第339話 【国おこし作戦①】
中央砦の貴族街に拠点を移して三日後。
咲楽たちは表立った行動には出ず、屋敷の中で国おこしの準備を進めてきました。そして屋敷の外ではオーガルたちが水面下で行動に移しています。
クーデターを企てていた時と状況は似ていますが目的は違います。咲楽たちは平和の先にある夢を求めているのです。
「満を持して国おこし企画を発表しますっ」
そして本日、咲楽は仲間たちを談話室に集めて会議を始めました。
「いよいよだね」
「緊張する…」
一緒に準備を進めてきた葵とアクリは近くの席で見守ります。
「待ちくたびれたぞ~」
「ふぁ…」
「おいしいもの、たべれる?」
ナキ、キユハ、ルルメメはいつも通り傍観者気分です。
「…と言いたいところですが」
話し合いを始める前に咲楽は気になることがありました。
「やけに人が多くないですか?」
この場には顔馴染みではない面々まで集まっています。
「我々が集めた」
「何をするにも人手は必要だろう」
まずはお馴染みのオーガルとテオール。
「初めましてん、女神さま♪」
「ベド、失礼ですよ」
そして今回、初めて顔を合わせるベドミルとフーリアン。
(この二人は一年前と変わってない。フーリアンさんは知的で接しやすいんだけど、このベドミルさんは好戦的でちょっと苦手なんだよね)
咲楽は滅多なことで人を嫌ったりしませんが、戦場で血を好む切り裂き魔のような人物に対して好意的にはなれません。
(まぁ…そういう悪い印象をどうにかするのも大事です)
みんな平等の女神の使者として咲楽は万人を受け入れます。
「それとハクアくんにアネモネ姫ですね」
王座の間では仰々しい挨拶を交わしましたが、屋敷でアネモネと咲楽が会うのはこれが初めてです。
「前に訪問した際は挨拶も出来ず申し訳ありませんの」
アネモネは立ち上がって改めて挨拶します。
「いえいえ、葵ちゃんから話は聞いています。この企画に協力してくれるんですよね」
「微力ながら援助させてくださいまし」
「一緒に頑張りましょうっ」
明るい未来を目指す者同士、二人の間に確執はありません。
「ハクアくんはお仕事の方は大丈夫なんですか?」
そして咲楽は久しぶりに会うハクアに声を掛けます。
「やっと区切りがついた」
「まだまだ忙しそうです」
「でもしばらくはサクラの側にいられる」
「それは嬉しいですね」
二人はもう取り繕う気はなく、いつも通りの調子で会話をします。ですがアネモネはもう取り乱したりはしません。
「他にも強面な大人たちが数人いますけど…」
そして咲楽がどうしても気になってしまうのは、オーガルの背後に控える数人の身分の高そうな貴族や軍人たちです。
「心配しなくても口出しはしない。構わず話を進めてくれ」
そう言ってテオールは話し合いを催促してきます。
「ちょっと緊張しますけど…了解です」
普段ならもっと気軽に話を進められるのですが、大勢の大人から注目されると緊張します。それでも咲楽は企画の幹事として背筋を伸ばしました。
※
「企画を発表する前に私の目的からお伝えします」
集まったメンバーは咲楽の言葉を清聴します。
「まず他の国に比べて帝都フリムは平和です。復興の途中ではありますが大きな山場は乗り越え、優秀な皇帝の統治で着実に明るい未来へ進んでいます」
手元の資料を捲りながら調査したことを伝えます。
「私が協力できることは復興作業の支援と、外から向けられている印象の改善です。四大勢力を旅してきましたがフリムの印象はあまり良いものではありません」
事実をハッキリと告げますが誰も驚いたりはしません。
「国々で良好な関係を築くことが私の目的です。なので各国でしたような娯楽イベントを開催させて、帝都の悪い印象を払拭しようと考えました」
そして咲楽は背後にあるボードに被せた布を勢いよく取ります。
「名付けて“第一回帝都フリム特別闘技場”です!」




