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恥じらうほど妄想な虜となるようです

「ユナ様、確かに心の準備もなしに写真を見せたわたくしが悪かったです。

 この通り謝罪致します。

 でも、もう三日ですよ?

 お友達も心配されてますし、そろそろ出てきて下さいな」


 ノックと共に呆れたようなファル姉様の呼び声がします。

 しかし私は心を砕かれたショックでベットで毛布を被り寝込み中です。

 相棒となるのは漬け込んだ果実酒。

 この世界はワイン等を嗜む文化があるせいか、お酒は生活に身近な友です。

 子供でもお祝い事にはお酒を勧められますし、

 それを受容される世界観でもあります。

 梅酒みたいな感じで子供でも飲めるアルコールが多いですし。

 まあ今の私の様に酒量を超えればあまり意味はないかもしれませんが。

 毒物耐性系の常在スキルの所為で酔えない自分の身体を嘆きながら、

 手酌で呷って飲んだくれ、世の中の無情さを愚痴ります。

 酒のつまみは自家製ジャーキーとチーズ。

 燻製するところから取り組んだものだけあって絶品です。

 桜チップで燻し、程よく香りづけしたのもありますが、

 この姉様特製のタレがまた風味を与え……

 酒杯を煽るのです。ひっく。


「った~く、やってらんないれすよ~。

 あらしだってこーみえてねんれーいりょ~にがんばってるんれすよ?

 それがなんだってこんなめ~にばっかり(ヒック)。

 もう、し~らな~い」


 重ねて言いますが酔ってませんよ?

 この独り言は思索中の為、ただ呂律が回らないだけなんです。

 決して、退屈を持て余した干物女みたいにベット上でソロ宴会に興じてる訳じゃないんです。


「もう!

 いい加減になさいませ!

 ならば最終勧告です。

 ユナ様がそういう態度を取るおつもりなら、

 わたくしも最終手段を施行致しますからね!!」


 自室前の扉では何やら姉様がキレてますが……

 生憎と私はジャーキーを噛みながら飲む作業が忙しいのです。

 あむあむ。

 ぐびぐび。

 これも絶妙ですね~。

 いいえ、この組み合わせの方が呑み口がいいですよ~。

 あれれ?

 そこに見えるのは未来の旦那様じゃありませんか♪

 こちらにどうぞ~一緒に飲みましょう☆


(今日もご苦労様。

 お仕事、大変だったでしょう?)

(いやいやそんな。

 君の為ならこれくらい全然平気さ)

(本当? 嬉しいわ)

(僕も君の笑顔を見ると癒されるよ、ユナ)

(ウフフ。ありがとう。

 はい、アナタ。

 召し上がってくださいな☆)

(ありがとう、愛しいユナ。

 でも僕は……お酒や料理より君を頂きたいな)

(まあ……駄目よ、ダメダメ。

 まだ明るいもの)

(いいじゃないか)

(あっ……(ハラリ))



「それで愛し合う二人は……(うひっ)

 にゅふふふふ~」


 な~んちゃって、もう!!

 私ってば何をやっちゃってるんだか!!

 今の私は妄想の虜です。

 様々なシュチエーション、ばっちこ~いって感じですよ!

 一人悦に浸り、口元を緩めまくる私。

 けどそんな楽園を乱す音が響きます。

 ドンドン。

 ドンドン。

 む~せっかくいい気分だったのに~。


「どなたれす~?

 いいかれんしないとおしおきれふよ~」

「ユナ?

 僕だけど」


 がふっ!

 こ、この声はまさか!?

 戸口越しに聴こえる年齢以上に憂いを帯びた落ち着いた声。

 吟遊詩人も羨む天然の楽器に並ぶ声色を持つ者は一人しか知りません。

 どう考えてもシャス兄様でした。

 っていうか、酔いが瞬時に消し飛ぶのを自覚出来ました。

 あうっ(涙)

  



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