刀匠として
「俺がこの世界に来た時、ちょうど拾ってくれたのがこの店の主人でな。生活の術を学びながら過ごしていたんだが…子供を見捨てられなくて気がつけばこのざまさ。先代の技術も受け取り切れなかったし、資材もなくなり、金もない。あと1年もすればこの店をたたんでいたことだろうさ」
訓練をするということで建物をまるごとダンジョンに取り込んでスペースを確保したところ倉本さんがそんなことをぼやいていた
「技術なら残っていますよ?」
ん?
「なにか見つかったの?」
リリーは手元に古びた紙の束をもちぺらぺらと捲っている
「文字は古いですがこの鍛冶場初期の頃の技術が書かれているようです」
「そんなものがあったのか?」
「現にここに」
リリーは手元の紙を広げて見せた
「おい、古いってレベルじゃねえじゃねえか!そんな昔の文字、現代じゃあ読めるやつは…いや、なんで嬢ちゃんは読めるんだ?」
「女の子には、秘密があるものなんですよ?」
「…解読したものを教えて貰えないか?」
「まずは魔法の練習からしましょう。依頼としてお金を出すのでぜひ刀を作ってください」
「何から何まで世話になるわけにもいけねぇからよ、出来ることはしたいんだ」
「ではなおのこと、技術を学んで最高の1振りを作ってください」
「それは…構わねぇんだが…」
「パイラ」
「ここに」
「うおっ!」
リリーが名を呼ぶとその背後に茶色い髪をしたメイドが現れる。
あれ?髪色全体が明るい茶色になってる?
「この子を置いていきますので金銭面はお任せ下さい。それと身の回りの世話はすべてこなすことができますのでご安心ください」
「お、おう?」
「不束者ですがよろしくお願い致します」
「挨拶の仕方が違わないか!?」
「優しくしてくださいね…」
「冗談だよな!?」
「では早速魔法の訓練を始めましょうか」
「否定の言葉は!?」
「失礼します」
「ひうっ!?」
倉本さんの腰にパイラが後ろから抱きつく
「まずは下腹部に意識を向けてください」
「集中が乱れるんだが!」
かつて優希がからかわれた時のように、倉本さんがリリーたちのおもちゃにされている。人数が増えたぶん遊びの幅は広がっているらしい
「昔はされてたなぁ…」
「遊びなの?あれ」
離れて見ている優希の隣には倉本が世話をしているという少年達がいる
「そうだよ。しばらくはあんな感じだから皆はご飯の準備しに行こうか。台所へ案内してくれるかな?」
「こっちだよ!」
8人の子供たちに連れられて優希は部屋を後にした。2人にうぶな心を弄ばれている男の助けを求める声は完全に無視した




