
彼らは<神で在ったもの>達です」
「亜神と真神では何が違うんですか?」
「まあ同じ<神>というカテゴリーでも位階の高さや干渉力が異なる」
「それに真神は造物主に神として各世界へ配置された存在ですからね。
本当の意味での神様っていうのは多分彼らを指します」
「琺輪世界では<琺輪>だけが唯一それに当て嵌まるな。
あとは皆、亜神か亜神もどきだ。
それを踏まえた上でユナの質問に対する答えだが……
ナイアル達<外なる神>は邪神でもあるし、そうでもないといえる」
「え?」
「ある特定の民族に組する殺戮者、それが片や英雄と呼ばれるのに対し、敵対する法治国家では極悪人と呼ばれる事と一緒ですよ。
つまりは主観的なスタンスの違いにより彼らは役割を変える。
何故ならナイアル達<外なる神>の役割は停滞する世界の活性化です。
故に世界へ混沌を撒き散らす。
それは人類には大抵ろくでもない災厄にしかなりません。
だから邪神とも呼ばれます。
けど思想統一を図る国家などが世界を征服しようとすれば、英雄の介添え人として対抗勢力を作り上げサポートを行ったりもする」
「だから邪神ともいえるし、そうでもない。
迷惑な来訪者だな~とでも分類しとけ」
「結構投げやりですねー」
「だって応対するのが面倒くさいし、あいつら。
世界蛇との決闘の際に相対した堕魂<ダゴン>だってすっげー大変だったし」
「クトゥルフ神話でいう海神ですか。
仮にも水神の眷属ですからね。
兄さんじゃなきゃ比喩抜きに世界が終わってたでしょう」
「そんなハードな事が……」
「まあな。
こういった対処も力あるものの務め、ってやつだ。
過ぎた力を持つと自由よりもこういった束縛が多くなるんだぞ?
ユナも覚えておくといい。
さてと、随分話が長くなったな。
今回はこの辺にしておくか」
「ですね。
前後編で分けた方がいいかもしれません」
「確かにいっぺんに理解するのは大変ですね。
はい、分かりました~」
「んじゃまあ近い内に」
「「「さようなら~」」」




