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オッサンですが女装してデート中。軽く死にたい。

 話をまとめるとこういうことだった。


 カリスマモデルのハヤトは、当然ながらとんでもなくモテる。というかモテすぎて困る程だという。


 とはいえそこらの関わりのない女たちならば、無視しておけば良いだけなのでなにも困ることはなかったのだが、モデル仲間の女たちとなればそうはいかない。


 仕事上の付き合いもあるし、なにより、プライドの高い奴らはいくらハヤトが『恋愛に興味ないから』と言ってもちっとも諦めない。


 諦めないどころか、余計にハヤトへの想いを燃え上がらせている始末だそうだ。


 そこでハヤトが考えたのが、『もうすでに彼女いる作戦』というわけだ。


 諦めの悪いモデル女たちに彼女とのデート写真を見せて、今度こそ諦めさせようと画策した……



 というが、今回の事件(?)の真相なのだそうだ。



 でも、だからって、なんで……


 なんでオレなんだよ!?


 いくら女みたいな顔してるからって、女装させることないだろ!?



 なんてことをひとり心のなかでぼやきながら、公園のトイレで着替え終えたオレ。


 

 

「おおー、似合ってるじゃん」



 トイレから出たきたオレを見た瞬間、ハヤトが歓声を上げた。



 まあ、正直その気持ちは分かる。


 オレだってトイレの鏡で自分を見たとき、驚いたくらいだ。


 真っ直ぐなロングの黒髪に、白のワンピース。


 抱きしめたら折れてしまいそうな華奢な体に、整った顔立ち。


 どこからどう見ても美少女だ。それもとびきりの美少女だ。


 

 まさかここまでのクオリティに仕上がるとは……自分で自分が怖くなるぜ。




 そんなこと思っていたら、ハヤトが急に、




「そんだけ可愛けりゃ、男でもキスできるかもな」



「な、なに馬鹿なこと言ってるんだよ!?」



「冗談だよ。さ、とにかく行こうぜ。デートの証拠の写真を撮りたいんだからよ」




 そんなこんなで、オレとハヤトのデートが始まった。


 と言っても実際にはデートしているわけではなく、有名なデートスポットで写真を撮っただけだったが。



 それでも、女装して男と歩いているだけでオレには死ぬほど辛いけど……




「ねー、アレってハヤトじゃない?」


「ホントだ! ハヤトだ!」


「超カッコいい!」


「となりにいる子、誰だろ!?」


「まさか、彼女!?」


「うそー、ショック〜!」



 と、若者に人気の街中を歩いていたら、女子高生たちにウワサされてしまった。





「は、ハヤト、なんか騒ぎになっちゃってるよ?」


「別にいーよ。むしろ、変な女どもが寄ってこなくなるからラッキーだ。ま、事務所的にはマイナスかもしれないけどな」




 余裕の笑みで言う。


 彼女バレしても自分の人気が揺らぐことはないと自信を持っているのだろう。




「……けど、一人だけ見つかりたくねー女はいるけどな」


「へ?」




 ハヤトが意味深なことを口にした、その時だった。




「ハヤト? ……誰よ、その女」



 いきなり、背後から不機嫌そうな女の声がした。




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